2021年7月更新(2015年5月公開)
皮膚・排泄ケア認定看護師の成り立ち
わが国におけるストーマケアの専門教育機関としては、WCET*1認定のETナース養成校である「聖路加国際病院ET*2スクール・クリーブランド分校」が1986年に開設された。同校が開講していた9年間に66名のETナースが輩出されている。
その後、日本看護協会の専門看護師・認定看護師制度ができ、1996年にはETスクールでの養成から認定看護師教育課程の皮膚・排泄ケア(WOC)学科として6か月間の教育課程への発展を遂げ、教育養成機関も増えた。2021年現在、2,581名の皮膚・排泄ケア認定看護師が全国で活躍している。2020年からは特定行為研修を組み込んだ認定看護師教育が始まり、2021年にはこの課程を修了した特定認定看護師が誕生した。
医療機関では複数の皮膚・排泄ケア認定看護師が所属しているところもあり、皮膚・排泄ケア認定看護師がスタッフ機能を果たして組織で専従することも増えてきている。
認定看護師は特定の看護分野において、以下の3つの役割を果たす。
(1) 個人、家族及び集団に対して、熟練した看護技術を用いて水準の高い看護を実践する。
(2) 看護実践を通して看護職に対し指導を行う。
(3) 看護職に対しコンサルテーションを行う。
認定看護師はこれらの3つの役割を十分果たせるように、看護管理者とともに組織での依頼や相談を受けるシステムを構築していくことが望まれる。
一般病棟における皮膚・排泄ケア認定看護師の活用
ジェネラリストとしての病棟看護師の役割は、専門性を持つ看護師を活用し、患者にとって最適な看護を計画し実践していくことであり、病棟においてはストーマケアに主体的にかかわらなくてはならない。病棟看護師は、ストーマ造設術を受けた患者の問題を解決するために、より熟練した技術や知識が必要なのか、皮膚・排泄ケア認定看護師の介入が必要なのかどうかについて適切でタイムリーな判断をする役割がある。
そのためには、必要時ただちに認定看護師に依頼できるように、組織でのコンサルテーション(相談)のシステムを理解し、皮膚・排泄ケア認定看護師が提供できる実践の内容を理解しておくことが大切である。
患者の術前・術直後・回復期の各期で、皮膚・排泄ケア認定看護師と協働して患者への看護サービスを提供することによって、ストーマ造設術後の患者(オストメイト)に必要なさまざまなケア技術や知識を学習でき、臨床的な判断を身につけることができる。
オストメイトがストーマと向き合い、日常生活においてQOLを維持できるような適応を促すためには、継続的なケアを必要とする。病棟看護師は患者の入院後、早い時期から退院に備えた指導を開始し、必要時、皮膚・排泄ケア認定看護師にセルフケア指導を依頼し、それとともに患者の理解の程度を評価したうえで必要な内容を強化する役割を積極的に果たす。
患者の退院直前にはストーマ外来への受診ができるように、皮膚・排泄ケア認定看護師に予約調整の依頼をする。
看護管理者の皮膚・排泄ケア認定看護師の活用
皮膚・排泄ケア認定看護師が活用され、病棟看護師がストーマ保有者への適切なケアを提供できるように、看護管理者は認定看護師活用のためのコンサルテーションの仕組み作りとそれを浸透させることをサポートする必要がある。
病院全体の皮膚・排泄ケアにかかわるケアの質の向上を目指して、知識や技術を伝達できるように看護師の教育プログラムの一環として、皮膚・排泄ケア認定看護師に教育的なかかわりを求める。
在院日数短縮による患者への影響を低減するために、看護専門外来などの設置を考慮する必要があるが、ストーマ保有者への継続的なケアや訪問看護との連携など、在宅でのケアを維持できるような仕組みの一つとして、ストーマ外来の設置に、皮膚・排泄ケア認定看護師を活用し積極的にかかわってもらう。
在宅で療養を行っているストーマ保有者(中でも人工肛門もしくは人工膀胱を造設している患者で管理が困難な患者)で通院が困難な人に対して、皮膚・排泄ケア認定看護師が、診療に基づく訪問看護計画によって、看護または療養上必要な指導を行った場合に算定できる「在宅患者訪問看護・指導料」が算定できることになった。
*1 WCET:World Council of Enterostomal Therapists【世界ET協会】
*2 ET:EnterostomalTherapist【ストーマ療法士】
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