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ストーマのセルフケア
[ストーマ周囲のスキンケア]
C.部位別スキントラブルの原因と対処方法

2015年5月公開

スキントラブルの発生部位を把握することで、その原因がおおよそ推測できる。図1のように部位を分けて考える。

図1 ストーマ周囲皮膚の区分(ABCD-Stoma®による)

図1 ストーマ周囲皮膚の区分(ABCD-Stoma®による)

部位別から考えられる主な皮膚障害の要因を表1に示す。

表 1 ストーマ周囲皮膚の部位別から考えられる主な皮膚障害の要因

ストーマ周囲皮膚の部位 皮膚障害の主な要因
A:近接部

排泄物や腸液の付着による化学的刺激

B:皮膚保護剤部

皮膚保護剤の接触による化学的刺激

皮膚保護剤の剥離刺激

皮膚付属器炎(毛嚢炎)、汗疹、真菌感染

過度な洗浄や摩擦による物理的刺激
など

C:皮膚保護剤外部

皮膚保護剤外周縁の物理的刺激

テープによる刺激

汗の貯留による汗疹

その他の部分

袋の不織布による接触

ベルト使用部の刺激

1.観察のポイント

部位や範囲はどこか?

発症はいつからか?

どのような変化か?

使用装具は?

装具の交換頻度は?

2.近接部のスキントラブル

ストーマ周囲皮膚トラブルの中で一番多いといわれており、主な原因は排泄物の付着や潜り込みによるものである(図2、3)。

排泄物の付着や潜り込みは、以下の点が関係している。
・ストーマサイズと面板ストーマ孔の不一致。
・交換間隔が的確ではない。

図2 排泄物の付着(便)によって生じたスキントラブル

図2 排泄物の付着(便)によって生じたスキントラブル

便の付着により紅斑・表皮剥離を生じた

便に含まれる消化酵素によりアルカリ刺激が加わり発赤
(紅斑)、びらんなどのスキントラブルを生じる

小腸ストーマの場合、酵素活性の高い水様便が多量に排泄され、
短時間でスキントラブルを生じやすい

図2 排泄物の付着(便)によって生じたスキントラブル

便の付着により紅斑・表皮剥離を生じた

図3 排泄物の付着(尿)によって生じたスキントラブル

図3 排泄物の付着(尿)によって生じたスキントラブル

アルカリ尿の結晶がストーマ周囲に付着し偽上皮腫性肥厚(PEH)を生じかけている

尿が長時間にわたり皮膚に接触すると皮膚が浸軟し、
その後肥厚が生じる

尿路ストーマの尿はアルカリ尿になりやすく、
その結果スキントラブルを生じやすい

図3 排泄物の付着(尿)によって生じたスキントラブル

アルカリ尿の結晶がストーマ周囲に付着し偽上皮腫性肥厚(PEH)を生じかけている

【対処方法】

ストーマサイズに合わせた面板ストーマ孔のカット(図4)

適正な装具交換間隔の設定:皮膚保護剤の溶解部の確認(図5)

患者は退院時のストーマサイズのまま面板ストーマ孔をカットしていることも多々ある。

ストーマを傷つけたくないという思いから面板ストーマ孔のカットを大きくしていることもある。

そのため正しい患者指導とともに患者の訴えを聞き対応をしていく必要がある。

図4 ストーマサイズの確認

図4 ストーマサイズの確認

図5 皮膚保護剤の溶解部の確認

図5 皮膚保護剤の溶解部の確認

3.皮膚保護剤貼付部のスキントラブル

皮膚保護剤貼付部は、皮膚保護剤により皮膚の生理機能は保たれるような配慮がされているが、閉鎖環境に置かれることで浸軟が生じる。

浸軟が生じると、皮膚のバリア機能の障害をもたらし、粘着剤の成分が透過しやすくなったり、皮膚表面のアルカリ化が進み、細菌感染しやすくなる。

このような閉鎖環境下での生理的機能の阻害により、後述するようなスキントラブルを生じやすい。

装具交換時に誤ったスキンケアを行うことでトラブルを生じることもある。

1)皮膚保護剤の接触による化学的刺激

皮膚保護剤に含まれる成分によってアレルギー症状を呈することもある(図6)。

図6 皮膚保護剤のアレルギー

装具を変更して1か月後

図6 皮膚保護剤のアレルギー

【対処方法】

皮膚保護剤の変更

皮膚科的治療

2)皮膚保護剤の剥離刺激

貼ったり剥がしたりすることで、生理的なターンオーバーを待たずに角質細胞は剥がれてしまう。

そのため、面板貼付部の菲薄化が生じ、容易に皮膚損傷を生じることもある(図7)。

図7 剥離刺激で皮膚が菲薄している

図7 剥離刺激で皮膚が菲薄している

こんなときには皮膚被膜剤を使用してから、面板を貼ると角質の保護にもなる

【対処方法】

適正な装具交換の設定(設定されている交換時期の目安を参考にする)

