A.皮膚のバリア機能を維持するために「洗浄(保清)」「保護」「保湿」を行います。
渡辺光子
2018年6月公開
皮膚は常に外界に接し、体内環境を守るインターフェイスとしてさまざまな外的刺激(紫外線や外力、細菌など)から身体を守り、恒常性を維持する役割を担っています。スキンケアとは、このような皮膚本来の生理機能を良好に維持する、あるいは向上させるために行うケアといえます。
スキンケアを行ううえで、特に理解しておくべきことは「皮膚のバリア機能」です。バリア機能は本来、皮膚がもつ生理的なものですが、加齢や健康状態、治療の影響などによる皮膚の脆弱化、さらには外的環境などさまざまな要因によってその機能が低下したり、回復しにくい状況が生じたりします。健康な皮膚の表面は、一般的に弱酸性の皮脂膜に覆われた状態であり、これにより細菌の増殖が抑えられ、異物や外的刺激からの防御機能を果たしています。健康な成人の場合、身体をアルカリ性の浴用石けんで洗うと、直後は皮膚表面も一時的にアルカリ性に傾きますが、時間経過とともに皮脂膜を再形成し、バリア機能が回復します。
しかし、例えば高齢者の場合は、皮脂分泌量の減少や水分保持機能の低下により皮脂膜の再形成が遅延しドライスキンとなりやすく、さらなる皮膚トラブルを引き起こす要因となっていきます(図1)。加齢以外でも、浮腫などで皮膚が脆弱化している場合や、糖尿病などの代謝疾患、白血病などの血液疾患、化学療法中、免疫力低下など、さまざまな状況で皮膚のバリア機能は低下します。スキンケアを行ううえでは、この、皮膚本来のバリア機能を維持・向上・回復させるためのケアが基本となります。
図1健康な皮膚(左)とドライスキン(右)
それでは、皮膚本来のバリア機能を良好に保つためのケアとは具体的にどのようなケアでしょうか。1つ目は、「洗浄(保清)」です。バリア機能が低下している皮膚は、外的刺激からの刺激を受けやすくなっているため、刺激物・異物・感染源を除去して皮膚を清潔に保つことが必要です。2つ目は、これらの刺激物などの接触を回避したり、物理的・化学的刺激を緩衝させるための「保護(防御)ケア」です。3つ目には、「角質層の水分バランスを整えるためのケア(保湿)」が挙げられます。これら3つのケアを適切に行うことは、皮膚本来のバリア機能を維持・向上あるいは回復させるための基本となるのです。
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Part2 皮膚のアセスメントとスキンケアの基本テクニック
Part1
健康な皮膚と異常な皮膚
Part2
皮膚のアセスメントとスキンケアの基本テクニック
Part3
ハイリスク・スキントラブルへの対処