A.ステロイドの長期使用は皮膚を菲薄化させるため、乾燥から皮膚を守ります。
志村知子
2018年6月公開
ステロイドは、強力な抗炎症作用、細胞増殖抑制作用、免疫抑制作用を有する薬剤として多くの疾患の治療に使用されていますが、長期的な使用によって生じる副作用について知っておく必要があります。ステロイドが皮膚に与える副作用には、皮膚萎縮、皮膚線条、紫斑、多毛などがあります。ステロイドを長期にわたって使用していると、皮膚が菲薄化して毛細血管を保護する組織が脆弱となり、皮膚が少し圧迫されただけで毛細血管壁が破壊されて皮下出血や紫斑を生じたり(図1)、皮膚が少し伸展しただけで裂創などの二次的皮膚損傷が生じやすくなります(図2)。ステロイドには細胞増殖を抑制することにより創傷治癒を遅延させる作用があるため、いったんこのような皮膚障害を生じると、治癒までに時間を要します。また、細胞性免疫機能の低下によって易感染状態となるため、細菌感染や真菌感染を引き起こしやすくなります。
図1紫斑
図2裂創
患者の状態に合わせて入浴、シャワー浴、局所浴、清拭などを行います。用いる石けんや洗浄剤は、皮膚のpHに近い弱酸性のものを選択し、洗浄効果を高めるためによく泡立てて使用します。泡状の洗浄剤を用いると簡便に実施することができます。洗浄剤の成分が残っていると、細菌・真菌感染などの皮膚障害の原因になるため十分に洗い流すことが大切です。
清潔ケアの際は、皮脂成分を取り除き過ぎないように注意します。繊維の織り目が細かいタオルや不織布などを使用し、熱い湯は乾燥を助長するため40℃以下の湯を用います。洗浄剤や入浴剤に保湿成分が配合されているものを用いたり、保清後に保湿剤を使用するのも効果的です。
摩擦による刺激を受けやすいため、肌着や着衣の素材は化学繊維を避けて木綿などの柔らかい素材のものを選択します。下着は締め付けない素材で、ゴムなどによる圧迫が少ないものを選択します。ケアや介助のために、患者の四肢を支えたり持ち上げたりする際は愛護的に行い、圧迫や摩擦を避け、皮膚を強く伸展することのないように注意します。ベッド柵に四肢がぶつかることによる皮膚障害を予防するため、ベッド柵に防護用のクッションなどを設置したり、四肢をストッキネットやオルテックスなどで保護します。テープ固定が必要な場合は、粘着力の強いテープの使用を避け、可能な限り包帯固定やストッキネットを用います。テープの使用が避けられない場合は、皮膚にやさしいシリコーン粘着剤を使用した固定用フィルムなどを用います(図3)。テープ固定をする部位にあらかじめ皮膚被膜剤を用いてテープ剥離の際の刺激を和らげる方法や、テープを剥がす際に剥離剤を用いることも有用です。
図3皮膚にやさしい固定用フィルム
オプサイト®ジェントルロール
(スミス・アンド・ネフュー)
参考文献
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Part3 ハイリスク・スキントラブルへの対処
Part1
健康な皮膚と異常な皮膚
Part2
皮膚のアセスメントとスキンケアの基本テクニック
Part3
ハイリスク・スキントラブルへの対処