Part3栄養・水分・服薬

医療法人社団悠翔会
理事長・診療部長
佐々木淳

一部会員限定
ページあり!

2024年8月公開

5.高齢者のポリファーマシーへの対応法「正しい処方」をどう進める?

Key point

  • 病状が変化した際、過剰投与や薬剤変更などがなかったか、薬の影響を必ず検討する。
  • 特に高齢者では、ベンゾジアゼピン系薬剤や抗コリン作用のある薬剤に注意。
  • 医師、看護師、介護士、薬剤師などの多職種で情報共有する。

1.ポリファーマシーとは

ポリファーマシーとは、多剤併用により患者に不利益が生じるリスクの高い状態のことを言います。
すべての薬には副作用のリスクがあります。薬の種類が増えれば、当然副作用が生じる可能性は高くなります。薬の飲み合わせによる有害事象が生じることもあります。また、服薬回数が増えれば、誤薬や飲み忘れ、過剰服用などの服薬ミスが起こりやすくなります。介助する側の負担も大きくなり、それが新たなリスクを生むこともあります。

2.薬剤数は5種類を超えないことを目標にする

高齢者は、複数の医療機関に通院していることが多く、それぞれの医療機関から薬が処方されている方が多いため、特にポリファーマシーに注意が必要です。
入院中の高齢患者は、内服薬剤が6種類を超えると有害事象のリスクが有意に高くなること1、外来通院中の高齢患者は、内服薬剤が5種類を超えると、転倒のリスクがそれ以下の人に比べて2倍になること2が知られています(図1)。
したがって老年医学では、薬剤数は5種類を超えないことを、安全な薬物療法の1つの目安としています。

図1多剤処方と薬物有害事象および転倒の発生リスク
多剤処方と薬物有害事象および転倒の発生リスク

(文献3より引用)

3.病状の悪化時は、薬の影響を必ず検討する

しかし、わが国では、複数の慢性疾患をもつ高齢者への処方内服薬数の平均は5.8種類にのぼります4。さらに、認知症をもつ方の約半数に5種類以上の内服薬が処方されていること、そのなかでも10種類以上服薬している方が13%近くにのぼることもわかっています4
もちろん、心不全や膠原病など、病状の悪化を防ぐために多数の薬剤服用の継続が必要な方もいます。しかし、過剰な薬剤投与は、低栄養、サルコペニア・フレイル、認知機能低下・BPSD増悪、摂食障害・誤嚥性肺炎・窒息、転倒・骨折の原因になりうることがわかっています。
老衰や疾患の進行と思っていた症状が、内服薬の整理によって改善したというケースは少なくありません。病状が変化したとき、まずは薬の影響について必ず検討するようにします。

看護師の視点からみた「高齢者の薬」

閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる