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ストーマ合併症への対応
術後排尿障害

術後排尿障害とは

直腸がんや子宮がんなどの根治術後に起こる合併症に排尿障害がある(表1)。

排尿機能は、膀胱と尿道の協調運動によって蓄尿と排尿の2つのはたらきによって成立している。

これらを支配しているのは、排尿中枢と交感神経(下腹神経)、副交感神経(骨盤神経)、体性神経(陰部神経)の3つの神経であり、両側性である。これらは密接に関連して、蓄尿や排尿に必要な筋収縮と弛緩という協調運動を支配している。

ストーマ造設患者が術後排尿障害を合併すると、二重の障害を受容しなければならないため、さらに心身の負担が生じることになる。

ストーマケアに加えて、自己導尿も習得し自己管理が長期的に必要となる場合もあるため、患者の日常生活に合わせた導尿時間の設定や支援体制の調整を行う。

表 1 骨盤内手術によって起こる排尿障害

疾患 術式 障害部位
直腸がん 腹会陰式直腸切除術
超低位前方切除術
下腹神経・骨盤神経などの損傷
子宮がん 広汎子宮全摘術 骨盤神経叢の損傷
前立腺がん 前立腺摘出術 尿道括約筋の損傷

術後排尿障害の原因

直腸がんの根治手術におけるリンパ郭清に伴い、排尿機能を司る神経の損傷がある場合や術後の化学療法放射線照射が原因となる。

リンパ節郭清に伴い骨盤内の神経が損傷された場合は、その程度や損傷された神経の部位によって尿意の低下や尿閉、尿の排出困難、尿失禁がみられる。

下腹神経を損傷した場合は、膀胱の伸展性の低下とともに、排尿筋低活動による尿の排出困難や膀胱頸部の閉鎖不全による尿失禁が発生する。

骨盤神経を損傷した場合には、排尿時の膀胱排尿筋の収縮低下、排尿筋低活動あるいは無収縮となる。陰部神経が傷害された場合には、外尿道括約筋の弛緩あるいは排尿時の外尿道括約筋の弛緩不全などがみられる。

神経損傷の程度が高度な場合は、重度の排尿機能障害を生じるが、左右どちらか一方でも神経が温存された場合、排尿機能障害は軽度である。そのため近年では、術後の排尿障害や性機能を維持する目的で、可能な限り自律神経の温存が行われるようになった。

術後排尿障害の評価と治療

手術直後は、膀胱留置カテーテルが挿入されているが、術後の身体状態が安定しトイレ歩行が可能となればカテーテルの抜去が考慮される。

カテーテル抜去後、排尿状態を評価するためには、飲水量と排尿量、排尿時間、尿失禁の有無などを記入する排尿チャートや排尿日誌を活用して評価する。

術後の排尿障害の症状(表2)の有無を観察する。

骨盤内術後の排尿障害(排尿困難・尿閉・残尿)には自己導尿が適応(表3)となる。

表 2 排尿障害の症状

尿勢低下(勢いがない、すっきり出ない)

腹圧排尿(力まないと出しきれない)

残尿、尿閉

尿意の低下や消失

膀胱コンプライアンスの低下

表 3 自己導尿の適応の判断

身体的要件

導尿の動作ができる

座位、立位が保持できる

認知力の低下がない

精神的要件

導尿の必要性や重要性を理解し、納得している

自己管理への意欲がある

身体的要件

支援者が存在し、支援体制がある

導尿可能なトイレ環境がある

術後に排尿困難や尿失禁がある場合には、残尿測定やストレステスト、パッドテスト、尿流動態検査(尿流測定、排尿筋圧、尿流同時測定、膀胱内圧測定、外尿道括約筋筋電図)などが行われ、その結果、排尿障害の程度を評価して対策や治療が行われる。排尿障害の種類と治療について表4に示す。

表 4 排尿障害の種類と治療

種類 治療法
排尿困難 自己導尿
腹圧排尿
バイオフィードバック訓練
薬物療法(コリン作動薬、α受容体遮断薬など)
手術療法(経尿道的前立腺切除術、経尿道的膀胱頸部切開術など)
腹圧性尿失禁 骨盤底筋訓練
バイオフィードバック訓練
薬物療法(α受容体刺激薬、三環系抗うつ薬、β受容体刺激薬など)
骨盤底筋電気刺激療法
尿吸収剤、尿失禁防止具(オムツ、パッド、収尿器、ペノリング®など)
手術療法(尿道スリング手術、尿道周囲注入療法、人工括約筋手術)
切迫性尿失禁 薬物療法(コリン作動薬など)
膀胱訓練
電気刺激法、干渉低周波療法
手術療法(膀胱拡大術など)

文献1より引用

術後排尿障害に対する支援

前述したように、ストーマ造設後の排尿障害は、患者にとってはセルフケアを習得したり、心理的な適応をしていくうえでさらなる負担となることもある。

患者のセルフケア能力や家族やその他の人による支援体制などを適切に調整し、患者が円滑に適応できQOLが維持できるように援助する。

術後の排尿障害が軽度である場合は、一時的に治療や対策が必要でも、一般的には手術後、半年程度で機能が回復してくることを説明する。

尿失禁がある場合には、失禁の量などから適切なパッドの選択について説明し、スキンケアの方法について指導する。

腹圧性尿失禁と診断された場合には、骨盤底筋訓練の指導を行う。ストーマ外来や失禁外来において継続的なフォローアップを受けるよう指導する。

文献

1.ストーマリハビリテーション講習会実行委員会編:ストーマリハビリテーション-実践と理論.金原出版,東京,2006:294.