全身疾患の皮膚への表現として「デルマドローム」という概念があります。皮膚の異常を主訴に来院し、それをきっかけに内臓疾患が見いだされることもあります。また、内科疾患の経過中に、疾患そのものや、その治療に関連した発疹が生じることもしばしば経験します。そもそもデルマドローム(Dermadrome)という言葉は、Kurt Wiener著『Skin manifestations of internal disorders』(1947)に端を発します。しかし、同書では麻疹の発疹も例として挙げられており、現在われわれがもつデルマドロームの概念より幅広いものです。海外の皮膚科教科書ではDermadromeという項目はなく、「全身疾患に伴う皮疹」という括りで記載されています。「皮膚は内臓の鏡」として、日々の診療で仔細な皮膚観察を行うことが内臓疾患の早期発見に結びつくことが期待されます。
ここでは、デルマドロームを詳細に記述するスペースはありませんので、主なものを表1と症例写真で示します。
内臓悪性腫瘍に 伴う皮膚病変 |
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肝疾患に伴う 皮膚病変 |
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膵疾患に伴う 皮膚病変 |
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消化管疾患と 皮膚病変 |
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糖尿病に伴う 皮膚病変 |
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医原性皮膚病変 |
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皮膚症状を伴う 精神疾患 |
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皮膚筋炎は、眼瞼の浮腫性紅斑(ヘリオトロープ様紅斑)、爪上皮の線状出血、関節背面の角化性紅斑(ゴットロン徴候)など特徴ある皮疹を呈します。筋力低下、肺線維症も合併症としてみられます。中年以降の皮膚筋炎では、2/3が内臓がんを合併するといわれています(図1)。
「Sister Joseph結節」は、内臓がんの皮膚転移として有名です(図2)。外科系看護師であったMary Josephが、手術の際に、臍にしこりのある患者は予後が悪いことを外科医に報告したことから始まります。看護師の観察が内臓がん発見のサインになったわけです。
図1皮膚筋炎の皮膚症状
図2Sister Joseph結節
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Part1 健康な皮膚と異常な皮膚
Part1
健康な皮膚と異常な皮膚
Part2
皮膚のアセスメントとスキンケアの基本テクニック
Part3
ハイリスク・スキントラブルへの対処