A.スキン-テアはSTAR分類システムで評価を行い、皮弁を戻すケアを優先します。
小林直美
2018年6月公開
ドライスキンは、表皮の角質層の柔軟性が低下し角質が硬く、脆くなり、角質水分量が減少した状態です。外界からの刺激やアレルゲンの侵入を防ぐバリア機能が破綻することが問題です。ドライスキンのスキンケアにおいては、角質層のバリア機能をいかに維持するかがポイントです。弱酸性の洗浄剤を選択し、よく泡立てて皮膚を擦らず愛護的に洗います。すすぎは熱いお湯を避けて38~40℃程度のぬるめとし、拭き取りは擦らず軽く押さえるようにします。スキンケア後10分以内を目安に保湿剤を塗布し、入浴時以外でも1日2回以上の保湿剤塗布を行います(保湿の具体的方法は他項参照)。保湿剤は無香料・無着色で敏感肌用などを選択するとよいでしょう。
スキン-テア(skin tear:皮膚裂傷)は、摩擦・ずれによって、皮膚が裂けて生じる真皮深層までの損傷(部分層損傷)1で、特に高齢者の四肢が好発部位になります。高齢者の皮膚は、ドライスキンに加えて菲薄化し、表皮と真皮の結びつきが弱くなるため、わずかな摩擦・ずれでもスキン-テアが発生しやすくなります。また、長期ステロイド薬使用や抗凝固薬使用、抗がん剤・放射線・透析治療などを受けている場合は、スキン-テアのリスクが高いため注意が必要です。
スキン-テアを生じた場合は、創傷と周囲皮膚の観察を行い、STAR分類システム(図1)を用いて評価することが推奨できます。
図1日本語版STARスキンテア分類
創傷管理は、以下の手順で実施します。
また、次のケア時に皮弁の固定を妨げないよう、被覆材を剥離する向き(方向)をマジックで記載しておきます(図2)。ただし、医療処置が必要な創傷の場合には、ETナース、皮膚・排泄ケア認定看護師や医師に相談して行います。スキン-テアの周囲皮膚はドライスキンに準じたスキンケアを行い、特に皮膚の保湿に努めます。
図2被覆材に剥がす方向を書き、注意喚起
スキン-テアは強い疼痛を伴い、一度発生すると治癒困難なため予防ケアが重要です。高齢者や脆弱な皮膚の方へのスキン-テア予防として、以下のような対策を徹底します。
また、高齢者の皮膚では、保湿剤の塗布方法にも注意が必要です。摩擦・ずれを起こさないよう、手袋をした手を少量の水分で濡らし、そこに保湿剤を取り、皮膚に保湿剤をポンポンと置くように塗布します。保湿剤は低刺激性でローションタイプなどの伸びがよいものが推奨できます。
スキン-テアのケアについては、『ベストプラクティス スキン-テア(皮膚裂傷)の予防と管理』に詳細があり、この冊子は日本創傷・オストミー失禁管理学会のホームページからダウンロード可能です。
スキン-テアは通常の医療・療養環境のなかで生じるため、患者、介護される家族や介護士、リハビリスタッフなどへ周知徹底し、予防ケアの教育・指導を行うことが重要です。
図3四肢の保護:アームカバーとレッグカバー
引用・参考文献
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Part3 ハイリスク・スキントラブルへの対処
Part1
健康な皮膚と異常な皮膚
Part2
皮膚のアセスメントとスキンケアの基本テクニック
Part3
ハイリスク・スキントラブルへの対処