皮膚の老化には、他の組織と異なり自然の老化(生理的老化、内因性老化)と光老化(外因性老化)の2種類があります(表1)。高齢者であることは皮膚の外観を見ればほぼ間違いなくわかります。特に、顔面にみられるしわ、しみ(日光黒子)、いぼ(脂漏性角化症)、たるみなどは「老徴」と呼ばれ、一般的には加齢とともに生じる老化現象と理解されています。しかし、たとえ高齢者でも露出部(露光部)と被覆部の皮膚では異なる変化がみられます(図1)。露出部は、紫外線、赤外線、乾燥、寒冷、熱、機械的刺激、大気汚染物質、タバコの煙など外界からの傷害を常に受けています。そのなかでも、特に慢性的紫外線曝露によって生じる光老化が顔面の変化の主体です。さらに、慢性紫外線曝露は皮膚がんを発生させます(光発がん)。すなわち、老徴が顕著な顔面などの変化は、ほとんどが紫外線による光老化によるものです。
内因性 | 外因性 |
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図1高齢者の皮膚の比較(被覆部と露光部)
一方、この光老化に対して被覆部の皮膚変化は、内因性あるいは加齢による「自然老化」と呼ばれ、これは他臓器における自然の老化に対応するものです。皮膚は菲薄化し、弾力性を欠きしわもみられますが、浅く細かいしわで、光老化による深く大きなしわとは異なります。色調もしみはほとんどなくむしろ皮膚色は薄くなります。内因性老化は、ホメオスタシスの観点からは、損傷と修復のバランスが負に傾いていく過程であり、基本的には萎縮性の変化です。
日光は、皮膚の自然の老化を単に加速するだけと考えられていましたが、光老化はそれとは異なる性質の皮膚変化です。自然の老化は避けがたいものですが、光老化は予防可能であり、多少とも回復可能な変化です。
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Part1 健康な皮膚と異常な皮膚
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健康な皮膚と異常な皮膚
Part2
皮膚のアセスメントとスキンケアの基本テクニック
Part3
ハイリスク・スキントラブルへの対処