2015年5月公開
ストーマは排泄孔として腹部に造設され、排泄をコントロールする機能はない。そのため、ストーマ装具を貼付して、排泄を管理していくことが求められる。
ストーマ周囲皮膚は、常に装具を貼付しなければならず、他の腹部の皮膚と異なる閉鎖環境となる。
さらに、排泄物の付着による化学的刺激、装具の貼り替えによる物理的刺激により皮膚障害を起こしやすい状況にあり、愛護的な装具交換、皮膚の観察を注意深く行っていく必要がある。
1)必要物品の準備を行う(図1)。
粘着剥離剤
処置シーツ
ノギス
ゲージ
はさみ
洗浄剤(洗面器)
ビニール袋
手袋
ロールガーゼ、ガーゼ、
不織布など
交換用装具
図1 必要物品
2)患者に装具交換を行うことを説明する。
離床できる患者は処置室などでプライバシーに配慮して行う。
寝衣を汚染しないよう、処置シーツやビニール袋などを臥位では体の下に、座位では下着やズボンにはさんでおき、上着はストーマ周囲にかからないように、洗濯ばさみなどで止めておくとよい。さらに、バスタオルなどで余計な皮膚の露出がないよう注意する(図2)。
図2 余計な皮膚の露出がないような工夫
4)粘着剥離剤を使用し愛護的に装具を剥がす(図3)。
図3 粘着剥離剤の種類(左:ワイプタイプ 右:スプレータイプ)
面板の一部に剥がすきっかけを作る。片方の手に粘着剥離剤を持ち、面板貼付部と皮膚の間になじませるようにつけていく。
もう片方の手で装具を持ち、ゆっくりと皮膚から剥がしていく。
その際、粘着剥離剤を持った手で腹部を押すようにすると、剥離時の機械的刺激が緩和できる。
正中創やドレーン挿入部が排泄物により汚染されないように、剥がす方向にも注意する(図4)。
図4 剥がし方
正中創を汚染しないように、正中側から外側に向けて剥がしていく
5)剥がした後の面板の溶解や膨潤を観察する。
ストーマ周囲のしわやくぼみの状況、排泄物の潜り込み状況を知ることができる。記録に残すことで次回装具交換時の重要な情報となる(図5)。
図5
剥がした面板の裏側を確認し、面板の溶解や膨潤の程度を見る。
しわやくぼみによる排泄物の潜り込みもわかる
6)面板を半分に折り貼り合わせて臭気漏れを予防する。
排泄物の臭気は、患者自身にも周囲にも影響をもたらすため、封をすることで臭気の拡散を防止することが重要となる。
8)ストーマ周囲皮膚の洗浄(図6)
図6 周囲皮膚の洗浄のしかた
洗浄剤をよく泡立て、泡で汚れを包み込んでいく。ゴシゴシ擦らず泡をなでるようにストーマ周囲皮膚を洗浄する。
結腸ストーマは外側から内側、尿路ストーマは内側から外側へ向かって洗う。
排泄物が出るため、ストーマにガーゼや不織布などを当てておく。尿路ストーマではロールガーゼを当てておくと垂直方向に尿を吸収し、ストーマ近接部のケアもやりやすい。
十分な量の微温湯などで洗い流すか、ガーゼや不織布などを濡らしたもので3~4回押さえる。そしてストーマ周囲を触り、べたつきがないか確認する。
10)皮膚保護剤貼付部及び皮膚保護剤貼付外周部の体毛を処理する。
処理をしないでおくと、装具を剥離する際に毛が引っ張られ毛嚢炎を起こすことがある。
長い体毛ははさみで切ることも有効だが、体毛が多い場合は女性用電動シェーバー等を利用する。
かみそりの使用は皮膚やストーマ粘膜を傷つける危険があり、セルフケアで使用している物品を確認し指導していく。
11)ストーマサイズを計測する(図7)。
ノギス使用時:縦×横×高さ(皮膚から排泄口まで)を計測する。
ゲージ使用時:装具の箱に同封されているゲージをストーマに合わせサイズを確認する。
12)面板を準備する。
計測したサイズに合わせ、面板裏側の剥離紙に線を引く。術直後は浮腫が生じるためこの線よりも10mm程度大きめに印をつける(図8)。
線に合わせ面板を切っていく。単品系装具は面板と一緒に袋を切らないように注意する(図9)。
はさみは根元を使用し面板を回しながら切ると、切り口がギザギザせずに切ることができる。
指で切り口をなでることでなめらかにし、粘膜損傷を予防する(図10)。
サイズが合っているかストーマに合わせ確認する(図11)。
図8 面板の裏側に計測したサイズに合わせて線を引く
図9 単品系装具は面板と一緒に袋を切らないように注意する
袋を引っ張ると、面板と袋の間にスペースができるので袋を傷つけず面板を切ることができる
図10 切り口を指でなでてなめらかにする
図11 実際にストーマに合わせてサイズを確認
13)装具を貼付する(図12)。
装具を貼る前に再度排泄物や粘液を拭き取る。ストーマ周囲皮膚が乾いていることを確認する。
ストーマ装具の排出口が閉じていることを確認する。
面板裏側の剥離紙を剥がし、腹部のしわを伸ばして装具を貼付する。
まずはストーマ近接部をしっかり押さえ、その後外周に向かって密着させていく。
単品系装具は貼ってしまうと、剥がさなければ排出口の向きを変えることはできない。そのため、患者のセルフケアの段階に応じて、排出口の向きを検討し貼付する必要がある(図13)。
術直後は、看護師にケアが委ねられるため、やや外側に向け排泄処理がしやすい位置とする。
セルフケア指導開始後は、患者が排泄物を捨てやすい向きを相談し装具を貼付する。
図12 ストーマ周囲のしわを伸ばし、装具を貼付する
貼付後、まずは近接部をよく押さえる
図13 貼付する位置
(左:術直後:看護師主体でケアを実施するため排出口は外側に向けておく
右:セルフケア指導開始後:本人がケアしやすい向きを考慮し装具を貼付する)
食後は腸蠕動により便が出やすい。
特に回腸ストーマでは多量の水様便が排出されるため、食後は避け、食前や食間に装具交換を予定する。
結腸ストーマでは1cm程度(図14)。
回腸ストーマ、尿路ストーマでは5mm程度を目安とする。
図14 面板溶解の評価
(左:消化管ストーマ、1cm程度で交換 右:尿路ストーマ、5mm程度で交換)
皮膚保護剤の溶解、膨潤の程度や皮膚状態を観察し、交換間隔を調整していく。
排泄物だけでなく夏場は発汗の影響も受けやすいため、気温や活動状況にもよる。漏れずに皮膚障害を起こさない装具交換間隔を調整する必要がある(図15)。
図15 発汗の影響で毛根に一致して皮膚保護剤が白く変化している
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