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2023年6月公開
精神疾患患者への訪問看護師の対応の基本
2.ストレングスアセスメント
東 美奈子
訪問看護 花の森 管理者
東 美奈子
訪問看護 花の森 管理者
訪問看護師は、利用者の心身の状況、利用者の生活歴・病歴、ジェノグラム・エコマップ*、生活力のアセスメントなどをしていくと同時に、ストレングスアセスメントをしっかりしていくことが大切です。
ストレングスとは、前述したように、「対象者の誰もが力を持ち、対象者をプラスに変化させていく力」と定義されています1。ストレングスには、「個人因子(熱望[希望]、能力、自信)」と「環境因子(資源、社会関係、機会)」があるとされています。支援者がそれらに働きかけることによって、利用者は生活の質の高まりや満足を感じ、エンパワメントされます。つまり利用者のリカバリーを促進することが可能になる支援モデルといえます。
ストレングスアセスメントとは、利用者が意義ある人生の目標を達成するのに役立ったり、これらの目標を達成する際の障壁や課題を乗り越えるのに役立ったりする相談者のストレングスに関する情報を収集することです(図1)2。ストレングスアセスメントでは、これらの個人因子と環境因子をそれぞれアセスメントすると同時に、個人因子と環境因子の相互作用としてのアセスメントをしっかり行います。環境因子によって個人因子にどのような影響が起こっているのか(このような環境ではここが強みになる)をみるとともに、対人関係によって引き起こされるストレングス(△△さんとだったら〇〇ができるという強み)に着目していくことが大切です。
ストレングスアセスメントをする際には、表現されている現状をリフレーミングして考えることも大切ですし、状況を俯瞰してみることも大切です。そのため、スーパービジョンを受ける機会を持つことも大切になります。
*個人を中心とした関係性を図示したもの。ジェノグラムは個人の家族や環境の構成を示すもので、エコマップは個人のネットワーク内にいる人々や、その個人とその人々との関係などを示している。
図1 ストレングスアセスメント
ストレングスアセスメントは、初期の関係づくりの一環として相手を知るためや信頼関係の構築の過程で使うことができます。利用者自身が大切にしていることや少しだけでも自信を持っていることを話すことによって、良好な「患者(利用者)-看護師関係」を作ることもできます。例えば、料理が好きな利用者と一緒に料理をしながら話をするとか、手先の器用な利用者と一緒に創作活動をしながら話をすることで、お互いがリラックスしながら対話をすることができます。そのなかで、看護師は利用者の少し苦手な部分も見つけられるかもしれません。苦手な部分は指摘せず見守りながら手を貸したりやりやすくなる工夫を取り入れたりすることが大切です。課題に目を向けるのではなく、利用者のストレングスに視点を置きながら、利用者自身が自分のこれからの人生について考えられるように働きかけましょう。
ストレングスアセスメントで見えてきた視点を活かして、看護計画を立案し、利用者自身が自分の目標に向かって、自分は何をして看護師には何を手伝ってもらいたいかを明確にすることが大切です。つまり、利用者のリカバリープランを利用者自身と看護師が協力して立案し、目指すべき姿に向けてともに歩む姿勢が重要になるのです。
ストレングスに気づくためには、以下の点が重要です。
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