A.イレウス管の固定方法を工夫すると同時に、固定用テープによる皮膚障害を防ぎます。
志村知子
MDRPU「医療関連機器圧迫創傷」の名称を「医療関連機器褥瘡」に変更することが2024年2月に日本褥瘡学会用語集検討作業部会から発表がありました。
■関連ニュース(2024年4月)
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2018年6月公開
腸閉塞(イレウス)によって腸管が拡張すると、消化管内容物の通過障害が起こり、腹痛、嘔気・嘔吐、腹部膨満、脱水などの症状が起こります。腸管の減圧を図るために胃管やイレウス管を挿入する方法はイレウスの保存的治療の一つですが、この治療法によって起こりうる皮膚障害には、管が鼻孔周囲や尾翼部を圧迫することによる医療関連機器圧迫創傷(Medical Device Related Pressure Ulcer:MDRPU)や、管を固定するためのテープの使用に伴う頬部のスキン-テア(皮膚裂傷)などがあります。これらの皮膚障害を予防するための3つのポイントを以下に示します。
イレウス管の固定方法は、患者の症状により鼻翼部もしくは鼻深溝部と頬部の2か所で固定する場合と、管にたるみをもたせて頬部のみで固定する場合があります。いずれも鼻孔周囲や頬部の皮膚に緊張がかからないように鼻孔部から頬部にかかる管にゆとりをもたせ、テープを引っ張らないようにして管が挿入されている鼻孔と同側の頬部に固定します。鼻孔部を固定する場合は、管が鼻翼や鼻柱を圧迫しない位置で固定します。固定用テープによるスキン-テア発生のリスクが高いと推測される場合や、すでに皮膚に発赤などを認める場合は、ハイドロコロイドドレッシングなどを皮膚に貼付したうえで管の固定を行います(図1)。管の重みが頬部にかかる場合は、クリップやテープなどで寝衣に管を固定します。
図1ハイドロコロイドドレッシングを使用したオメガ固定
テープ貼付部位の皮膚は張力による負担を受けやすいため、毎日、固定の位置を変えてテープを交換します。あらかじめ皮膚に被膜剤(図2)を使用し、テープ貼付部位が繰り返し剥離刺激を受けないようにします。テープを剥がす際に剥離剤(図3)を使用するのも非常に効果的です。胃管やイレウス管固定用の専用テープが流通しており、機能的にも優れていますが、ない場合には伸縮性・通気性・透湿性のあるアクリル系粘着剤を用いたテープを使用します。オメガ固定(図1)を行うと、テープが剥がれにくく固定が安定し、管による圧迫も避けることができます。
図2被膜剤
3MTM キャビロンTM 非アルコール性皮膜
(スリーエム ジャパン)
リモイス®コート
(アルケア)
図3剥離剤
3MTM キャビロンTM 皮膚用リムーバー
(スリーエム ジャパン)
ブラバ 粘着剥離剤
(コロプラスト)
顔面は皮脂の分泌が盛んな部位で不潔になりやすいため、固定用テープを交換する際は、泡立てた洗浄剤や洗い流す必要がない拭き取りタイプの清拭剤を使用してスキンケアを行います。その際に、管が皮膚に接触している部位の発赤、びらん、潰瘍、疼痛の有無について観察します。
参考文献
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Part3 ハイリスク・スキントラブルへの対処
Part1
健康な皮膚と異常な皮膚
Part2
皮膚のアセスメントとスキンケアの基本テクニック
Part3
ハイリスク・スキントラブルへの対処