A.自壊創があっても創周囲皮膚は洗浄剤を使って汚れをやさしく取り除きます
高木良重
2018年6月公開
乳がんが進行すると、自壊創として存在することがあります(図1)。自壊創(図2)は、におい、滲出液、疼痛、出血といった特徴をもち、日常生活だけではなく心理面へも影響をもたらします。自壊創は難治性であり、創の存在による苦痛に加え、患者はその存在により自身の生命の危機を感じることもあります。そのため、患者を全人的にとらえたうえで創傷ケアにあたるようにします。
図1乳がん自壊創の変化
図2乳がんの自壊創
自壊創は腫瘍の壊死過程に生じるもので、その代謝産物がにおいの原因となります。さらに体臭や口臭が加わり、時に耐えがたいにおいとなることもあります。
自壊創からの滲出液にはタンパク質や微量元素などが含まれており、皮膚に付着することで皮膚トラブルにつながります。また、過剰な滲出液により衣類に汚染すると、においや外観へも影響します。
痛みの原因として、創傷そのものからの影響、そして原疾患に関連したものがあります。痛みがあると、日常生活にも支障をきたすことになります。自壊創の大きさによっては重みを感じることもあります。
自壊創は腫瘍の一部であり血管が豊富に存在します。血管は脆く、毛細血管や、時に動脈の破綻により出血がみられます。出血の仕方としては、にじみ出る場合や噴水様に出る場合などさまざまです。
自壊創は、がんの進行に伴い出現しているため根本的治療は期待できず、創傷に伴う苦痛の緩和と日常生活を支障なく過ごせることを目的にケアが行われます。症状緩和を目的とした局所切除、放射線療法や化学療法による創の縮小、モーズペーストなどによる収れんが治療として挙げられますが、日頃からのスキンケアは創からの滲出液接触による皮膚トラブルの予防だけではなく感染制御にもつながります。
自壊創があっても創周囲皮膚は洗浄剤を用いて汚れをやさしく取り除きます。患者の全身状態が安定していればシャワー浴も可能です。皮膚への刺激を最小限とするために、弱酸性の洗浄剤、ケア時間を短縮するためには洗い流し不要の洗浄剤を選択することを推奨します。自壊創からは滲出液や出血が認められるため、皮膚への付着を避けるために撥水性クリームなどで保護するとよいでしょう。モーズペーストによる処置が行われている場合には、皮膚刺激性が高いため、自壊創周囲の皮膚にマニキュアを塗布したり、皮膚保護剤を貼付することもあります(図3、4)。
自壊創の保護としては、非固着性かつ吸水効果のあるドレッシング材が有用です。自壊創の存在に加えさまざまな症状を呈していることがあるため、患者の苦痛緩和に考慮しながらケアにあたります。
図3モーズペーストによる自壊創の管理
モーズペーストを腫瘍に浸透させることによって、腫瘍の表面から深部に向かって乾固させる
→ 止血、滲出液のコントロール、腫瘍の縮小
※ペーストの硬さは亜鉛華デンプンの量で調整
図4乳がんに対するモーズ療法
参考文献
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Part3 ハイリスク・スキントラブルへの対処
Part1
健康な皮膚と異常な皮膚
Part2
皮膚のアセスメントとスキンケアの基本テクニック
Part3
ハイリスク・スキントラブルへの対処