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ストーマのセルフケア
[ストーマ用品の基礎知識]
D.その他のストーマ用品

2022年8月更新(2015年5月公開)

日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会編『ストーマ・排泄リハビリテーション学用語集 第4版』(2020年刊、金原出版)に応じて内容を更新いたしました。

ここでは、ストーマ装具、洗腸用具、皮膚保護剤以外のストーマ用品について取り上げる。

ストーマ装具、洗腸用具、皮膚保護剤以外のストーマ用品には、固定具、粘着剥離剤、洗浄剤、皮膚被膜剤、消臭剤、腹帯・パウチカバーなどがある。

ストーマ用品の種類と特徴について理解して使用することで、ストーマ周囲皮膚に対する予防的スキンケアやストーマ保有者のQOL向上により活用することができる。

固定具

装具を固定するのに用いる器具の総称である。

1.特徴

ストーマ装具が腹壁の形状に沿うように、固定強化のため、あるいは安定させるために使用する。ここでは、実践で使用する頻度が高いと思われるストーマ用品のうち、固定具、粘着剥離剤、洗浄剤、皮膚被膜剤、消臭剤、腹帯・パウチカバーの特徴と種類について取り上げる。

2.種類

固定具にはベルト・プレートがあり、粘着テープ、ヘルニアベルト、ヘルニア補正用下着なども含まれる。

1)ベルト・プレート(図1、図2)

ベルトは使用することで腹壁の形状に沿わせてストーマ装具の密着を高めることができる。

図1 ツーピース型ベルト / 図2 ワンピース型ベルト

ベルトは運動時や、腹壁が軟らかく座位や軽い前屈姿勢で腹壁の形状が変化する場合に使用する。

ベルトはベルト連結部に引っ掛けて使用する。

二品系装具のベルト連結部の位置はメーカーによって違いがあり、面板のフランジ部分かストーマ袋のフランジ部分のどちらかにある。

メーカーによってベルト連結部の形状が異なるため、ベルトも同じメーカーのものを使用するのが望ましい。

各メーカーのベルト連結部でも使用できるベルトも販売されている。

ベルト連結部がない場合には、プレートを使用することでベルトを使用することができるものもある。

ベルトの長さと幅はメーカーによって違うため、使用する前に腹囲の適応目安を確認する必要がある。

プレートは内径のサイズが使用する装具と適応するものか確認する必要がある。

2)粘着テープ

粘着テープは、面板の外縁がめくれる場合や入浴時の皮膚保護剤の溶解を防ぐ場合に、面板の外周部に貼用することが多い。

粘着テープはストーマケア用品として販売されているものや市販のものを使用する場合もある。

3)ヘルニアベルト(図3)

ヘルニアベルトやヘルニア補正用下着は、傍ストーマヘルニアで腹部の膨らみが外観上気になる場合や、腹圧によるヘルニアの悪化を予防する場合に使用することがある。

ヘルニア補正用下着は、男性用と女性用に分かれており、ウエスト(ヘルニア部の胴回り)によってサイズがある。

ヘルニアベルトは長さや幅、ストーマ袋を通す開口部の大きさを選択できるものがある。

図3 ヘルニアベルト

図3 ヘルニアベルト

粘着剥離剤

粘着剤や皮膚保護剤を皮膚から剥がす薬剤のことである。

1.特徴

皮膚に付着した粘着剤や皮膚保護剤を剥がしやすくすることで、剥離刺激を軽減することができる。

粘着剥離剤が皮膚に残ると粘着力が低下するため、使用後は十分に洗浄する必要がある。

2.種類

粘着剥離剤にはアルコールを含有したものと含有していないものがある。

石油系溶剤(アルコール含有)

シリコン系溶剤

植物性油脂系溶剤(D‐リモネン、柑橘系油など)

スプレータイプ、ワイプタイプ、ボトルタイプがある(図4)。

図4 粘着剥離剤の形態

図4 粘着剥離剤の形態

洗浄剤

ストーマ周囲皮膚を洗浄するときに用いる用品のことである。

1.特徴

ストーマ装具を交換する際にストーマ周囲皮膚を洗浄するために使用する。

皮膚への刺激が少ないものを選択することが望ましい。

2.種類

1)日常に使用する洗浄剤:石鹸・固形・液体(例:ボディソープ、ハンドソープ)

