A.鱗屑は角質が小板状に剥離したもので、鱗屑が脱落したものを落屑といいます。鱗屑は、主に乾皮症や乾癬で見られる症状です。
上出良一、渡邊千登世(看護ケア部分)
2018年11月公開
発疹は「原発疹」と「続発疹」に分けられることは前述しました。「原発疹」が時間の経過とともに変化していったものを「続発疹」といいますが、続発疹の中の「付着物」に分類されるものに、鱗屑・落屑、痂皮があります。
鱗屑(scale)とは、角質が蓄積して小板状に隔離した状態をいいます(図1)。頭に付着したものをいわゆる「ふけ」と呼びます。小さくて細かい鱗屑がある状態を粃糠疹(pityriasis)と呼びます(図2)。鱗屑は、角質が著しく厚くなり、多数の角質細胞が一塊となって鱗状の白色片を形成したものです(図3)。鱗屑が主に見られるのは、乾皮症、湿疹、乾癬(図4)、魚鱗癬などです。
この鱗屑が皮膚表面から脱落したものを落屑(desquamation)といいます。「皮膚剥脱」ともいいます。落屑はときに鱗屑と混同されますが、厳密には違います。
図1乾皮症の鱗屑
図2ジベルばら色粃糠疹の粃糠疹
図3鱗屑とは
図4尋常性乾癬の鱗屑
乾皮症(xerosis)
[定義・原因・症状]
「皮脂欠乏症」とも呼ばれます。冬季などに空気が乾燥すると発汗、皮脂分泌が低下し、皮膚が乾燥して乾皮症になることがあります。乾皮症で湿疹が続発したものを「皮脂欠乏性湿疹」といいます。高齢者に多く、下腿、大腿、殿部に好発します。
乾皮症の主な症状は、鱗屑と強い掻痒感です。粃糠様小葉状鱗屑が付着することが多くあります。
[治療と看護ケア]
主な治療法は、保湿クリーム、ワセリンなどの保湿薬の外用です。保湿の「保」は「補」と考え、水分を補う保湿クリームが有用です。掻痒が強い場合は、抗ヒスタミン薬を補助的に内服させることもあります。湿疹を併発している場合は、ステロイド外用薬を考慮することもあります。
加齢が原因の乾皮症では、年齢を重ねるとともに症状が強くなることがあります。そのため、1年を通じて保湿を中心とした適切なスキンケアが必要になります。
日常生活上の対策の1つは、着衣の工夫です。下着は木綿製のものにし、静電気が起きないようウールの重ね着などに注意するよう指導します。
また、室内乾燥を避けるために加湿器を使用して湿度を適切に保つことも必要です。入浴時はぬるめのお湯につかり、低刺激性の洗浄剤の泡を載せ、手でやさしく洗います。ナイロンタオル、アカ擦り、ブラシは使用しないほうがよいでしょう。
乾癬(psoriasis)
[定義・原因・症状]
乾癬は、免疫炎症を伴う代表的な角化亢進疾患です。日本での発症頻度は0.02~0.1%と欧米に比べて少ないのですが、近年は増加傾向にあります。2:1で男性に多く、20歳代と40歳代で好発します。
原因は明らかにされていませんが、多因子遺伝病としてさまざまな遺伝因子に環境要因が加わって発症するとされています。表皮細胞とリンパ球の異常が認められ、表皮のターンオーバーが亢進します。
最も多くみられる病型は尋常性乾癬で、その他に、滴状乾癬、膿疱性乾癬、関節症性乾癬、乾癬性紅皮症などがあります。尋常性乾癬の好発部位は、四肢伸側(特に肘頭、膝蓋)、被頭髪部、殿部などです。皮疹には、厚い銀白色の鱗屑が固着し、正常皮膚面よりやや隆起します。皮疹は乾燥しており、自覚症状はないことが多いのですが掻痒感を訴えることはあります。病歴が長い場合、関節痛、関節変形を伴う乾癬性関節症を併発することがあります。
[治療と看護ケア]
治療法は対症療法になりますが、外用療法と光線療法、内服療法などを行います。外用薬は、ステロイド薬、または表皮細胞の角化亢進を抑制する活性化ビタミンD3を単独または併用します。
乾癬の軽症例では自然寛解することもありますが、多くは軽快増悪を繰り返し慢性経過をたどります。また、外観上の問題もあり、精神的苦痛が大きい疾患です。難治性ではあっても感染性はなく内臓疾患でもないことを、患者や家族によく説明する必要があります。
看護ケアとしては、定期的に皮膚の観察を行い、外用療法や内服療法の指導を行います。また、関節痛などがある場合は適切に対応します。さらに、症状が増悪する因子があれば排除することが必要です。日常生活では、鱗屑を減らそうと入浴時にこすったりすることは逆に皮疹を誘発してしまうことを指導します。落屑が多く、気になるときには、目立たないような薄い色の衣服を着用することなどを説明します。精神的支援には、必要に応じて患者会などを紹介することも大切です。
Part2 皮膚のアセスメントとスキンケアの基本テクニック
Q8 外用薬を使ったスキンケアの方法は?
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