スキントラブル解決Q&APart1
健康な皮膚と異常な皮膚

Q2健康な皮膚がもっている生理作用って何?

A.バリア機能、知覚作用、体温調節機能、免疫機能、分泌機能などです。

上出良一

皮膚の生理的機能(表1)として最も大切なものはバリア機能です。このバリア機能の第一の要素として、「機械的強度を保持すること」があります。表皮の角質層は固いケラチンタンパクが積層したもので、特に足底では角質層が厚く、歩行に際しても表皮が傷つかないようになっています。手掌も角質層が厚く、物をつかんだりする作用器としての強度を保っています。表皮そのものは培養表皮でわかるようにきわめて薄く弱い組織ですが、最表面の角質層が強度を保っています。

表1 皮膚の生理的機能

横にスクロールしてご覧いただけます。

バリア機能 機械的強度
  • 角質層:固いケラチンタンパクが積層
  • 表皮真皮接合部は剥離しやすい
  • 真皮の膠原線維、弾性線維
水分保持
  • 皮表面の皮脂膜
  • 角質細胞間脂質
  • 天然保湿因子(Natural moisturizing factor:NMF)
病原体への抵抗性
  • 皮脂膜はpH5.5~7.0の弱酸性
  • 免疫:自然免疫、獲得免疫
紫外線などの光線
  • メラニン色素、角質層、抗酸化能
知覚作用

触覚、痛覚、温覚、冷覚

掻痒

体温調節

免疫機能

分泌機能

表皮の裏打ちとして真皮があります。真皮は丈夫な線維である膠原線維(コラーゲン)の束が縦横に走り、引張強度を保っています。弾性線維は弾力性を担い、外力による圧迫、引っ張りや、下床の筋肉の動きによる屈曲で変形した真皮を元の形に復元する機能があります。

表皮と真皮の境界部は複雑な線維性の構造をもちますが、一定以上の外力や表皮への侵襲があると、深部の真皮に侵襲が伝わることを避けるため、安全弁として表皮・真皮境界部で剥がれやすい構造となっています。靴擦れやいわゆる絆創膏かぶれで水疱ができたり、ただれたりするのは、真皮まで一緒に剥がれないようにするためです。表皮や色素の再生に必要な幹細胞が毛包の膨大部に存在し、これらを守って、損傷後の表皮再生をすみやかに行います。虫刺されでは毛細血管から血漿が真皮内に漏出し、表皮・真皮境界部で体液貯留が起こり、毒素を希釈します。

皮膚そのものの水分保持や、体内の水分喪失を防ぐ水分バリア機能も皮膚の大切な作用です(図1)。皮膚の表面は皮脂腺から分泌される皮脂と汗腺からの水分が入り混じった皮脂膜で覆われています。皮脂膜の最大の役割は皮膚表面を滑らかに保つことです。多少の水分バリアのはたらきもあります。角質層の角質細胞は細胞内にアミノ酸、ピロリドンカルボン酸などの保湿因子が豊富に存在し、天然保湿因子(Natural Moisturizing Factor:NMF)と呼ばれ、角質層の水分保持力を高めています。角質層細胞間にはセラミド、脂肪酸、コレステロールなどの脂質が層状構造(ラメラ構造)を形成し、その間を真皮内からの水分が皮表へ向かって流れ、角層細胞を潤しています。

図1角質層の水分保持

感染症を引き起こす病原体に対応するため、皮表の皮脂膜はpH5.5~7.0の弱酸性で、真菌などの発育を抑えます。角化細胞や皮膚に存在するリンパ球、樹枝状細胞などはToll様受容体をもち、侵入してきた病原体の分子構造パターンを認識し、抗菌ペプチドや各種サイトカインの産生を促す自然免疫を発動させます。角質細胞はディフェンシン、カテリシジンなどの抗菌ペプチドをもっており、病原体に対する自然免疫の一端を担っています。

紫外線は細胞のDNAに損傷を与え、皮膚の細胞は強い障害を受けます。大量の紫外線を浴びると日焼け(サンバーン)を起こし、また、慢性的に浴び続けるとしみ、しわ、いぼなどの光老化や皮膚がんの発生につながります。皮膚は色素細胞が産生するメラニン顆粒をもつことで紫外線を吸収し、紫外線の害から皮膚を守っています。

皮膚は眼、耳、鼻とともに感覚器として重要なはたらきをもっています。触覚、痛覚、温覚、冷覚などの知覚機能があり、それぞれの刺激に対する感覚受容器が発達しています。掻痒は皮膚のみに存在する感覚で、急を要さない軽微な侵襲刺激に対応します。痒みは「掻きたいという欲望をもたらす不快な感覚」と定義されています。痒みは掻破を伴うことで、皮膚疾患の増悪に大きくかかわっています。

適正な体温調節は生体の恒常性維持に欠かせません。皮膚は暑いときは毛細血管拡張で熱を体外に逃がします。発汗による蒸散熱は体表面の温度を下げます。寒いときには筋肉を動かして熱を発生させるとともに、皮膚の毛細血管は収縮し、立毛筋が収縮して体表面の空気層を動きにくくして熱の放散を抑えます。いわゆる「鳥肌(とりはだ)」です。

皮膚は免疫担当組織として感染防御、異物に対する獲得免疫の発現にかかわっています。皮膚に侵入した異物(非自己で病原体や化学物質)は表皮内に張り巡らされた樹状細胞(ランゲルハンス細胞)のネットワークに捕捉されます。ランゲルハンス細胞はリンパ節に遊走し、リンパ球に抗原提示を行います。増殖したBリンパ球は抗原特異的な抗体を産生し、また、抗原特異的な感作T細胞も増殖し獲得免疫を担います。

皮膚付属器といわれる毛包皮脂腺系や汗腺からは、それぞれ皮脂、汗が分泌されます。汗腺は2種類あり、生下時から活動し、全身、特に手掌、足底に多く分布するエクリン汗腺と、思春期以降活動を開始し、腋窩、乳輪、外陰部などに分布するアポクリン汗腺があります。エクリン汗と比べ、アポクリン汗は粘稠で多少のにおいがあります。

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