愛護的な剥離操作(粘着剥離剤を用いてゆっくり剥がす)

粘着力の強すぎない皮膚保護剤の選択

皮膚被膜剤の使用

3)皮膚付属器炎(毛嚢炎)、汗疹、真菌感染

皮膚保護剤を剥離する際に、体毛を引っ張り毛根に炎症(毛嚢炎)を起こすことがある。

汗腺が閉塞されることで発汗が阻害され汗疹(図8)を生じることがある。

汗や水分が面板貼付部に残存することで真菌感染(図9)の原因になることがある。

図8 炎天下の中農作業をして汗疹発生

図8 炎天下の中農作業をして汗疹発生

図9 洗浄剤の洗い流しが不十分だった

図9 洗浄剤の洗い流しが不十分だった

爪と足の真菌もあった

【対処方法】

除毛(体毛が多い場合)

交換間隔の短縮(汗を大量にかいた場合)

洗浄剤の十分な洗い流し

皮膚保護剤貼付部の十分な水分や汗の拭き取り

皮膚科的治療
*患者や家族の手指や足趾の真菌感染有無も確認する。

4)過度な洗浄や摩擦による物理的刺激

装具交換時に何度も洗ったり、ナイロンタオルなどで擦ることで生じることもある(図10)。

図10 何度もゴシゴシ擦って洗っていた

図10 何度もゴシゴシ擦って洗っていた

【対処方法】

愛護的な洗浄(洗浄剤は泡立てる。皮膚は擦らず泡を転がすようにする)

ナイロンタオルやタワシなどは使用しない
*まれに、ストーマ周囲を消毒したり、ベンジンを用いて粘着剤を除去しようとする誤ったスキンケア方法により、スキントラブルを起こすことがある。

4.皮膚保護剤外部のスキントラブル

1)皮膚保護剤外周縁の物理的刺激

皮膚保護剤の外周縁と皮膚の摩擦、排泄物の重みにより生じる。

【対処方法】

面板の貼付位置、面板の大きさの変更

排泄物はこまめに破棄することを指導

2)テープによる刺激(図11)

図11 面板の外縁にテープを使用

図11 面板の外縁にテープを使用

テープには皮膚保護作用がないためトラブルが生じやすい。

粘着力も強いため剥離刺激を受けやすい。

【対処方法】

代替えとしてハイドロコロイドドレッシング材の使用

粘着剥離剤を用いて愛護的に剥がす

テープ貼用部に皮膚被膜剤を使用
*テープが必要なのか評価をすることも大切である。

3)汗の貯留による汗疹(図12)

図12 皮膚保護剤の外縁の汗と汗疹
図12 皮膚保護剤の外縁の汗と汗疹

図12 皮膚保護剤の外縁の汗と汗疹

腹部に多量の発汗を生じたときは、皮膚保護剤の外縁部に汗が貯留することがある。

その汗により皮膚保護剤が溶け出したり、汗疹や真菌感染を生じることもある。

【対処方法】

こまめに汗を拭く

発汗が多い場合は交換間隔を短縮する

5.その他

1)ストーマ袋(図13)

図13 袋の不織布の部分の接触
図13 袋の不織布の部分の接触

図13 袋の不織布の部分の接触

入浴時や発汗により、不織布が水分を吸収し湿ってしまう。その影響で皮膚の浸軟が生じ細菌感染のリスクが高くなる。

2)ストーマベルト

ベルトの締めすぎによる圧迫や体動による摩擦により皮膚損傷を生じる。

【対処方法】

皮膚への直接の接触を避ける(ストーマ袋はパウチカバーを使用。ベルトは接続部や皮膚の接触部にガーゼなどを挟む)

ベルト使用時は適度に緩める(皮膚との隙間に指が2本入る程度)

スキントラブルを生じた際は、患者の生活の変化(人間関係や経済的なことも含め)の有無にも注意する。

装具交換をする人が変わっていないか、認知能力や視力、手指の巧緻性に変わりはないか、言動や服装の変化はないか、などもアセスメントする必要がある。

参考文献

1. ストーマリハビリテーション講習会実行委員会編:ストーマリハビリテーション-実践と理論.金原出版,東京,2006:251‐269.

2. 三浦英一朗:ストーマ周囲皮膚炎.消化器外科NURSING 2007;12(2):22-31.

3. 熊谷英子:ストーマ周囲皮膚障害のケア その3.消化器外科NURSING 2008;13(12):65‐70.

4. 山村真巳,日比野保子,前田耕太郎:ストーマ周囲皮膚障害に対するケア.消化器外科NURSING 2012;17(2):42-52.

5. 積美保子:ストーマ周囲皮膚炎・皮膚潰瘍の治療と予防.WOC Nursing 2013;1(2):79‐87.