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ストーマ合併症への対応
ストーマ静脈瘤

2015年5月公開

肝硬変や高度の肝転移により門脈圧亢進を呈しているストーマ保有者に見られる晩期合併症の一つである(図1)。

ストーマ静脈瘤はストーマ周囲皮膚、粘膜皮膚接合部、ストーマ粘膜に発生する。

食道静脈瘤と同様にストーマ静脈瘤の破裂は大量の出血をきたし、止血に難渋する場合もある。出血の予防には早期診断が重要と考えられており、原田1によると、表1のような診断基準が挙げられている。

図1 ストーマ静脈瘤
図1 ストーマ静脈瘤

図1 ストーマ静脈瘤

表 1 静脈瘤の診断基準

ストーマ周囲皮膚に放射状の静脈怒張

指圧による怒張血管の消失

粘膜面の静脈怒張および蛇行(数珠状、結節状)

易出血性

ストーマ周囲皮膚の環状色素沈着
(全身所見として肝硬変症の症状を呈する初期は発赤、症状の進行により暗赤色を呈する)

全身所見としては、肝硬変症を呈する

1.原因

静脈瘤は、肝硬変や肝転移などの影響で門脈圧が亢進し、腸管の静脈と腹壁の静脈との間のシャントが形成(門脈系と体循環系の吻合がストーマ粘膜皮膚接合部で形成)されるため生じる。

2.対応

粘着力が弱めの皮膚保護剤が面板に使用されているストーマ装具を選択し、装具交換は中期~長期(4~5日間貼付)とする。装具交換時には粘着剥離剤を使用し、剥離時に加わる刺激を最小限にする。

出血が起こりやすい場合は面板ストーマ孔を大きめに開け、面板からの物理的刺激を減らす。露出したストーマ近接部の皮膚は練状皮膚保護剤や粉状皮膚保護剤で保護をする。

ストーマ袋との摩擦でも出血が生じる場合もある。その場合は、ストーマ、ストーマ粘膜皮膚接合部に粉状皮膚保護剤を散布し、摩擦の刺激を緩和する。

装具変更が可能であれば二品系装具に変更すると局所の観察がしやすく、粉状皮膚保護剤も定期的に散布できる。また、ストーマ袋は透明なものにすると出血に気づきやすい。

出血に気づいた場合はただちに受診をするようにあらかじめ説明をしておく。

ストーマ静脈瘤から出血した場合の治療としては、以下の方法がある。

圧迫止血:ガーゼ、アルギン酸カルシウムなどを用いて圧迫する。

縫合止血:出血部位の静脈を縫合する。

電気メスによる焼灼止血:電気メスで出血部位の止血をする。

どの方法も一時的に止血するが、再出血の予防にはならない。

その他の治療方法として、硬化療法、シャント手術などもあるが、実施できる施設が少ないのが現状である。

引用文献

1.原田俊子,他:ストーマ静脈瘤の診断的要点と局所管理について.Stoma1990,3:136-140.

参考文献

1.穴沢貞男:ストーマ静脈瘤・序説,消化器外科1996,19(11):1732-1735.

2.尾崎晴美,他:ストーマ静脈瘤のストーマ管理,消化器外科1996,19(13):1992-1998.

3.ストーマリハビリテーション講習会実行委員会編集:ストーマリハビリテーション-実践と理論.金原出版,東京,2006:51-58.