Part3　知っておきたい！　褥瘡（じょくそう）の最新知見スキン-テアについて知っておこう

2023年2月更新(2016年6月公開)

　スキン-テア（皮膚裂傷、skin tear）は、摩擦・ずれによって、皮膚が裂けて生じる真皮深層までの損傷（部分層損傷）です¹。私たちはよく、「絆創膏を剥がすときに、慎重に行っても一緒に皮膚が剥がれて裂けてきた」などという状況に遭遇します。特に高齢者では、皮膚がズルッと剥けてしまったなどという経験をお持ちの方は多いでしょう。スキン-テアの具体例としては以下のようなものが挙げられます。
・ベッド柵に四肢が擦れて皮膚が裂けてしまった
・車椅子に移動する際、フレームに擦れて皮膚が裂けた
・医療用リストバンドが擦れて皮膚が裂けた
・リハビリ訓練時に身体を支持していただけで皮膚が裂けた
・体位変換時に身体を支持していたら皮膚が裂けた
　日本創傷・オストミー・失禁管理学会学術教育委員会の調査²によると、スキン-テアの全体の有病率は0.77％でした。年齢層ごとにみると、65歳未満は0.15％、65歳以上74歳未満は0.55％、75 歳以上は1.65％でした。スキン-テアの保有者の平均年齢は79.6（標準偏差：12.5）歳と高齢者に多く、性別では男性62.2%、女性37.8％と男性に多いことがわかっています。また、スキン-テアが最も多く発生する部位は、右上肢（32.6％）、左上肢（32.5％）、右下肢（11.0％）となっています。

１．スキン-テアの分類

　スキン-テアの分類は、STARスキンテア分類をもとに翻訳妥当性を検証したうえで、原著者（シルバーチェーン カーティン大学）からの使用許可を得て日本語版を完成させたものが活用できます（図１）。同学会の許可を得て使用されることをお勧めします。

図１　STAR 分類システム

日本創傷・オストミー・失禁管理学会編：ベストプラクティス スキン-テア（皮膚裂傷）の予防と管理．照林社，東京， 2015：7．より引用

２．スキン-テアへの対応

　スキン-テアへの対応については、同じくSTARスキンテア分類で、以下のような項目が挙げられています。

　上記のスキン-テアの対応の中で真っ先に必要なのは、「２．皮弁を元の位置に戻す」ことです。そのためには、まず止血と創洗浄を行います。必要時、圧迫止血をし、できるだけ温かい生理食塩水を使って創を洗浄します。その後、皮弁を元の位置に戻します。湿らせた綿棒、手袋をした指、または無鉤鑷子を使って、皮弁をゆっくりと元の位置に戻すことが必要です（図２）。ただし、この処置では疼痛を伴うことがありますので、事前に説明する必要があります。
　皮弁を元の位置に戻すのが難しいときは、生理食塩水で湿らせたガーゼを５～10分貼付して、再度試みます。STAR分類のカテゴリーが1a、1bで、放置すると皮弁の位置がずれて創面が露出する場合には、シリコーンゲルメッシュドレッシング、多孔性シリコーンゲルシート、ポリウレタンフォーム/ソフトシリコーン、皮膚接合用テープによる固定を行います¹。

図２　皮弁を元の位置に戻す方法

湿らせた綿棒（または無鉤鑷子）を使い手袋をした指で元に戻す
日本創傷・オストミー・失禁管理学会編：ベストプラクティス スキン-テア（皮膚裂傷）の予防と管理．照林社，東京，2015：30．より引用