Part1創傷・褥瘡

在宅創傷スキンケアステーション 代表
岡部美保

一部会員限定
ページあり!

2024年8月公開

【ディアケア プレミアム】在宅で行う褥瘡ケアとスキンケア
【ディアケア プレミアム】在宅で行う褥瘡ケアとスキンケア

4.訪看さんは「なんでもワセリン」―褥瘡ってそれで本当に治るの?

Key point

  • 褥瘡のケアには、予防的スキンケアと治療的スキンケアが大切。
  • 褥瘡予防のためには、全身の皮膚の十分な観察、洗浄のスキンケア、保湿のスキンケア、保護のスキンケアを継続的に実施する。
  • 白色ワセリンの塗りすぎは皮膚浸軟の原因となるため、使用する際は薄く塗る。
  • 褥瘡が生じた際は、創部周囲皮膚や創辺縁部のケアにも注意が必要。

褥瘡のスキンケアは、褥瘡発生や治癒遅延の要因となる摩擦、ずれ、湿潤から皮膚を守るケアが必要です。在宅では、皮膚の保護や褥瘡ケアに白色ワセリンを使用する現場を見かけますが、褥瘡のケアには、予防的スキンケアにおける外力からの皮膚の保護、治療的スキンケアにおける適切な外用薬の使用が大切です。そのためには、全身状態や皮膚・褥瘡の状態をアセスメントして、状態に合ったケアを行うことが必要になります。

1.褥瘡予防のためのスキンケア

予防的スキンケアとは、脆弱な皮膚を理解し、低下した生理機能を補うスキンケアのことを言います。予防的スキンケアのポイントは、全身の皮膚の十分な観察、洗浄のスキンケア、保湿のスキンケア、保護のスキンケアを継続的に実践することです。

2.外力から皮膚を守るスキンケアのポイント

1洗浄のスキンケア
洗浄の際は、力や摩擦を与えないようにやさしく洗浄しましょう。ナイロンタオルやブラシなどを用いた洗浄は、角層を損傷し、角質水分や皮脂を喪失しますので、控えることをお勧めします。
2保湿のスキンケア
保湿の際も、保湿剤の塗布時に摩擦やずれが加わる可能性が高くなります。保湿剤はローションタイプのものを使用して、一度にたくさん塗布せず、少量を両手に薄く伸ばし、擦らずやさしくなじませるように塗布します。
3保護のスキンケア
摩擦やずれは、頭側挙上時や車椅子への移乗時、体位変換時など、すべての生活場面で生じます。それには、皮膚の表面を保護することと、何かを貼付して皮膚を覆うケアをお勧めします。
皮膚の表面を保護するためには、保湿剤や皮膚皮膜剤、撥水性保護クリームを用いたスキンケアが大切です。排泄物による汚染が予測される部位には、あらかじめ撥水性保護クリームなどを用いて、排泄物の付着から皮膚を保護します。
皮膚に貼付するものは、皮膚に貼付しても安全なもの、スキントラブルを起こさないもの、皮膚の観察ができるもの、皮膚を圧迫しないもの、取り扱いしやすいものなどを、療養者の状態や生活に応じて選択します。

3.白色ワセリンの使用について

白色ワセリンは、入浴後、角層が水分を含んでいるときに使用すると、被膜を形成し、水分の蒸散を抑制することから、本来は保湿の目的で使用されます。
使用する際、白色ワセリンの1回の使用量が多い場合には注意が必要です。白色ワセリンが汗腺をふさぎ、水分蒸散が妨げられることで角層に水分が過剰に貯留すると、皮膚浸軟の原因になります。たっぷり使用することは避け、薄く塗布しましょう。

一方、ドライスキンのある療養者に白色ワセリンなどの油脂性軟膏を塗布すると、角層の水分量が減少しているため、パラフィン薄膜のような鱗屑(りんせつ)が生じます。(図1〜3)。ドライスキンの場合は、角層の水分量を高める保湿のスキンケアを行います。乾燥が強い場合は、重ねて白色ワセリンを薄く塗布すると保湿効果が高まります。

図1 ドライスキンに白色ワセリンを塗布

図1 ドライスキンに白色ワセリンを塗布

図2 ドライスキンに保湿剤(ジェルタイプ)を塗布

図2 ドライスキンに保湿剤(ジェルタイプ)を塗布

図3 ドライスキンに白色ワセリンを塗布

図3 ドライスキンに白色ワセリンを塗布

Part8 褥瘡(じょくそう)をやさしくケアするスキンケアと失禁への対応

スキントラブル解決Q&A

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