スキントラブル解決Q&APart3
ハイリスク・スキントラブルへの対処

Q12著明な浮腫がみられる患者へのスキンケア、どうする?

A.菲薄化しバリア機能の低下した皮膚への洗浄、保湿、損傷の予防を行います。

杉本はるみ

浮腫(edema)とは

1.浮腫の定義と分類

浮腫(edema)とは、細胞外液のうち特に組織間質液が増加している状態をいい、「全身性浮腫」と「局所性浮腫」に分けられます(表1)。全身性浮腫は、心性、肝性、腎性、内分泌性、薬剤性などの全身性疾患に伴い四肢や体幹部などに浮腫が出現しますが、原因疾患が治癒すると改善します。浮腫の左右差はありません。局所性浮腫は、リンパ管閉塞、静脈血栓、遺伝性血管神経性、アレルギーや炎症などで発生し、局所性で浮腫の左右差はみられることがあります。

表1 浮腫の分類

横にスクロールしてご覧いただけます。

分類 病態
全身性浮腫
局所因子と全身性浮腫が組み合わさって発症する

心性浮腫

うっ血性心不全

肝性浮腫

肝硬変非代謝期にみられる腹水と浮腫

腎性浮腫

急性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、慢性腎不全など

内分泌性浮腫

粘膜水腫、月経前浮腫、インスリン浮腫など(甲状腺機能低下症などの内分泌疾患にみられる浮腫)

特発性浮腫

原因不明の浮腫(20~40歳代の女性に多くみられる)

栄養障害性浮腫

脚気、毛細血管透過性亢進、心不全、低蛋白血症

医原性浮腫

薬剤性(NSAIDs、カルシウム拮抗薬など)

局所性浮腫
局所因子が主因で発症する

静脈性浮腫

静脈血栓症ならびにその後遺症(通常は一側患肢の著明な腫脹と緊満性疼痛)

リンパ性浮腫

原発性、続発性(がん、外傷、静脈血栓症)

遺伝性血管神経性浮腫

補体C1阻止因子欠損による血管透過性の亢進で起こる皮膚・気道・消化管などに反復する局所的な非圧痕性の血管性浮腫

間宮直子:浮腫.日本創傷・オストミー・失禁管理学会編,スキンケアガイドブック.照林社,東京,2017:60.より改変して引用

2.浮腫の状態をアセスメント

問診・視診・触診(表2)と、血液検査、尿検査、画像診断などの検査結果を用いて、浮腫の状態をアセスメントします。

表2 問診・視診・触診のポイント

問診のポイント
  • 現病歴・既往歴、手術歴、その他の治療歴
  • 体重の増加、尿量の減少、呼吸苦(胸水)、下痢(消化管浮腫)
  • 倦怠感、嘔気、嘔吐(電解質のバランスの崩れ)
  • 浮腫の発症のきっかけ(炎症、旅行、重労働、介護、患側範囲の外傷)
  • 浮腫の進行(発症までの期間、発症後の浮腫の進行状態)
  • 症状(痛み、手指の握りにくさ、四肢の曲がりにくさ、その他の自覚症状)
  • 蜂窩織炎の有無
視診のポイント

図1浮腫の左右差(リンパ浮腫)

  • 全身性浮腫か局所性浮腫の確認
  • 浮腫の左右差(図1)の有無
  • 色調変化(患肢を下垂し、皮膚の色調変化を見る。赤紫色に変化すれば、静脈疾患合併を推測する)
  • 皮膚の状態(皮膚障害の有無、皮膚の乾燥やリンパ漏の有無)
触診のポイント
  • 皮膚の弾力性・緊満性の有無
  • 圧迫痕の有無と程度の確認:指で離した後に持続的に圧痕を生じる圧痕性浮腫(pitting edema、図2)と圧痕が残らずにすぐに回復する非圧痕性浮腫(non-pitting edema)がある
  • 体幹の場合は腹囲、下肢の場合は周囲径を測定し、経時的な変化を観察する
  • 皮膚の温度差:患側と健側に触れ、炎症徴候や血液還流を確認する

