2015年5月公開
「洗腸」は、残っている腸管にストーマから一定量の微温湯を入れ、腸管にある便を微温湯とともに強制的に排出させる方法です。一般に1~2日に1回定期的に(朝が多い)微温湯をストーマから腸管内に注入し、たまった便を一度に排出させるため、ストーマ装具を装着せず1日の生活を過ごすことができます。「灌注排便法」ともいい、「自然排便法」とともに消化管ストーマを持つ人の排便法としては定着していました。
しかし最近は、ストーマ装具が改良され、造設・管理方法の技術が向上したことによって自然排便法が主流になっています。ストーマを持つ人にとって、自然排便法と灌注排便法のどちらがよいかは一概には言えません。メリット・デメリットをよく知って、どちらの方法にするか医師や看護師と相談して決めましょう。
洗腸は通常準備や片づけも含めると60~90分程の時間がかかります。しかし、いつ出るかわからない便への悩みが軽減され、臭いや漏れ、装具による皮膚障害などストーマを持つ人が抱えている精神的不安や身体的苦痛から解放できる点では大きな意義といえましょう。
ただ、ストーマを持つ人すべてに適応できるわけではありません(例えば下行結腸やS状結腸以外のストーマの場合は洗腸には適していません)。洗腸によって定期的な排便が得られるためには医師や看護師による指導が必要になること、そして落ち着いて洗腸に取り組むための自宅でのスペースの確保が必要となることなども考慮する必要があるでしょう。
洗腸は術後半年以降に始めることが望ましいとされています。それは、洗腸を行っている1時間ほどのあいだ座っていられるくらいに体力が回復していることが必要だからです。 術後の腸管の機能や排便の性状が落ち着き、さらにストーマとの生活に慣れて精神的に余裕が生まれ、心身ともに安全に実施できる状態が望ましいのです。
洗腸を行う際には、医師・看護師による指導を受けます。主に病院のストーマ外来で指導を受けることが多いでしょう。
体調が悪かったり、不安が強い場合、あるいは空腹時や食後1~2時間は実施しないようにしましょう。洗腸液の量は500~1000mLが目安とされていますが、腸管の長さにより異なるため、温度や速度も含めて医師の指示を受けて行うことが必要です。
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