ストーマケア・ナーシング メニュー

ストーマのセルフケア
[ストーマ周囲のスキンケア]
B.スキントラブル予防のためのスキンケア

2015年5月公開

ストーマ装具貼付部位にスキントラブルを生じると、痛みや痒みなどが生じるだけでなく、装具装着が困難となり、セルフケアさえも難しくなる。

そのような状況になると、QOLの低下をきたすだけでなく、ストーマに対する嫌悪、さらには自己効力感の喪失を抱くことにもなり、身体的だけでなく、精神的・社会的な影響を及ぼすこともある。そのため、スキントラブルを生じないように予防ケアを行うことが重要である。

スキンケアの目的

皮膚の生理機能を正常に保つことをめざす。

皮膚に影響を与える刺激を取り除き、皮膚を守り、スキントラブルを予防・改善させられるような環境を整えることが必要となる。

ストーマスキンケアの原則

ストーマスキンケアの原則は、以下のようなものである。

皮膚の清潔を保つ。

刺激物の除去。

機械的刺激の軽減。

感染の予防。

粘着剥離剤(リムーバー)を用いて、愛護的に面板を剥離する(図1)。

皮膚洗浄剤をしっかり泡立て、その泡で汚れを包み込むように洗う(図2)。

十分な微温湯で洗浄成分を洗い流す。洗い流すことが難しい場合は、微温湯で濡らした不織布や繊維の軟らかいもので3~4回拭き取る(図3)。

洗浄剤が皮膚に残っていないかどうか、皮膚を触ってベタベタやヌルヌル感がないことを確認する(図4)。

皮膚に水分や汗の付着がないことを確認してから新しい装具を装着する。

図1 剥離剤を用いて剥離する
図1 剥離剤を用いて剥離する

図1 剥離剤を用いて剥離する

図2 洗浄剤を泡立てて洗う
図2 洗浄剤を泡立てて洗う

図2 洗浄剤を泡立てて洗う

図3 洗浄剤を洗い流す(拭き取る)
図3 洗浄剤を洗い流す(拭き取る)

図3 洗浄剤を洗い流す(拭き取る)

(左:入浴できる場合はシャワーできれいに流す 右:擦らずに押さえ拭き)

図4 洗浄剤が残っていないか確認

図4 洗浄剤が残っていないか確認

洗浄剤の選択

皮膚の清潔を保ち、排泄物などの刺激物を除去するためにも洗浄剤を用いてスキンケアを行う。

洗浄剤の種類を表1に示す。

pHが高い洗浄剤は洗浄力が強く、必要以上に皮脂膜を除去してしまい、皮膚表面のpHは弱酸性に戻りにくい。ストーマ周囲はバリア機能が障害されやすい環境でもあるため、できるだけ負担のかからないような洗浄剤を選択する。

表 1 洗浄剤の種類

洗浄剤の種類 特徴
固形石鹸 pHが高いものが多い。アルカリ刺激が強い場合がある
ボディソープ 弱アルカリ性のものが多い
さまざまな研究がされ、皮膚刺激性は少なくなっている
ハンドソープ(薬用) 殺菌や消炎と洗浄を目的としている
pHが高いものが多い
ベビー石鹸 皮脂や汗の分泌が活発な新生児用に作られたpHが高いものと、乳幼児用に保湿成分を配合した脱脂力の弱い(pHが低い)ものがある
弱酸性石鹸 皮膚のpHに近く、低刺激性

ストーマ周囲皮膚の観察

装具交換をするときに、ストーマ周囲皮膚に異常がないか観察を行う。

発赤(紅斑)(図5)、浸軟(図6)、色素脱出(図7)、表皮剥離、びらん(図6)、潰瘍(図8)、丘疹(図9)、水疱、膿疱などの有無に注意し、その部位や種類、程度を観察する。その原因をアセスメントする能力が必要となる。

アセスメントの際には、ストーマ周囲皮膚障害の重症度評価スケールであるABCD-Stoma®を用いる。

図5 発赤(紅斑)

図5 発赤(紅斑)

図6 浸軟とびらん

図6 浸軟とびらん

図7 色素脱出

図7 色素脱出

図8 潰瘍

図8 潰瘍

図9 丘疹

図9 丘疹

ABCD-Stoma®は、一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会が提案しているアセスメントツールで、それによって採点した結果をもとに、必要なストーマのスキンケア方法を導き出すためのものである。

ABCD-Stoma®は、ストーマスキンケアを専門とするストーマ療法看護師や皮膚・排泄ケア認定看護師でなくても、ストーマケアに携わる医療者の採点結果に信頼性があることが確認されている。そのため、医療従事者であれば適切なスキンケアの目標と方法を導き出せることが特色である。

それによって導き出されたスキンケアは、ストーマケアに従事した経験がある看護師であれば誰もが提供できる基本的な内容になっているので、ぜひ活用したい。

ABCD-Stoma®は、「ABCD-Stoma®ケア」と「ABCD-Stoma®に基づくベーシック・スキンケア」で構成されている。日本創傷・オストミー・失禁管理学会の下記のホームページを参照されたい。
http://www.jwocm.org/