2026年4月公開
アドバンス・ケア・プランニング(以下、ACP)とは、「人生の最終段階の医療・ケアについて、本人が家族や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合うプロセス」のことです1。単に「延命治療や蘇生処置をするかどうか」だけではなく、「限られた残りの人生でどのような医療やケアを受け、どのような生活を送りたいのか」まで、ACPの範囲はとても広いものです(図1)。
認知症によって意思表示や意思疎通が徐々に困難になってきた方と、このような話し合いをどのように行えばよいか、難しく感じることもあるでしょう。認知症の人へのACPで理解しておきたいポイントを解説します。
“認知症の人と向き合うよりも、家族に尋ねたほうが手っ取り早く楽”と思ってしまうことはありませんか? ときに私たちは、家族に向けて「退院後はどうしますか? 自宅は難しければ施設にしますか?」など、認知症の人本人を回避して話をしがちです。
このようなとき、たとえ本人は黙っていても、雰囲気を感じて、「家には帰れないんだな」と寂しく思っているかもしれません。あるいは、「施設になんか行きたくない」と大きな声で怒鳴る人もいるかもしれません。
状況判断が難しくても、自分のことは自分抜きにして決めないでほしいと思うのは、人として当然のことです。
認知症の研究や診療などで第一人者であった長谷川和夫先生は、晩年、認知症を患いました。その様子を書きつづった著書では、「何もわからなくなってしまった人間とひとくくりにしないでほしい。僕たち抜きに物事を決めないでほしい」と訴えています2。
はたして、認知症の人は、意思決定ができない人なのでしょうか?
意思は、①脳の機能だけでなく、②個人の経験、③内面的な要素等(無意識含む)、④感情との関係などから生まれます。①の脳の機能には、認知機能が含まれます。
認知症の人は、認知機能(記憶や言語、実行機能、注意、集中力など)の低下がみられ、それは意思表示や意思決定にも影響します。
しかし、認知機能が低下したからといって、「その人に意思はない」とは言えません。例えば、嫌なことは“嫌”と、意思表示は可能です。認知症の人=意思決定ができない人、ではないのです。
ただ、こちらが伝えたいことを理解してもらったり、自身の意思を示してもらうには、時間がかかるかもしれません。意思決定支援には、私たち医療従事者側の工夫が必要です。
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