Part1創傷・褥瘡

在宅創傷スキンケアステーション 代表
岡部美保

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2024年8月公開

【ディアケア プレミアム】在宅で行う褥瘡ケアとスキンケア
【ディアケア プレミアム】在宅で行う褥瘡ケアとスキンケア

1.在宅で褥瘡をつくらない体位変換のやり方:小枕法を在宅で行う

Key point

  • 褥瘡の予防・治癒促進・再発予防すべての時期において、体圧を分散するケアが必要。
  • 褥瘡発生・悪化の予防には、定期的な背抜き、圧抜き、ポジショニングを行うことが重要。
  • ポジショニングクッションなど、それぞれに合ったポジショニングケア用品・用具を活用する。

褥瘡を予防するためには、外力(圧迫やずれ力)の大きさを減少させること、外力の持続時間を短縮することが原則です。褥瘡ケアというと局所のケアに目が向きがちですが、褥瘡の予防・治癒促進・再発予防すべての時期において、体圧を分散するケアが重要です。

1.体圧を分散する:ポジショニング・移動介助の支援

褥瘡発生・悪化の予防には、体圧を分散する高機能エアマットレスの使用をお勧めしていますが、同時に定期的な背抜き圧抜きポジショニングを行うことが大切です。
一方、脆弱な皮膚をもつ高齢者は、ポジショニングや移動介助の際、手技によっては皮膚を損傷する可能性があります。
創傷や褥瘡をつくらないためにも、皮膚へ加わる刺激や外力を軽減できる体位変換やポジョニングを理解し、実践することが必要です。

2.背抜き(図1

体幹をわずかに起こす・傾けることなどでも背部や腰部、臀部の圧を抜くことができます。その際は、介助用グローブ(図2)などを使用すると、より皮膚への摩擦の軽減を図ることができます。

図1背抜き
図1 背抜き

図2介助用グローブの例

ケープ介助グローブ(写真提供:株式会社ケープ)

ケープ介助グローブ(写真提供:株式会社ケープ)

ケープ介助グローブ 使い捨てタイプ(写真提供:株式会社ケープ)

ケープ介助グローブ 使い捨てタイプ(写真提供:株式会社ケープ)

ポジショニンググローブ(写真提供:株式会社モルテン)

ポジショニンググローブ(写真提供:株式会社モルテン)

3.スモールチェンジ

スモールチェンジは、従来から行われている仰臥位から側臥位など、大きく体幹の向きを変える動作とは異なり、体の一部のみを動かすことで血液循環への変化を起こす方法です。
用手的にエアマットレスのエアセルを圧迫し、一時的に圧迫を解除する方法や、エアマットレスの下に小さなクッションなどを挿入し、定期的にクッションの位置を移動する(図3)ことで、小さな体位変換を行うことができます。スモールチェンジは、家族が1人で実施しやすいポジショニング方法です。

図3エアマットレスの下にクッションを挿入する際、1~6の位置にクッションを定期的に移動させる
図3 エアマットレスの下にクッションを挿入する際、1~6の位置にクッションを定期的に移動させる

スモールチェンジには「置き直し」「自重圧の開放(圧抜き)」「間接法」の3つの方法があります。

1「置き直し」のポイント
置き直しは、体の一部の位置を変える方法です。体の一部の角度や位置が変わるだけでも、血液循環が良好になります。
  • 引っ張らず、ずらさず、持ち上げる
  • 関節可動域や可動の方向を考慮して置き直す
2「自重圧の開放(圧抜き)」のポイント
体は、同一体位の持続によって自身の体の重さ(自重)で沈み込みが起こり、圧とずれ力が生じます。圧抜きは、圧の開放を行う方法です。
  • 滑る手袋(介助用グローブなど)をして、沈み込んでいる部分に手を抜き差し(挿入)する
  • 体が密着している部分に行う
  • マットレス(床面)を押し下げるように挿入する
  • 座位時、臥床時に発生する自重圧のポイントを意識して行う
3「間接法」のポイント(図4)
マットレスの下からポジショニングクッションを挿入し、臥床面に勾配をつけることで重心を移動させる方法です。
  • 勾配の重心移動により、圧迫持続を回避する
  • 面で持ち上げることで体への違和感を生じない
図4スモールチェンジの「間接法」。マットレスの下に小さなクッションを挿入する
図4 スモールチェンジの「間接法」。マットレスの下に小さなクッションを挿入する

従来の大きな体位変換に、スモールチェンジを併用したケアは、家族の介護力などを配慮したうえで、効果的な体圧分散と安楽さを検討し、実施することが大切です。

4.体圧を分散する:ポジショニングケア用品・用具の活用

ポジショニングクッションは、身体の凹凸によって生じる隙間を補正し、接触面積を広げることで体圧の分散を図ることができます。広い支持面で支えることで安定性や安楽性が向上します。それにより、ずれ力も減少し、褥瘡が予防できます。
ポジショニングクッションには、さまざまな形状、厚み、大きさ、硬さがあるため、療養者の体型や姿勢、使用する部位や可動性、介護者の取り扱いやすさなどに考慮して選択します。

在宅療養者の移動介助をする際の力まかせの介助は、本人の苦痛を増強させるばかりでなく、皮膚への圧迫やずれ・摩擦が生じることから褥瘡発生や悪化の原因にもなります。療養者の体や安全を守るためにも、介助用グローブトランスファーシートなどの用具の使用を検討することが必要です。

5.ポジショニングは呼吸や排泄などにもよい影響がある

ポジショニングは、リラックスした姿勢が確保できるため筋緊張が緩み、拘縮の予防や呼吸、循環、食事や排泄によい影響を与えます。療養者の体に触れる際は、今から何を行うのか、どこに触れるのか、本人の気持ちと呼吸の準備が整ったうえで実施することが望ましいといえます。
家族が行う介助やポジショニングは、療養者と言葉を交わしながら触れたり支えたりすることで、かけがえのない家族のぬくもりを感じ合う場でもあります。さらに、本人にやすらぎや安心感を与え、心身の疼痛や苦痛を緩和するなど、褥瘡予防の観点以外にも大きな効果があると言えます。

参考文献

  1. 1.一般社団法人日本褥瘡学会編:褥瘡ガイドブック 第3版.照林社,東京,2023.
  2. 2.岡部美保編:在宅療養者のスキンケア 健やかな皮膚を維持するために.日本看護協会出版会,東京,2022.

最新ガイドライン、DESIGN-R®2020に基づく 新まるわかり褥瘡ケアPart5 褥瘡(じょくそう)を防ぐために重要な体圧管理

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