スキントラブル解決Q&APart2
皮膚のアセスメントとスキンケアの基本テクニック

Q8外用薬を使ったスキンケアの方法は?

A.スキンケアにおける外用薬の役割は「被覆」「保湿」です。

上出良一

2018年6月公開

外用薬使用の目的は「被覆」と「保湿」

スキンケアとは「皮膚から刺激物、異物、感染源などを取り除く洗浄、皮膚と刺激物、異物、感染源などを遮断したり、皮膚への光熱刺激や物理的刺激を小さくしたりする被覆、角質層の水分を保持する保湿、皮膚の浸軟を防ぐ水分の除去などをいう」(日本褥瘡学会)と定義されています。その観点から、スキンケアにおける外用薬使用の目的は、「被覆」「保湿」になります。

保湿はスキンケアで最も重要なケア

被覆にはポリウレタンフィルムなどの医療材料も使われますが、外用薬としては水分、刺激物からの防御としてワセリン、亜鉛華軟膏などの油脂性外用薬が使われます。主に排泄物による汚染が多いおむつ使用者の肛囲、外陰部に塗布します。水仕事で生じる手荒れも適応となりますが、ベタベタする使用感のためあまり好まれません。

保湿は、スキンケア上最も重要な位置を占めます。皮膚の水分を補ったり、水分の蒸発を防ぐことで皮膚の潤いを保つことが目的です。保湿剤はヒューメクタントとエモリエント剤の2つに分類されます。ヒューメクタントは皮膚に水分を与える吸湿性の高い水溶性の成分からなり、グリセリン、乳酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、尿素、ヘパリン様物質、キチン誘導体、コラーゲン、セラミドなどが用いられます。剤形としてクリーム、乳液、ローションなどがこれに該当します。

エモリエント剤は皮膚の表面に滑らかに伸び、皮膚からの水分の蒸散を抑え、皮膚を柔らかくする油溶性の成分で構成されます。皮膚からの水分蒸散を抑えて潤いを保つため、天然油脂、ワセリン、長鎖脂肪酸、脂肪酸エステル、ラノリン、リン脂質などが用いられます。

保湿というと油脂性のワセリンなどを塗布するのが安全と思われています。しかし、これは皮膚からの不感蒸泄や創部からの水分蒸散を油脂性皮膜で覆って水分喪失を抑制はするものの、水分を積極的に与える機能はありません。時に、皮膜下に汗や分泌物などが貯留し、またターンオーバータイム(新陳代謝)が延長し、自然の皮脂分泌を抑えます。その他、使用感の問題、衣類の汚染などデメリットも多いことは注意する必要があります。

実際に、ワセリンとクリーム剤を塗布した後の水分保持能を調べると、ワセリンよりクリーム基剤のほうが優れています。保湿は「補」湿と考え、乾燥皮膚には角質層に水分補給するヒューメクタントをまず使用するのがよいでしょう。

外用薬の塗布方法

外用薬の使用法としては、「貼付」と「塗布」があります。貼付は湿疹、びらん、潰瘍などの湿潤した病的皮膚のときに行われます。保湿などでは一般的に塗布が行われ、原則1日2回、擦り込まないようやさしく皮膚面に塗り拡げます。塗布量は、最近では目安として「Finger tip unit」(図1)が使われています。人差し指の指先(末節)の長さは約2.5cmあり、その長さにチューブから押し出すと約0.5gとなり、その量で手のひら2枚分の面積を覆えます。しかし、チューブの口径はさまざまで、また塗布面積をいちいち計算して塗るのも大変です。成人の体表面積は約1.6m2あり畳1畳分くらいです。そこに十分量の塗布を行うには約16g必要となります。それくらい多めと思われる量を塗る必要があります。一般的に保湿剤を塗布する際は、塗布後ティッシュペーパーを当てて、ゆっくり剥がれ落ちるくらいのべたつきが目安です。

図1Finger tip unit

小林直美:乾燥(ドライスキン).日本創傷・オストミー・失禁管理学会,スキンケアガイドブック,照林社,東京,2017:29.より引用

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