2021年7月更新(2015年5月公開)
ストーマを造設される患者は、病気や手術をしたことによる身体的・精神的苦痛にとどまらず、経済的な負担が加わる。
経済的な悩みへの支援ができるように、ストーマ造設した後に活用できる社会資源について事例をもとに解説する。
【事例】
Aさん、61歳、男性。
糖尿病・高血圧があり病院に通院し投薬治療を受けていた。会社は40年勤め退職し、老齢年金もまだもらっておらず退職金で生活をしていた。検診で直腸がんと診断されて、直腸切断・ストーマ造設術を受けることとなった。術前に、術後の治療とストーマ管理について説明を聞き、収入がないのに一生使い捨てのストーマ装具を付けていかなければならないこと、病状から高額な抗がん剤治療が必要な場合があることを聞き、今後の生活に不安を抱いていた。家族構成は、病院通いしている無職の妻と二人暮らし。
【対応】
永久的なストーマ造設術を受けた後に利用できる、身体障害者手帳(ぼうこう又は直腸機能障害)申請、ストーマ装具(日常生活用具)給付申請、障害年金、高額療養費制度、医療費控除について説明を行い経済的な心配が軽減した。
永久的ストーマ造設のため、身体障害等級4級が認定される。身体障害者手帳が交付されると、ストーマ装具の給付申請ができ、その他対象となるサービスが受けられる。術直後から申請が可能であり、術前に住所地の市区町村担当窓口で準備をしてもらうことを勧めた。
65歳未満であり老齢年金を受けていないことから、保険料納付要件を満たしていれば障害年金を受けられる可能性があり、年金事務所で確認をしてもうこととした。
糖尿病・高血圧があり、医療機関を受診し投薬治療を受けている。さらに直腸がんの治療に医療費がかかってくる。1か月(1日~月末まで)にかかった医療費が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額、表1)を超えた分が、あとで払い戻される「高額療養費制度」がある。
医療費が高額になることが事前にわかっている場合には、住所地の市区町村で交付してもらう「限度額適用認定証」(表2)を医療機関等の窓口に提示すると、自己負担限度額の支払のみとすることができる。
生計をともにする配偶者の療養費も含め、1年間(1月1日~12月31日まで)に支払った医療費が10万円または年間所得(200万円未満の人)の5%を超えた場合には、税金が還付される制度がある。
ストーマ装具の購入費用(自己負担分)は、医師が記入した「ストーマ装具使用証明書」(図2)を、医療費控除の明細書とともに確定申告時に提出すると医療費控除の対象となる。
社会福祉制度は複雑でわかりずらいが、病院の医療ソーシャルワーカーや各窓口を紹介するなど、活用できる制度を提示していく必要がある。患者の経済的負担の軽減は、ストーマを造設した患者のQOL向上につながっていく。
【平成27年1月診療分から】
所得区分 | 自己負担限度額 | 多数該当(※2) | |
---|---|---|---|
ア | 標準報酬月額83万円以上の方 報酬月額81万円以上の方 |
252,600円+(総医療費[※1]-842,000円)×1% | 140,100円 |
イ | 標準報酬月額53万〜79万円の方 報酬月額51万5千円以上〜81万円未満の方 |
167,400円+(総医療費[※1]-558,000円)×1% | 93,000円 |
ウ | 標準報酬月額28万〜50万円の方 報酬月額27万円以上〜51万5千円未満の方 |
80,100円+(総医療費[※1]-267,000円)×1% | 44,400円 |
エ | 標準報酬月額26万円以下の方 報酬月額27万円未満の方 |
57,600円 | 44,400円 |
オ | 低所得者 被保険者が市区町村民税の非課税者等 |
35,400円 | 24,600円 |
※1 総医療費とは保険適用される診察費用の総額(10割)である。
※2 療養を受けた月以前の1年間に、3か月以上の高額療養費の支給を受けた(限度額適用認定証を使用し、自己負担限度額を負担した場合も含む)場合には、4か月目から「多数該当」となり、自己負担限度額がさらに軽減される。
「区分ア」または「区分イ」に該当する場合、市区町村民税が非課税であっても、標準報酬月額での「区分ア」または「区分イ」の該当となる。
窓口 | 協会けんぽ 健康保険組合 共済組合 国民健康保険 国保組合 |
→ 全国社会保険協会各県支部 → 各組合事務所(勤務先) → 各組合事務所(勤務先) → 住所地の市区町村役所国保窓口 → 各組合事務所(勤務先) |
手続きに必要なもの | 被保険者証・印鑑 | |
適用 | 申請月から |
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