図2圧痕性浮腫(pitting edema)

浮腫のある部位を指で圧迫する
指を離した後に、持続的に圧痕が残る

浮腫がある皮膚のスキンケア

図3皮膚の菲薄化と乾燥

浮腫は、皮膚や皮下組織に過剰な組織間液が貯留した状態であるため、皮膚は菲薄で外力による損傷を受けやすいです。皮脂の分泌低下や水分保持能力も低下するため、皮膚は乾燥し、バリア機能が低下します(図3)。また、血流障害のため末梢の酸素供給・栄養不足、皮膚温の低下、皮膚の免疫力も低下するため、小さな傷からも細菌感染を起こすリスクが高くなり、皮膚の「清潔」「保湿」「損傷の予防」は重要です。

1.皮膚の清潔

  1. 洗浄剤は、皮膚のpHに近い低刺激性・弱酸性の洗浄剤を選択する
  2. 皮膚に余分な摩擦を加えないように、泡立てた洗浄剤で汚れを包み込むようにやさしく洗浄する。関節や指趾間など皮膚面が接触する部分もやさしく洗浄する
  3. 皮膚に洗浄剤が残らないようにぬるめの湯で十分に洗い流し、擦らずに軽く押さえるように水分を拭き取る

2.皮膚の保湿

  1. 皮膚の状態をアセスメントしながら、無香料・無添加・低刺激性の保湿剤を選択する
  2. 入浴後や手洗いの後は、こまめに保湿剤を塗布する

3.損傷の予防

  1. 爪を短く整え、皮膚の外傷や損傷予防に注意する
  2. 浮腫によって菲薄した皮膚は、摩擦・ずれや軽微な外力でスキン-テアが発生しやすいため、四肢は衣類などで保護する。衣類は、柔らかく肌触りのよい伸縮性のある素材のものを選択し、皮膚が擦れないように注意する
  3. 血圧計のマンシェットや抑制具の辺縁などで外傷をまねくことがあるため、ギプス用綿包帯や綿製のチューブ包帯、シリコーンゲルドレッシング材を使用し、皮膚に硬い材質のものが接触することを避ける(図4)。
  4. 損傷を受けた皮膚を被覆する場合は、吸水性のよい、剥離刺激の少ない被覆材を選択し、粘着テープを直接皮膚に貼付することは避け、包帯やネット包帯などで固定する
  5. 滲出液が多い場合は、皮膚の浸軟を防ぐ目的で撥水性クリームを塗布する(図5)
  6. 粘着テープを使用する場合は、粘着力が弱く肌に負担のかからないものを使用し、皮膚被膜剤や剥離剤を用いて2次損傷予防の工夫をする
  7. リンパ浮腫や静脈性浮腫は、医師の指示のもとに圧迫療法を行い、循環を促進してうっ滞を予防する
  8. 医療行為(採血・注射・血圧測定)による損傷を最小限にし、局所性浮腫の場合は患側を避ける

図4前腕に生じた抑制帯による損傷(シリコーンゲルドレッシング材の貼付)

図5リンパ瘻部位に撥水性クリームの塗布

引用・参考文献

  1. 1.間宮直子:浮腫.日本創傷・オストミー・失禁管理学会編,スキンケアガイドブック.照林社,東京,2017:58-63.
  2. 2.小川佳宏:リンパ浮腫の診断.臨牀看護 2010;36(7):860-865.
  3. 3.真田弘美,大桑麻由美:症状別スキンケア 浮腫.日本看護協会認定看護師制度委員会 創傷ケア基準検討会編著,スキンケアガイダンス.日本看護協会出版会,東京,2002:148-151.
  4. 4.内藤亜由美:浮腫のある患者のスキンケア.内藤亜由美,安部正敏編著,スキントラブルケア パーフェクトガイド.学研メディカル秀潤社,東京,2013:111-114.

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