2015年5月公開
灌注排便法(以降、洗腸と表記する)のときに使用される装具である。
洗腸は1969年に日本に導入されたもので、この時期は、粘着性装具の時代であったため、粘着剤で皮膚障害が発生したストーマ保有者にこの排便法は大いに受け入れられた。
洗腸を施行するための用具として、東京衛材研究所(現・アルケア株式会社)から発売された。
当初は、温湯を注入する先端がカテーテルであったことから合併症として穿孔が報告され、その後、先端がコーンと呼ばれる洗腸液注入アダプターへ改良された。
洗腸用具は、“洗腸注入物品”と“洗腸排出物品”からなる(図1)。
図1 洗腸用具(コロクリンPC)
ストーマ保有者が日頃使用している装具やストーマの状況、アダプターの形状など考慮し、洗腸用具のメーカーの選定、セットかバラでの購入かなど検討して選択する。
洗腸液注入アダプター内側洗浄ブラシ、ストーマ袋以外はほとんど再利用できるものの、劣化による破損や正確な注入量が測れないなどの不具合が生じる前に、新しいものに取り換える必要がある(交換の目安は、3~4か月)。
1.洗腸液袋(図2)
ストーマより60~80cm高い位置に吊り下げて用いる。容量は1,500~2,000mLである。
通常、腸管内に注入する量は1,000mL以下であるが、実施後に洗腸液排出物品内やストーマ周囲を残った温湯で洗浄に利用するため、多めの量になっている。洗腸液袋に温度が表示されるものもあるが、慣れるまでは水温計を用い適温の感覚を覚えるとよい。
図2 洗腸液袋
2.洗腸液注入アダプター(図3)
洗腸液を結腸に注入する際にストーマに当てる器具で円錐形をしている。
素材はシリコン製やプラスチック製で、ストーマへの密着性を考慮し、柔軟性のあるものが使われている。
洗腸液注入アダプターは装具メーカーによって先端の太さや材質に違いがあるため、患者のストーマの形状に応じて適切なものを選択する。
図3 洗腸液注入アダプター(左:2段式ストッパー 右:細型ストッパー)
3.流量調節機能(図4)
洗腸液袋と洗腸液注入アダプターを接続させるチューブには、流量監視器、流量調節器がついている。
流量監視器は、点滴の滴下筒に類似したものや、水車の回転により流量測定や逆流を視覚的に観察できるようになっているものがある。
流量調節器は点滴セットのものよりも大きめで、ロールクランプやスライダー方式で握りやすく工夫されている。
図4 流量調節機能(左:ドリップチャンバー 右:ロールクランプ)
洗腸排出物品
1.洗腸液排出スリーブ(図5)
注入した洗腸液や排泄された便を便器に捨てるために用いる袖状の袋で、上下ともに開放している。
上部の開口部から洗腸液注入アダプターを挿入し、下部の開口部は便器の中に入れ、洗腸液注入後にストーマから噴出する便を誘導する。
スリーブは、粘着式と非粘着式がある。粘着式は、二品系装具の面板に粘着させて使用するものと、皮膚に直接粘着するものがある。皮膚に直接貼付する使い捨てタイプは、皮膚保護剤が用いられていないため、皮膚障害に注意が必要である。
非粘着式は、ベルト連結部が付属していてベルトで固定するものと、洗腸用面板に接続して使用するものがある。
図5 洗腸液排出スリーブ(ドレーンチューブ)
2.洗腸用面板(図6)
スリーブを取り付け、ストーマ周囲皮膚にベルトで固定するための輪の形状をした平板である。
洗腸用面板の接合方法は、二品系装具の嵌合部で装着するものと、貼り合わせるものがある。
貼り合わせは、使い捨てである。
図6 洗腸用面板(左:フェースプレート 右:フェースプレートとドレーンチューブの嵌合)
3.洗腸後に使用するストーマ装具
洗腸後も腸粘液やガスは排出されるため、ガーゼなどで保護することが多い。
不慣れな手技や排便間隔に慣れないと、洗腸液の残りや排便により衣服が汚染されることもある。
においや汚染の予防を目的として、ストーマ装具を貼付することもある。
開始後3か月は排便のコントロールが十分ではないため、通常のストーマ袋を貼付する。その後は状況に応じて小さい採便袋を選択する。
洗腸後用として使用できるミニパウチはメーカーによりその大きさや構造はさまざまであり、用途に応じて単品系と二品系装具の面板と組み合わせるものがある。
中に吸収パットが入っているもの、排出口がある下部開放型や閉鎖型、ガス抜きフィルター付き、面板の皮膚保護剤の材質がカラヤ系やCMC系のものなどがある。
洗腸後の排便の有無や皮膚の状態、生活スタイル、希望する管理方法に合わせ、どのような用品を使用するのかを患者と話し合い、管理方法を検討する。
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