スキントラブル解決Q&APart3
ハイリスク・スキントラブルへの対処

Q13NPPVマスク、弾性ストッキングで発生した皮膚トラブル、どうする?

A.予防のための外力低減ケアとスキンケアを行います。

志村知子

MDRPU「医療関連機器圧迫創傷」の名称を「医療関連機器褥瘡」に変更することが2024年2月に日本褥瘡学会用語集検討作業部会から発表がありました。
■関連ニュース(2024年4月)
・医療関連機器“圧迫創傷”から医療関連機器“褥瘡”へ 用語の見直しが進む

2018年6月公開

医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)とは

NPPVマスクや弾性ストッキングなどの医療機器を装着することにより、皮膚が局所的な外力を受けて発生する圧迫性創傷を医療関連機器圧迫創傷(medical device-related pressure ulcers:MDRPU)といいます。MDRPUは治療に用いる医療機器によって生じる二次的合併症であり、医療事故の一つとしてとらえて対策を講じる必要があります。2016年に日本褥瘡学会が刊行した『MDRPU ベストプラクティス 医療関連機器圧迫創傷の予防と管理』(図1)には、MDRPU対策に関するベストプラクティスモデルが示されています。他の例に漏れず、MDRPUもまた予防的ケアが最も重要です。MDRPUを予防するための大きなポイントを以下に示します。

図1MDRPU ベストプラクティス 医療関連機器圧迫創傷の予防と管理

MDRPU予防のための外力低減ケア

NPPVマスクや弾性ストッキングを使用する前に必ずサイズ測定を行い、患者に合った正しいサイズを選ぶことが重要です。患者に装着する際は、機器の添付文書に従って正しく装着します。ストッキングのしわやモニターホールのずれ、NPPVマスクの位置などを調整し、確実にフィットさせることにより、摩擦やずれを低減します。弾性ストッキングによるMDRPUは、腓骨・腱・関節などの突出部や、腓腹部など皮膚の柔らかい部位に生じやすく、NPPVマスクによるMDRPUは、鼻根部や鼻周囲、前額部、頬部などに生じやすいため、あらかじめこれらの部位にポリウレタンフィルムなどを貼付して、摩擦とずれを防いだり、クッションの代用となる厚みのあるシリコーンジェルシートなどを用いて圧を分散させます(図2)。

装着部の皮膚に発赤や皮疹、びらん、潰瘍などの皮膚障害が発生していないか、ドライスキンや浸軟(発汗、便・尿失禁、創の滲出液などによる湿潤)を呈していないか、痛みや不快感がないかどうかについて定期的に確認します。さらに、定期的に機器を皮膚から外して一時的に除圧したり、機器を固定する位置を変えるなどの対策を講じます。また、MDRPU発生のリスクについて患者・家族に説明し、痛みなどの自覚症状があればがまんせずに医療者に伝えるように説明します。

図2シリコーンジェルシート

シカケア(スミス・アンド・ネフュー)

MDRPU予防のためのスキンケア

皮膚のバリア機能を保持して皮膚障害を予防するためには、皮膚を清潔に保ち、浸軟やドライスキンを防ぐことが最も重要です。温湯だけでは皮膚の汚れを十分に取り除くことが難しいため、洗浄剤を用いて温湯で洗い流すケアを行うことが望ましいでしょう。難しければ拭き取るだけで汚れが落ちるタイプの清拭剤を使用します。ドライスキンや浸軟を呈する皮膚には保湿・撥水クリームなどを用います。機器の汚れ自体もMDRPUの発生や感染などの原因となるため、適宜手入れを行う必要があります。

参考文献

  1. 1.日本褥瘡学会編:MDRPU ベストプラクティス 医療関連機器圧迫創傷の予防と管理.照林社,東京,2016.

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