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ストーマについての基礎知識
ストーマ造設を行う疾患と術式

2015年5月公開

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特集:ストーマ造設を行う疾患と術式

1. 消化器疾患

消化管ストーマ造設の代表的な術式には、以下のようなものがある(図1)。
・腹会陰式直腸切断術+ストーマ造設術(マイルズ[Miles]手術)
・ハルトマン手術

永久的な消化管ストーマ造設の対象となるのは、自然肛門や排便をつかさどる肛門管の周囲の筋群の近傍に悪性腫瘍があり自然肛門を温存できない場合や、自然肛門の機能不全で排便管理が困難である場合である。

一時的な消化管ストーマは、病変部や手術による消化管の吻合部に排泄物が通過することを避けるために、その部位よりも口側に造設される。大腸切除後の縫合不全が予測された場合や全身状態が悪く一期的に腸管吻合が困難と予測される場合などに造設される。

大腸がんによるイレウスや鎖肛などによる通過障害によって腸閉塞がある場合に、腸管の減圧目的で口側に造設されることもある。

直腸がん

近年は器械吻合の進歩により、腹膜反転部以下の低位に発生した直腸がんでも、肛門温存の手術が可能となってきている。しかし、進行性の直腸がんで、肛門括約筋にまで浸潤しているような場合は、腹会陰式直腸切断術(Miles手術)となり人工肛門造設が必要となる。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は、原因不明の大腸粘膜にびまん性に炎症を生じ、大腸粘膜に潰瘍やびらんが生じる疾患であり、直腸またはS状結腸から上行性に大腸全体をおかす。

特徴的な症状としては、粘血便を伴った慢性の下痢である。内科的治療が奏効しない場合には、結腸全摘+回腸ストーマ造設が行われることがある。

クローン病

クローン病は、若年に好発する慢性特異性炎症疾患である。潰瘍性大腸炎とは異なり、口から肛門部までのすべての部位に病変を有する。

保存的治療として、栄養療法やステロイド剤、免疫抑制剤などの薬物療法が行われる。狭窄や穿孔、膿瘍などをきたした場合には、手術療法が選択される。難治性の肛門病変や保存的治療で改善しない直腸肛門狭窄、直腸腟瘻にはストーマが造設されることもある。

2. 泌尿器疾患

尿路ストーマ造設術の代表的なものには、回腸導管造設術、尿管皮膚瘻造設術、膀胱全摘術+禁性人工膀胱造設術などがある(図2、3)。

尿路である腎盂、尿管、膀胱、尿道のいずれかの解剖学的な形態の異常や尿路の機能が疾患により損なわれた場合に、尿の排出経路を確保するために尿路変向術が行われる。

尿路変向術の中には、前述のように尿路ストーマの造設を必要とするものとしないものがある。

尿路変向術を必要とする病態には、以下のようなものがある。
・がんの根治を目的とし、膀胱など尿路の一部を摘出する手術が必要な場合
・がんの浸潤や炎症性疾患などにより尿路に非可逆的な通過障害がある場合
・何らかの先天性または後天性疾患により尿路の機能に障害が起こり、修復が困難な場合など

膀胱がん・尿道がん

膀胱がんは、粘膜下層までにとどまる「表在性がん」と、筋層以上に浸潤がみられる「浸潤性がん」に大別される。

表在性がんは、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT:transurethral resection of the bladder tumor)という内視鏡的切除術により治療が行われるが、浸潤がんの場合は膀胱部分切除や膀胱全摘術が行われる。

膀胱全摘術の場合は、骨盤リンパ郭清とともに膀胱・前立腺・尿道を摘出し、女性の場合は膀胱・尿道とともに子宮と腟前壁の一部も合併切除されることが多い。このため、膀胱がんの根治手術には尿路変向術が必要となる。

浸潤性の尿道がんの場合も膀胱がんの根治手術に準じ、尿路変向術の適応となる。

前立腺がん

転移のない前立腺がんの標準的手術は前立腺全摘除術であり、膀胱尿道吻合により下部尿路の再建と膀胱機能も温存されるため尿路変向の必要はない。しかし、進行性前立腺がんで原発巣から膀胱への浸潤が進み、尿管の閉塞がある場合は、水腎症から腎後性腎不全をきたすことがある。このような場合には、腎瘻造設などの尿路変向術が考慮される。

他臓器がんによる尿路圧迫や浸潤

a)直腸がん・結腸がん

直腸がんまたはS状結腸がんが前方に進行し膀胱や前立腺に浸潤をきたすことがある。この場合には、根治を目的として骨盤臓器全摘除術を行い、膀胱・前立腺を合併切除するため、消化管ストーマに加えて回腸導管法などの尿路変向術を必要とする。

根治手術が不能な進行がんで膀胱や尿管に浸潤して水腎症をきたしている場合には、尿管皮膚瘻や腎瘻造設などの尿路変向術が考慮されることもある。

b)子宮がん

子宮頸がんは膀胱浸潤をきたしやすく、進行がんとなった場合には尿路への浸潤や圧迫によって尿路閉塞や水腎症を呈するようになる。このような場合は、尿管ステント挿入が試みられるが、それでも改善できないときは病状と予後などから尿管皮膚瘻や腎瘻造設などの尿路変向術が考慮される。

図 1 消化管ストーマ造設の代表的な術式

マイルズ[Miles]手術 ハルトマン手術

図 2 尿路ストーマ造設術の代表的なもの

図2 尿路ストーマ造設術の代表的なもの

図 3 禁制人工膀胱造設術

人工膀胱の形成方法を考案した医師の名前により、コックパウチ、マインツパウチ、インディアナパウチなどがある。

図3 禁性人工膀胱造設術

ストーマリハビリテーション講習会実行委員会編:ストーマリハビリテーション―実践と理論,金原出版,東京,2006:73.図5 - 19,20,21,22を参考に作成

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