日常に使用する洗浄剤は、皮膚のpHに近い弱酸性の製品の使用が望ましい。

2)拭き取るタイプの洗浄剤

拭き取るタイプの洗浄剤は、拭き取るだけで水を使用しなくてもよい。

拭き取るタイプの洗浄剤には、ガーゼ等に取ってから皮膚に使用するものと皮膚に直接つけるものがある(図5)。

図5 拭き取るタイプの洗浄剤

図5 拭き取るタイプの洗浄剤

皮膚被膜剤

皮膚被膜剤とは、「皮膚を薄膜状に被覆する薬剤(ゲル、スプレー)」のことである。

皮膚の表面に薄い膜を作り、排泄物の付着や剥離時の角質損傷を防ぐ目的で使われる。

面板の外縁部にテープを貼る場合や、テープ付きのものを使う場合に使用される。皮膚保護剤が当たる部分には使用する必要はない。

皮膚被膜剤の種類には、アルコール性のものと非アルコール性のものとがある(表1)。形状には、個包装タイプ、スプレータイプがある。

表 1 皮膚被膜剤の種類

種類 特徴 製品(形状)【発売元】
非アルコール性

アルコール性のものと比べて洗浄ですぐに落とすのが容易である

保護膜によるつっぱり感やむれ感がない

ペリプレップ(個包装タイプ)
【ソルブ株式会社】

プロテクトバリアフィルム(個包装タイプ)
【イーキンジャパン株式会社】

ブラバ皮膚被膜剤(スプレータイプ、個包装タイプ)
【コロプラスト株式会社】

ノンアルコールスキンプレップ(スプレータイプ、個包装タイプ)
【スミス・アンド・ネフュー株式会社】

ウロプレップ
【村中医療器株式会社】

リモイスコート(スプレータイプ、個包装タイプ)
【アルケア株式会社】

アルコール性

粘着テープや皮膚保護剤の頻回な交換による皮膚剥離を防ぐ

アルコール配合のため速効性がある

コンバケアバリア(個包装タイプ)
【コンバテック ジャパン株式会社】

アダプト保護膜パック(個包装タイプ)
【株式会社ホリスター】

消臭剤

排泄物の悪臭を軽減させる薬剤である。

1.特徴

消臭剤の作用機序別に、①分解・反応型、②吸着型、③マスキング型、に分けられる。

分解・反応型は、化学物質や微生物、酵素を用いてにおいを化学反応させ、無臭化または他のにおいに転化する。

吸着型は、活性炭やセラミックを用いてにおいを吸着し無臭化をはかる。

マスキング型は、香料などを用いてにおいを覆い隠す。

2.種類

多くの消臭剤は作用機序が1種類だけでなく、2~3種類の作用機序を組み合わせることで消臭効果を工夫している。マスキング型のみの作用機序のものはない。

タイプ別では、袋の中に入れるタイプ(図6)、排泄物を処理する前後空中に噴霧するタイプ、ストーマ袋に取り付けてガス抜きの際に消臭するタイプ、ストーマ装具に被せて消臭するタイプ、がある。

ストーマ袋の中に入れるタイプのものには、液状でボトル入りのものと1回分に分包されているもの、潤滑剤の効果を併せ持つもの、粉状で1回分ごとに分けられているものがある。

図6 消臭剤(袋の中に入れるタイプ)
図6 消臭剤(袋の中に入れるタイプ)

図6 消臭剤(袋の中に入れるタイプ)

腹帯・パウチカバー

ストーマ袋が直接、皮膚に接触するのを防ぐために使用する。

1.特徴

ストーマ袋は不織布が付いていても汗を吸い取ってくれないため、ストーマ袋が汗や入浴後など濡れた状態のまま皮膚に接触すると皮膚保護剤外部の皮膚障害の要因となる。

腹帯や袋カバーを使用することで、皮膚障害を予防する一助となる。

ストーマ袋の色が透明のものを使用している場合に使用することで、中の排泄物を目立たなくすることもできる。

腹帯は、ベルトを使用するときにプラスチック製のベルトが直接皮膚に接触させないことを目的として用いることがある。

2.種類

腹帯はストーマケア専用のものが販売されているが(切り口がほつれにくい工夫があるもの)、市販のものを使用していることもある(図7)。

パウチカバーは販売されているが、手作りの袋カバーやガーゼのハンカチなどを代用して使用してもよい。

パウチカバーを下着につけて袋を受けるものが販売されており、手作りで下着に袋カバーを取り付けて使用していることもある。

図7 腹帯の使用例

図7 腹帯の使用例

引用・参考文献

1. 日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会編:ストーマ・排泄リハビリテーション学用語集 第4版.金原出版,東京,2020.

2. ストーマリハビリテーション講習会実行委員会編:ストーマリハビリテーション-実践と理論.金原出版,東京,2006:126-147.

3. 片山育子,中北順子,河村光子:はじめてのストーマケア.メディカ出版,大阪,2007:24-25.