ストーマケア・ナーシング メニュー

個別性が高いストーマ患者の具体的な支援
高齢者(認知症含む)のストーマ管理

2015年5月公開

65歳以上の高齢者人口は3186万人(平成25年)で4人に1人は高齢者である。そのうち認知症高齢者が345万人と推計されている。

ストーマ保有者の高齢化が抱える問題はさまざまであり、家族との関係にも留意しなければならない。

ストーマケアは生きている限り必要であり、その人らしく生きることを支えられるストーマ管理が最も重要である。そのためには、本人、家族の力が効果的に機能するように指導することが医療者の役割である。

高齢者一般のストーマ管理

1.問題点

高齢化がストーマセルフケアに及ぼす影響は多様化している(表1)。

表 1 高齢化がストーマセルフケアに及ぼす影響

図1 高齢化がストーマセルフケアに及ぼす影響

2.ストーマケアのポイント

入院時から重要他者との関係を調整し、社会資源の活用を考慮した退院調整を進め、ストーマ外来や専門外来などのフォローアップ体制を明確にしておく。

施設や在宅サービス担当者と連携を取り、指導内容の確認、基本的な装具交換の流れや注意点、サポート内容、疑問点などを解決できる場を設ける。

3.装具選択とケア指導

セルフケア指導では、患者に聞こえているかどうか、伝わっているかどうかを確認しながら進め、できることは必ず自分で行うようにする。できなくなったことは強調せずに自尊心を傷つけない配慮をする。

ケア指導は家族や介護者と一緒に行い、できるだけシンプルな方法で写真や図入りのパンフレットなどを活用して繰り返し行う。

粘着剥離剤や排出口を触り比べ、使用しやすい粘着剥離剤や既成孔の装具を選択するなどして、「簡単にできる!」と思えるような方法を本人や家族と一緒に考える。

皮膚の洗浄は、弱酸性または保湿成分配合の洗浄剤を使用し、擦らないように留意し、装具を剥がす際は粘着剥離剤などを使用して愛護的に行う。

装具は剥離刺激が少なくスキンケア成分(セラミド)配合の皮膚保護剤を使用する。

円背や皮膚のしわ、たるみなどがある場合は(図1)、柔軟性のある面板、しわを固定できる硬さの面板、周囲テープ付きなどを選択する。

図2 ストーマ周囲のしわやたるみ

図1 ストーマ周囲のしわやたるみ

円背によるストーマ周囲の屈曲、細かいしわとたるみがある

4.社会資源の活用

在宅サービスや通所サービスを活用する場合は、家族の負担や経済面を確認して利用回数や時間帯などのサービス内容を調整する。

造設前に利用していたサービスがある場合は、装具交換の対応を含め継続してサービスを受けられるかを確認する。

認知症高齢者のストーマ管理

認知症高齢者のストーマ管理

(左)認知症がある高齢者と家族の状況:老老介護

(右)認知症の症状による家族の困惑

1.問題点

認知症の場合は、中核症状や行動・心理症状がストーマケアに大きく影響する(表2)。

装具装着の違和感からすぐに剥がしてしまう、トイレ以外で便を廃棄する、ストーマをいじる、などの危険がある。

表 2 認知症高齢ストーマ保有者のストーマケアに影響する具体的症状の一例

中核症状 記憶障害 ストーマケアの際にやろうとしていたことがわからなくなる
見当識障害 手順がわからなくなる
理解力・判断力の低下 人とのコミュニケーションがやや困難となる
行動・心理症状 被害妄想 配偶者と子どもが相談して自分を追い出そうと思い込む
不安 今までできたことができなくなるなど、病感からの不安
依存 一人になると落ち着かず不安になる
抑うつ状態 「もう何もかも嫌だ」など意欲の低下がある

認知症高齢者の在宅での患者指導.
泌尿器ケア2007;12(7):29-33.を元に作成

2.ストーマケアのポイント

指導の際は、対象となる人の性格、運動機能、社会背景、家族関係、療養環境などの情報を把握して十分にアセスメントする。

介入者は、医療者側の推測で安易にケア方法を決定せず、本人・家族が自分たちに一番合った方法を模索しながら導き出すのを忍耐強く見守るようにかかわる。

できないことを強要する指導は、精神的混乱を招き行動・心理症状を悪化させるため、できることを確認しながら進める。

できない部分は、家族だけで担うのではなく、訪問看護などの社会資源を活用して夫婦関係や親子関係を維持する。

3.装具選択

装具は、剥離刺激が少ない全面皮膚保護剤付き、ストーマが見えないよう両面に不織布付き(図2)、周囲テープ付きなどを使用する。

テープの下には、皮膚被膜剤を塗布し、医療用テープで補強をして(図3)腹帯を使用。ストーマ袋を剥がさないように、腹帯の巻き終わりが背中側になるよう工夫する(図4)。

図3 認知症高齢者のストーマ管理の一例

図2 認知症高齢者のストーマ管理の一例

ストーマ袋の両面に不織布がついていてストーマが見えない

図4 認知症高齢者のストーマ管理の一例

図3 認知症高齢者のストーマ管理の一例

テープの下には、皮膚被膜剤を塗布し、医療用テープで補強している

図5 認知症高齢者のストーマ管理の一例

図4 認知症高齢者のストーマ管理の一例

ストーマ袋を剥がさないように、腹帯の巻き終わりが背中側になるよう工夫している

近年の高齢社会では、ストーマ保有者も高齢化し、独居高齢者や老々介護の社会背景、認知症、在院日数の短縮化などによりさまざまな問題が生じている。

そのため高齢者のストーマ管理には、セルフケア能力、生活背景、家族背景を考慮した援助が求められる。

なかでも、認知症高齢者のストーマ管理では、家族である親や配偶者が認知症になった事実に家族も混乱していることを理解し、家族の介護負担を軽減するために必要な支援策を早急に考え、十分な話し合いのうえで進める必要がある。

文献

1.板倉洋子:どうする?こんなとき、こんな人のストーマケア(後編)認知症を持つストーマ保有者のストーマケア.消化器外科 NURSING 2009;14(3):657-662.

2.北山三津子:認知症患者を介護する「家族の力」を引き出す看護.家族看護13 2009;7(1):22-26.

3.ストーマリハビリテーション講習会実行委員会編:ストーマリハビリテーション実践と理論.金原出版,東京,2006

4.清水國代:特集高齢患者へのかかわり方ワンポイントアドバイス,伝わるストーマケア指導.Nursing Today 2012;27(2):42-43.