2015年5月公開
脱出は、咳嗽やくしゃみなどにより腹圧が上昇した際に、ストーマの腸管が外反しながら異常に突出した状態を指す(図1)。
図1 脱出
1.原因
造設時に遊離した腸管が長過ぎる。
ストーマ造設時の筋膜、腹部皮膚のストーマ孔が大きすぎる。
腹直筋の脆弱化。
慢性的な咳嗽、小児では啼泣などによる過度な腹圧。
単孔式ストーマと比較するとループ式ストーマに起こりやすい。
2.対応
臥位になることで脱出した腸管が容易に還納され、便秘や腹痛を伴わなければ緊急性はなく、医師の判断により経過観察でも問題はない。
脱出した腸管が臥位でも還納しない場合は、循環障害を併発して腸管の拡張、さらに進行すると腸管壊死に至る場合がある。そのため、還納が不可能な場合はただちに医療機関を受診する必要がある(図2)。
図2 脱出した腸管が嵌頓し、血流障害を起こしている状態
経過観察の場合は脱出を予防するベルト(ヘルニアベルト:図3)を併用すると、ある程度コントロールできる。
図3 ヘルニアベルト
ヘルニアベルトを併用しても腸管の脱出を認める場合は、装具選択に注意が必要となる。脱出した粘膜が傷つかないようにフランジがない、単品系の軟らかい装具を選択することが原則となる。
面板ストーマ孔はストーマが最も大きくなったサイズに合わせてカットする。露出する部分の皮膚は粉状皮膚保護剤や練状皮膚保護剤(図4)を用いて保護する。
図4 練状皮膚保護剤(プロケアー®ペースト)
脱出が生じたストーマは脱出時と還納時のストーマサイズ、ストーマの高さが大きく変化する。そして、ストーマ袋内が脱出した腸管で満たされてしまう。そのため、便漏れが起こりやすくなる(図5)。
図5 脱出した腸管が長く、袋内が腸管で埋められてしまうことを
避けるために回腸ストーマ用のストーマ装具を使用している状態
脱出による循環障害を繰り返す場合は、ストーマの再造設を医師に検討してもらう必要がある。
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