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2023年6月公開
精神疾患患者への訪問看護師の対応の基本
3.関係づくり
東 美奈子
訪問看護 花の森 管理者
東 美奈子
訪問看護 花の森 管理者
関係づくりの第一歩は「この人と話をしてもいいかな」と思ってもらえることです。そして、次に「信用されること」が重要です。信用されるためには、時間を守ること、約束を守ること、身なりやしぐさに気を配ること、好感の持てる態度で接することなどが必要です。訪問看護では、客として利用者の家に伺うわけですから、時間は早すぎても遅すぎてもいけません。時間通りに伺うことが大切で、時間がずれる場合には必ず連絡しましょう。
また、あいまいな言葉を使うのは避けましょう。わからないことがあれば、「わからないので調べてきます」ときとんと伝えること、返事はいつするのかを伝えることなども重要なポイントです。コミュニケーションを図るためには“自己開示”も必要ですが、利用者が興味をもっているようにも見えないのに、看護師が自分のことばかり話すことは避けましょう。さらに、利用者が話をしている最中に看護師が他のことに関心を示すのはもってのほかです。例えば、話をしている最中に携帯電話を気にするとか、利用者宅の犬や猫に気を取られるなどのことです。利用者は看護師の言動をよく観察しておられるので、十分に気をつけましょう。訪問看護の時間は目の前の利用者に100パーセントの気持ちを向けてかかわりましょう。そうしないと利用者は自分が大切にされていないという感情を持つことになります。
清潔な服装で訪問することはもちろんですが、季節感を運ぶ意味でも少し服装に季節感を取り入れたりすること(服の色合いやハンカチ、ブローチなど)もさりげないひと工夫として大切です。
信頼関係の構築のためには、まずは利用者の話を傾聴することです。しっかり想いを聴きましょう。聞く・訊く・聴くという3つの聴き方をうまく使い分けながら話を聴くことが大切です。あいづちを打ちながら、ときどき質問をしながら、時には要約をして話の整理をしながら、聴くことです。そして、利用者の想いに耳を傾けることが重要です。どのような思いで話をしているのか? 今言っていることに隠された想いは? という意識で話を聴きます。
対話をするということはお互いに身も心も向き合ってやり取りをするということですが、訪問看護師が3割以上話していると利用者は話を聴いてもらえていない気持ちになりやすいのです。利用者の言いたいことをしっかり聴くつもりで対応しましょう。むしろ「利用者のことを教えてもらっている」くらいの気持ちで話を聴くとよいでしょう。
話を聴くときのコツは、看護師の想い込みで聞かないこと、看護師の常識や価値観にとらわれないこと、その利用者の人生をストーリーとして語れるくらい真剣に聞くことです。利用者の話を聞きながら自分が次に話すことや利用者の言葉に対する返事を考えていると会話がかみ合わなくなることがあります。最後までしっかり話を聴いてから、自分が伝えることを考えて話しましょう。その間少しの間があってもよいですし、「そうですか…」という言葉を入れながら次の言葉を考えてもよいです。利用者自身が看護師に話を聴いてもらった実感があることが最も大切なことです。
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