A.石けんは皮脂分泌量の低下がない健康な皮膚の保清に用います。
渡辺光子
2018年6月公開
皮膚の保清方法としては、石けんを使用した洗浄が一般的に行われています。石けんとは、天然の油脂を主原料としたアルカリ性の洗浄剤で、入浴やシャワーの際によく使われる浴用石けんなどが代表的です。一般的に、石けんは洗浄力に優れ、水だけでは落ちにくい汚れをよく落としてくれますが、同時に皮膚表面の皮脂なども洗い流されます。そのため、皮膚表面のpHは、石けん洗浄後は一時的にアルカリ性に傾きます。その後、健康な皮膚であれば時間経過とともに皮脂膜が再形成されて皮膚表面のpHは弱酸性に戻り、バリア機能が回復します。しかし、高齢者の皮膚は皮脂分泌量が少ないため皮脂膜が再形成されにくく、pHもなかなか回復しません。さらに皮膚は菲薄で水分保持力に乏しく、内部の水分が蒸散しやすくなり、ドライスキンを生じやすくなります(図1)。
図1高齢者のドライスキン(乾燥)
このように、本来皮膚を清潔にするための洗浄ですが、その方法によってはかえってバリア機能を低下させ、特に高齢者の場合は、ドライスキンを助長する危険もあります。そのため、高齢者の皮膚の保清においてはアルカリ性石けんなど洗浄力の強いものは避け、弱酸性の洗浄剤で皮膚のpHを保ちながら、皮脂膜を奪いすぎないように行うことが必要です。さらに、高齢者だけでなく、浮腫など脆弱な皮膚ではバリア機能の維持・回復力が低下していますので、やはり弱酸性の洗浄剤を使用することをお勧めします。
このようなことから、石けんを皮膚の洗浄に用いる場合は、皮脂分泌量の低下がない健康な皮膚の保清として、1日1回程度の使用が適切といえるでしょう。
高齢者や脆弱な皮膚の洗浄は、皮膚のpHに近い弱酸性で保湿成分含有の洗浄剤を選択しましょう(Part2 Q4表1参照)。
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Part2 皮膚のアセスメントとスキンケアの基本テクニック
Part1
健康な皮膚と異常な皮膚
Part2
皮膚のアセスメントとスキンケアの基本テクニック
Part3
ハイリスク・スキントラブルへの対処