Part1創傷・褥瘡

在宅創傷スキンケアステーション 代表
岡部美保

一部会員限定
ページあり!

2024年8月公開

【ディアケア プレミアム】在宅で行う褥瘡ケアとスキンケア
【ディアケア プレミアム】在宅で行う褥瘡ケアとスキンケア

5.ちょっとした刺激でできてしまう皮膚裂傷、スキン-テアって知ってる?

Key point

  • スキン-テアは摩擦やずれによって皮膚が裂けて生じる損傷で、高齢者に多くみられる。
  • スキン-テアの予防には、保湿や皮膚保護を意識したスキンケア、栄養管理、外力保護が重要。
  • スキン-テアが発生した場合は、早期に治癒できるようにガイドラインに基づいた評価とケアを行う。

スキン-テアは、主に高齢者に発生する皮膚損傷で、摩擦やずれによって皮膚が裂けて生じる真皮深層までの損傷です。スキン-テアは、強い痛みを伴い、治りにくく再発しやすいという特徴もあります。療養者の一番近くで介護する家族にとって、スキン-テアの痛みに苦しむ家族の姿を見ることはつらく、その介護は悲しいものです。
そのため、わたしたちはスキン‐テアを理解し、予防的なケアを実践・継続することが大切です。

1.スキン-テアが発生する場面

  • ベッド柵に上肢をぶつけて、皮膚が裂ける(図1
  • 更衣時に衣類が擦れて、皮膚が裂ける(図2
  • リハビリ時に体を支持して、皮膚が裂ける
  • 上体を引き上げようとして、皮膚が裂ける(図3
  • 車椅子のレバーに手をぶつけて、皮膚が裂ける(図4)
  • 医療用テープをはがすときに皮膚がはがれる
  • 腹部マッサージにより、皮膚が損傷する(図5

図1 ベッド柵にぶつかってできた紫斑

図1 ベッド柵にぶつかってできた紫斑

図2 更衣中、寝衣が擦れて損傷した皮膚

図2 更衣中、寝衣が擦れて損傷した皮膚

図3 手を引いたときに損傷した皮膚

図3 手を引いたときに損傷した皮膚

図4 車椅子のブレーキレバーにぶつかって損傷した皮膚

図4 車椅子のブレーキレバーにぶつかって損傷した皮膚

図5 腹部マッサージの際に損傷した皮膚

図5 腹部マッサージの際に損傷した皮膚

2.アセスメントのポイント

スキン-テアは、75歳以上の後期高齢者日常生活自立度ランクC2に多く、両上肢に多くみられるという特徴があります。特に以下の状態にある人は要注意です。

高齢である:年齢75歳以上

皮膚は加齢により脆弱化し、わずかな摩擦やずれでもスキン-テアが生じやすくなります。

スキン-テアの既往・保有がある(図6・7

過去のスキン-テアの既往、現在のスキン-テアの保有を本人や家族に確認しましょう。皮膚には、スキン-テアが治癒した後に認める「白い線状や白い星状の瘢痕」があるかを確認します。

図6 スキン-テアの既往(白い線状の瘢痕)

図6 スキン-テアの既往(白い線状の瘢痕)

図7 スキン-テアの既往(白い星状の瘢痕)

図7 スキン-テアの既往(白い星状の瘢痕)
乾燥している

ドライスキンは、皮膚の柔軟性が低下して硬く脆くなり、水分量が減少した状態で、皮膚のバリア機能が低下しています。

浮腫がある

浮腫ができると、皮膚にたまった水で表皮や角質が押し上げられて薄くなり、浮腫によって皮脂腺の数が減少してドライスキンが生じやすい状態となります。

紫斑がある(老人性紫斑)

加齢による血管の老化が原因で、軽微な外力でも皮下に出血を起こし、紫斑を生じます。抗凝固薬服用中の療養者によくみられます。

ティッシュペーパー様の皮膚

皮膚がティッシュペーパーのように白くカサカサしていて、とても薄い状態です。長期間ステロイド薬を内服している高齢の療養者に多くみられます。

また、患者行動・管理状況を確認することもアセスメントのポイントになります。
患者行動には、痙攣・不随意運動、不穏行動、物にぶつかるなどがあります。
管理状況には、体位変換や移動介助、清潔ケア介助、更衣の介助、医療用テープの貼付、器具(抑制帯、医療用リストバンドなど)の使用、リハビリテーションの実施などがあります。特に、在宅高齢者は、ケアを家族や他者に委ねることが多くなります。介護の場面、居室の環境、ケアの介助など、毎日の生活の場面で生じる摩擦やずれを確認することが必要です。

Part3 知っておきたい! 褥瘡(じょくそう)の最新知見>スキン-テアについて知っておこう

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