「気持ちよく出す」ことを叶える排便ケア「気持ちよく出す」ことを叶える排便ケア

看護師が行うアセスメントやケアの方法を、様々な角度から解説しています。

Part8うんこを巡る人生の物語

保健学博士、保健師・助産師・看護師
コンチネンスアドバイザー
榊原千秋

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2021年8月公開

おわりに

私が「排便ケアをどうにかしたい」と思い始めてから30年が経ちました。しかし、在宅ケアの現場でいくらもがいても状況は変わりません。金沢大学大学院医学系研究科に入学し「排便ケア」をテーマに研究をはじめたのが2007年です。その頃も、便秘の要介護高齢者が下剤によって軟便になり、便失禁となっているなどの課題は明らかになっていましたが、「科学的根拠に基づいた排便障害への看護介入」はなく、現場スタッフのアセスメントの知識やスキルも十分とはいえない状況でした。

博士論文の研究の一環として、3つの老人保健施設に介入させていただきました。各施設から看護師2名と介護職2名を推薦いただいて、計12名の排便ケアリーダーを養成し、そのリーダーが中心になって、各施設に立案した排便ケアの改善プログラムを実践していただきました。その成果を2011年に論文として発表して生まれたのが、「POOマスター養成研修会」です。2015年に大学を退職して、うんこ文化センター おまかせうんチッチや訪問看護ステーションややのいえを開設したことは大きな転機でした。「排便に困難を抱えた人」との日々の出会いと実践に、私自身が育てていただいています。全国に400人を超えた「POOマスター」の実践から、新たな可能性を学ばせていただいています。

「気持ちよく排便できる」ことを当たり前にするためには、「わたしのまちのPOOマスターは○○さん」というくらい、POOマスターの存在が身近であることが求められます。1人のPOOマスターがかかわる人数は20人が理想です。POOマスターの活躍が期待される病院・施設・訪問看護ステーション・地域包括支援センター・教育機関などの活動場所から推計すると、およそ400万人のPOOマスターが必要になります。POOマスターの仲間たちは、将来自分たちが入院したり介護サービスを利用することになったとき、その病院や介護施設などに「POOマスターはいますか?」と聞いてから選ぶ、と語り合っていました。

0歳から最期の日まで、病気になっても障がいになっても、排便しない人はいません。「気持ちよく排便できる」ことへの取り組みは、在宅医療・介護連携や地域包括ケア・多世代の「地域まるごとケア」につながります。

日本看護協会出版会から出版されている、『“おまかせうんチッチ”で実現する 気持ちよく出す排便ケア』(図1)には、28か所のPOOマスターの実践が紹介されていますので、ぜひご覧ください。

図1『“おまかせうんチッチ”で実現する 気持ちよく出す排便ケア』(日本看護協会出版会、2020年)

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