2015年5月公開
ストーマ造設患者はがん患者であることが多いため、手術前にがん告知され衝撃を受けることが多い。
それに加えて、ストーマ造設が必要であることを告げられ、強烈な不安に襲われる。
ストーマ造設患者は、以下のような不安や恐怖をもつことが多い。
・原疾患や手術に対する不安
・ボディイメージの変化に対する不安
・従来の排泄機能が失われる恐怖
・社会復帰の不安
・セルフケアに関する不安
・経済的問題に対する不安
・社会生活や家庭での役割が変化する不安
・漠然とした不安
術前にストーマについてある程度理解し、前向きに手術に臨んだとしても、術直後は実際にストーマを造設したことに対して衝撃を受ける。
新たな戸惑い、羞恥心、無力感、嫌悪感、手術を受けたことへの後悔などが加わり、心理的な危機的状態に陥ることも少なくない(図1)。
緊急手術でストーマ造設された患者や、術前にストーマに対する情報を十分に得られなかった場合は、術前に心の準備をすることができない。そのため、術後に現実を受け入れることが難しく、さらに心理的な危機的状態に陥りやすい。
図1 術直後は前向きに手術に臨んでも…
衝撃的な出来事に直面した人の適応過程には、いくつかの危機モデルがある。
ストーマ造設を受ける患者には、「フィンクの危機モデル」が活用されることが多い。
「フィンクの危機モデル」は、外傷性脊髄損傷によって機能障害に陥った人の臨床研究と喪失に対する人間の心理的反応から展開されたものである。その人にとって重大な喪失が引き金となって危機に陥った人が、それを乗り越え、受け入れていく経過と介入の考え方が示されている(表1)。
フィンクの危機モデルは、衝撃・防衛的退行・承認・適応の連続する4段階から構成されている。
衝撃から適応まで順序通りに進むばかりでなく、心身の状態や状況の変化で、段階は一進一退しながら変化していく。
出典:松原康美編:ストーマケア実践ガイド.学研メディカル秀潤社,東京,2013:25.引用一部改変
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術直後は実際にストーマを造設したことで、強烈なパニックや思考の混乱を起こす衝撃の段階や、ストーマ造設した事実に直面できず防衛的退行の段階へ変化していくことが多い。
術直後の時期は、手術による痛みなどの身体的な苦痛や術後経過、看護師をはじめとする医療者の言動や態度、提供されるストーマケア、家族の受け入れ状態によりストーマに対する印象や心理状態は変化していく(図2)。
患者さんの気持ちを理解した対応/安心できるストーマケアの提供
図2 術後の心理状態は、術後経過とかかわる医療者に影響される
患者はこれまでの自分と違う、ストーマを保有した自分を受け入れるために葛藤を繰り返し、不安定な心理状態となる。
そこで、患者の言動、表情、行動を注意深く洞察し、心理状態を十分に理解した適切な対応(表1参照)や、確実なストーマケアを行うことにより安心感が得られ心理的な危機が軽減していく。
身体的な回復やセルフケアの習得が進んでくると、新たな排泄孔であるストーマを身体の一部と認められるようになる。そして、ストーマ管理を「何とかできるかもしれない」という気持ちに変化していく。次第にストーマを保有した自分の生活を考えられるようになり、適応の段階へと進んでいく(図3)。
ストーマ管理を自分でできるようになるかも……
図3 適応の段階
参考文献
1.小島操子:看護における危機理論・危機介入.金芳堂,京都,2004:50-57
2.松原康美編:ストーマケア実践ガイド.学研メディカル秀潤社,東京,2013:22-25
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