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2023年6月公開
高齢になった精神疾患を抱える人の特徴と対応の実際
東 美奈子
訪問看護 花の森 管理者
東 美奈子
訪問看護 花の森 管理者
高齢になると精神疾患による生活のしづらさに加えて、高齢になったことによる生活のしづらさが出てきます。物忘れによる被害的感情が増してきたり、自分の体の動きにくさによるイライラ感が増してくるといった状況や、聴覚や視覚の衰えによりコミュニケーションが取りにくい状況も起こりがちです。また、発達課題を順調に達成していない場合には、実年齢とのギャップが出てきたり、自己を確立できていないことにより他人と積極的にかかわることができず、表面的なかかわりしかできなかったり、人とのかかわりを拒絶したりして、孤立に陥ってしまうことなどもあります。高齢になったときの孤独は不安の増強にもつながるため、他者への攻撃性に現れることもあります。
同時に、ずっとかかわってくれていた家族との別れもありますから、さみしさが強くなることや、身内の支援者がいなくなることも考えられます。
高齢になったときに自分の人生を振り返り、自分を肯定し「よい人生だった」と思えるか、絶望するかは大きな問題です。訪問看護師がかかわる利用者には、「いろいろあったけれど、自分の人生はよかったな」とか「まんざらでもなかったな」と思ってもらいたいものです。そのために、まずは、看護師自身が「この人と出会えてよかった」と思ってもらえるかかわりができるとよいでしょう。そのうえで、さみしさへの対応をしていきます。
身内がいないことに対しては、訪問看護師が家族になることはできません。しかし、人と人としての温かみのある看護を展開することによって、一時的にでもさみしさを忘れる時間を持つことはできます。一緒に食事を作ったり、食事を食べている隣で見守るなど、ときどきでも孤食にならない働きかけは大切です。
他の職種ではなく看護師が食事を見守ることで、飲み込みの状態や歯の状態、食事量、飲水量などの観察もできます。また、食事をする際の手の動きや姿勢等も観察ができます。調理を一緒にすると、好みの味もわかりますし、手際の観察もできますから、認知症の早期発見にもつながります。また、入浴介助や衣類交換の介助等をすれば、全身状態や皮膚状態の観察もできます。皮膚が乾燥しすぎていないか、傷はないかなども観察しましょう。利用者自身の生活の場である場所での看護展開だからこそ、利用者自身の状態も環境も観察できることがたくさんあるのです。
認知力の低下に対する看護も必要です。さりげない会話から利用者のちょっとした変化を見逃さないことが重要です。物忘れがひどくなってきたなとか、被害妄想等が現れていないかなど会話の中からキャッチしていきます。また、物忘れから、火の不始末等がないようになど、危険の回避をするようなかかわり(ガスコンロをIHに変えるなど)や家のなかで転倒しないように段差の改修や手すりの設置など住宅改修も必要です。利用者の身体的な状況等も観察しながら、必要に応じて必要なサービスを入れるなど発信していくことが重要です。
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