2026年4月公開
ここからは具体的な事例を通して、意思決定の支援について紹介していきます 。
祖母は、日ごろから「ぜいたく言わず、口からなんでも食べることが大事」「口は文句を言うが、喉を通れば栄養になる」と語っていました。そんな祖母が、人生の最後の段階で口から食べられなくなったときに、胃ろうの造設をするかどうかを迫られました。
みなさん、祖母は胃ろうを選択したと思いますか?
家族・親族はみな、「胃ろう造設はしない」と考えていました。
しかし、本人は、「(胃ろう造設を)します」とはっきり言いました。今から考えると、経口摂取が大事というのではなく「とにかくお腹の中に食べ物を入れることが大事」という価値観があったのだと思います。もちろん、この言葉を受けて、胃ろう造設が行われました。
じつは私は祖母に、胃ろうがどのようなものか、イラストを描いて、説明を繰り返していました。その説明を受けての、祖母の自己決定です。
義父は下血で救急入院していましたが、「病院は嫌だ、早く家に帰りたい」と訴えていました。医療従事者はみな、「そんな状態(終末期)では無理」と、本人の訴えを断っていました。
義父は、看護師であり、嫁の私に、自宅に帰りたいことを何度も電話で訴えてきました。私は、「覚悟を決めてくださいね」と義父に告げ、自宅退院となりました。
退院後、居宅サービス会議が行われたときも、義父は往診医や訪問看護師、ケアマネジャーを含む多職種に向かって、「おせっかいはしないでほしい、かまわんでほしい」と言っていました。これも、義父の意思です。
しかし、余命は限られていること、何かあったら対応しなければならないことを繰り返し説明し、義父は往診と訪問看護を受け入れてくれました。また、ケアマネジャーは、義父の意思を尊重しながらも、黒子になって陰で支えてくれました。
結果、義父は90歳まで多様な病気を抱え、苦痛ももちながらも、最期は自身が希望していた自宅で亡くなりました。
なお、自宅に戻るにあたって、義父が終末期だということを、私ははっきりと、本人や家族に説明しました。それを受けて、長男は財産等の取り扱いなども含め、人生の最終段階における本人の希望をしっかりとメモし、それを実現できるように努めました。 それまでは、親子・家族間でも、ACPについての話し合いは行われていませんでした。人生の最終段階にあるということから目を背けずに、誰かがそれにきちんと向き合って、本人・家族に説明する必要があるのです。
Column
自宅で最期を迎えるうえでの課題
私が院生と行った調査では、ある病院で自宅に帰って最期を迎えた患者は、わずか25%でした(図1)。調査対象としたのは非がん終末期患者で、高齢、認知症をもつ方も含まれていました。このような患者が必死で、「自宅に帰りたい」と訴えても、なかなか実現しないのが現状です。
この方々は与薬、酸素療法、点滴といった医療処置を受けていましたが、これらの処置は自宅でも可能なものです。在宅で受けられる処置やケアを理解し、本人や家族、病院スタッフ、訪問関連職種と話し合うことで、自宅退院の選択肢が広がるかもしれません。
〈文献〉
鈴木峰子,内田陽子,小山晶子:自宅療養を望み自宅死となった非がん終末期高齢入院患者の特徴ー患者・家族の状況と入院中に実施された看護に焦点をあててー.日本エンドオブライフケア学会誌 2018;2(1):13-20.
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