2015年5月公開
1.必要物品
洗腸セット
コロクリンPC(アルケア株式会社)
個々の洗腸物品
1.洗腸液袋 |
ストーマより60~80cm 高い位置に吊り下げて用いる。容量は1,500~2,000mL。 通常、腸管内に注入する量は1,000mL以下であるが、実施後に洗腸液排出物品内やストーマ周囲を残った温湯で洗浄に利用するため、多めの量になっている。洗腸液袋に温度が表示されるものもあるが、慣れるまでは水温計を用い適温の感覚を覚えるとよい。 |
洗腸液注入アダプター 2段式ストッパー |
洗腸液を結腸に注入する際にストーマに当てる器具で円錐形をしている。 素材はシリコン製やプラスチック製で、ストーマへの密着性を考慮し、柔軟性のあるものが使われている。 洗腸液注入アダプターは装具メーカーによって先端の太さや材質に違いがあるため、ストーマの形状に応じて適切なものを選択する。 |
流量調節機能 ドリップチャンバー |
洗腸液袋と洗腸液注入アダプターを接続させるチューブには、流量監視器、流量調節器がついている。 流量監視器は、点滴の滴下筒に類似したものや、水車の回転により流量測定や逆流を視覚的に観察できるようになっているものがある。 流量調節器は、ロールクランプやスライダー方式で握りやすく工夫されている。 |
ロールクランプ |
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洗腸液排出スリーブ |
注入した洗腸液や排泄された便を便器に捨てるために用いる袖状の袋で、上下ともに開放している。 上部の開口部から洗腸液注入アダプターを挿入し、下部の開口部は便器の中に入れ、洗腸液注入後にストーマから噴出する便を誘導する。 |
洗腸用面板 フェースプレート |
スリーブを取り付け、ストーマ周囲皮膚にベルトで固定するための輪の形状をした平板。 |
2.手順
8~40℃の温湯を、注入量よりも500mLくらい多めに用意し、流量調節器を閉じた洗腸液袋へ入れてスタンドやS字フックにかける。 流量調節器を閉じ、ドリップチャンバーを軽く押して温湯を少し溜めてから、洗腸液注入アダプターまでのチューブ内の空気を抜くために温湯を流す(図1)。 液面をストーマの高さよりも50cmくらい(洗浄液バックが目の高さになる程度)の位置に調整する。 フェースプレートにスリーブを取り付け、腹部にベルトで固定する。 洋式トイレ、もしくは洋式トイレの前のイスに腰掛け、スリーブの先端を便器に垂らす。スリーブの裾は、トイレにつからない程度にカットする。 手袋をした利き手の指先に潤滑剤をぬり、ストーマ孔にゆっくりと指を挿入し腸の走行を確認する。 潤滑剤を付けた洗腸液注入アダプターを腸の走行に向かってゆっくり挿入する。アダプターが入らなかったり、洗腸液が注入されない場合は、アダプターの向きを変えてみたり、深呼吸や体位を変える、バックの位置を少し高くするなどの工夫をしてみる。 |
図1 |
注入量は500mLくらいから開始し、1分間に100mL(図2)、アダプターを固定しながら5分から10分かけて注入する。腹部症状や気分不快がなければ、次回より徐々に量を増やす。洗腸液が少ないと、十分に便が出きらないこともある。また、湯量が多すぎたり、湯が冷たかったり、流量が早いと腹痛や冷や汗などの症状を起こすので注意する。 注入後は流量調節器を閉鎖にし、5分程度アダプターをストーマに固定したままストーマからの液漏れを予防する。その間液漏れがある場合、漏れた分を追加注入する。 |
図2 注入量の目安 |
その後、アダプターをストーマから外し、スリーブ上部をクリップなどで閉鎖して待つ(図3)。30分間、断続的にほとんどの便や洗腸液が排泄される。 排便の最後に黄色の液(後便)が出たことを確認し、終了とする。 スリーブ上部のクリップを外し、洗腸液袋に残っている温湯でスリーブ内を洗い流す。 フェースプレートとスリーブを取り外す。 ストーマ装具の貼付やガーゼ、吸収パッド付き絆創膏などで保護する。 |
図3 スリーブ上部をクリップで閉鎖 |
洗腸液注入後に排便がうまくいかないときは、腹部を優しくマッサージすると排泄しやすくなります。
また、洗腸の記録を行って適切な注入量や排便と排便の間隔の評価をします(表2)。状況によって、毎日の実施がよいのか、2日に1回でもよいのかを医師や看護師と相談しましょう。
表2 実施記録の例
〇月1日 | 〇月2日 | 〇月3日 | 〇月4日 | |
液量 | 500mL | 700mL | 700mL | 800mL |
かかった時間 | 5分 | 7分 | 8分 | 9分 |
便が出始めてから後便が出るまでの時間 | とりあえず30分で終わりにした | 38分 | 38分 | |
洗腸後、次の便が出るまでの時間 | 20時間 | 出なかった | 48時間 | |
気付いたことなど | 後便が良く分からない。 | 軽い腹痛の後勢いよく便が出た。後便がわかった。 | 洗腸後、便は出ずに洗腸液だけだった | 注入後の張り感がつらい。 700mLが丁度よい |
文献
1.ストーマリハビリテーション講習会実行委員会編:ストーマリハビリテーション-実践と理論.金原出版,東京;2006:115-119,141-142.7
2.大村裕子編:カラー写真で見てわかるストーマケア.メディカ出版,大阪;2006:30-35.
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