A.原発疹は最も基本的な発疹で、「斑」「丘疹、結節、局面」「膨疹」「水疱、膿疱、嚢腫」があります。
上出良一
2018年6月公開
発疹とは、皮膚に生じた形態学的変化をいいます。この特定の変化には特定の呼び方があり、それらを用いて、さらにそれを修飾する言葉をつけて、自分が観察したものを記載します。例えば「仙骨部に左右対称性に境界鮮明な手拳大の地図状の紅斑があり、一部は出血を伴い、びらんしている」などです。このように記載することで、皮膚病変についての情報を共有することができます。もし、名称の定義が統一されていないと混乱のもとになります。発疹を細かく観察し、その裏にある病理学的変化を推察することが、適切な対応につながります。
発疹は「原発疹」と「続発疹」に分けられます。「原発疹」は最も基本的な皮膚変化で、それが時間経過とともに変化していったものを「続発疹」といいます。皮膚変化を記載するには、まず主体となっている発疹名をとらえ、その形、境界、表面の状態、色、配列、分布を読み取ります。さらに触診で硬さや深さを知り、においも嗅ぎ、患者の自覚症状も聞きます。
原発疹には色の変化を表す「斑」(図1)、隆起を表す「丘疹、結節(腫瘤)、局面」、一時的隆起である「膨疹(蕁麻疹)」、壁で囲まれた隆起である「水疱、膿疱、嚢腫」があります(表1)。
図1原発疹:色調の変化(斑)
隆起 |
丘疹(2~10mm) |
---|---|
壁で囲まれた隆起 |
水疱、小水疱 |
一過性の隆起 |
膨疹(蕁麻疹) |
毛細血管のうっ血、充血で皮膚が紅色を呈する状態です。日焼けや化膿、その他皮膚の急性炎症による普遍的な発疹です(図2)。スライドグラスや透明なプラスチック板で圧迫すると色調が消退するのが紅斑の特徴で、「ガラス圧診法」と呼ばれます。同じように赤く見えても紫斑では消退しないので、鑑別に用いる簡単な方法です。
図2紅斑(毛細血管の拡張と充血)
「毛細血管拡張」も紅斑に属しますが、明らかな炎症を伴わないで、肉眼的に毛細血管が赤ミミズのように明瞭に見える場合をいいます。紅斑に属する発疹名として、「発赤」や「潮紅」があります。表面的な赤みがパッと出たとか、じわっと出て拡がったとか、多少の空間的、時間的ニュアンスをもった発疹名です。普通は1日以上にわたることが多く、15分程度で自然消退する短時間の紅斑は発赤と呼ばれ、炎症ではなく神経に対する刺激で起こる軸索反射で生じます。蕁麻疹の軽いものも1日以内の発赤を示すことがあります。
「持続的発赤」という呼び方も聞いたことがあると思います。もともと皮膚科にはない発疹名で、褥瘡の1度を表すために作られたものです(図3)。紅斑と紫斑の混ざり合った状態で、紅斑であれば指で圧迫すると消え、紫斑であれば消えないのですが、押すと少し赤みが薄らぐけれども、多少の紫色が残る状態です。いわばグレイゾーンの発疹であり、日本褥瘡学会の用語集では「発赤」のなかに「……すなわち、紫斑はその名のごとく時間が経つにつれて紫色となるが、出血直後には赤くみえるものの硝子圧では消退しない。このような場合は暫定的に『持続する発赤』と称し、経過を慎重に観察する必要がある」とされています。毎日殿部を観察し、押しても消えにくい紅斑があれば、まずは体圧分散を徹底することが大切です。
図3持続する発赤(紅斑+紫斑)(I度褥瘡)
隆起はその大きさにより丘疹(図4)、結節(腫瘤)(図5)、局面と呼ばれます。サイズに関しては明確な規定はなく、実際には小型のものは丘疹、大きくなると結節、あるいは腫瘤と呼ばれます。壁構造があって内容物のために隆起している場合、内容液が滲出液であれば水疱(図6)、内容液が膿性であれば膿疱(図7)です。内容物が不明なときは嚢腫と呼ばれます。
図4丘疹
図5結節(丘疹、結節[腫瘤])、局面)
図6水疱、小水疱
図7帯状疱疹の膿疱
膨疹は一過性の真皮の浮腫で、多くの場合紅斑、掻痒を伴います(図8)。1日以内に自然消退することが特徴です。異なる部位に出没するので「出っ放し」と思う人もいますが、膨疹の個々の発疹は1日以内に消えるのが原則です。1日以上同じ場所に持続する場合は、浮腫性紅斑と呼びます。膨疹は発疹名ですが、蕁麻疹は発疹名であるとともに疾患名にも使われます。
図8蕁麻疹の膨疹
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Part1 健康な皮膚と異常な皮膚
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健康な皮膚と異常な皮膚
Part2
皮膚のアセスメントとスキンケアの基本テクニック
Part3
ハイリスク・スキントラブルへの対処