A.皮膚は表皮、真皮、脂肪織に分かれ、それぞれが皮膚の機能を維持するはたらきをしています。
上出良一
2018年6月公開
皮膚は組織学的には、表面から表皮、真皮、脂肪織(皮下脂肪)に分けられています(図1)。表皮は90%以上が角化細胞からなり、角化細胞は真皮に接する基底層で分裂し、表面に向かうとともに扁平化し、数層の有棘層を形成します。さらに顆粒層に至るとケラトヒアリン顆粒をもち、この層でプログラムされた細胞死を迎え、最終分化といわれます。死んだ角化細胞は角質層を形成します(図2)。角化細胞はケラチンという固い線維性タンパクを細胞内に蓄積し、水分バリアとして大切な角質層をつくるために成熟、分化します。
図1皮膚の組織学的構造
表皮
真皮
脂肪織
皮膚付属器
図2表皮の組織学的構造
表皮には角化細胞以外に、色素細胞(メラノサイト)、ランゲルハンス細胞があります。色素細胞は基底細胞間にあり、チロジナーゼという酵素のはたらきでメラニン顆粒をつくり、樹状突起を通じて基底細胞や有棘細胞にメラニン顆粒を渡します。メラニン顆粒は皮膚色を決定する色素です。皮膚色は人種により大きく異なりますが、色素細胞の分布密度には人種差はなく、肌色の違いは色素細胞のメラニン産生能やメラニン顆粒の大小で決まります。身体の部位により色素細胞の分布密度は異なり、手掌足底では少なく、乳輪、肛囲、外陰部では多く分布します。色素細胞は炎症刺激で活性化され、メラニン色素を多くつくります。日焼け後、皮膚色が濃くなるのは「サンタン」といい、紫外線防御能を上昇させます。
ランゲルハンス細胞は免疫学的に大切なはたらきをもち、表皮内で樹状突起を伸ばしてネットワークをつくっています。異物が表皮内に侵入するとそれを捕獲し、前述(Q2)のような免疫反応の起点となります。
真皮では、膠原線維、弾性線維などの線維成分の間をグリコサミノグリカン、プロテオグリカンなどの糖タンパク、組織間液が満たしています。その中に血管、リンパ管、神経などが存在するとともに、血管周囲には肥満細胞が分布しています。表皮は機械的にきわめて脆弱な組織ですが、真皮はそれを裏打ちして皮膚の機械的強度を保つとともに、表皮への酸素、栄養補給を行っています。表皮突起と真皮乳頭は互いに嵌入しあい、表皮と真皮に存在する細胞はそれぞれが分泌するサイトカインを媒介として相互に作用を及ぼしあっています。
膠原線維は真皮の乾燥重量の70%を占め、線維芽細胞が産生するコラーゲン線維束が縦横に走り、皮膚の機械的強度を保っています。弾性線維は線維芽細胞が産生するエラスチンを主成分とした線維タンパクで弾性に富み、皮膚の弾力性を維持しています。紫外線照射により分解され、異常なエラスチン線維が産生されると、真皮上層に変性した弾性線維が蓄積し、光線性弾性線維症と呼ばれる状態となり、弾力性がなくなります。
肥満細胞は真皮上層の血管周囲に分布し、表面にIgE分子が結合しており、アレルゲンが結合することによりヒスタミンや好酸球遊走因子、サイトカイン、プロスタグランジンD2などさまざまなケミカルメディエーターを遊離して、血管透過性亢進、炎症細胞の遊走などをもたらします。蕁麻疹は肥満細胞から遊離されたヒスタミンが毛細血管の透過性を亢進した結果、真皮に限局性の浮腫が生じたものです。
皮下組織(脂肪織)は脂肪細胞からなり、線維性隔壁で脂肪小葉に区切られています。クッション作用、体温保持作用、エネルギー蓄積作用があります。
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Part1 健康な皮膚と異常な皮膚
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