2015年5月公開
ストーマ保有者となっても、外出や旅行は大きな制限を受けることなく可能となる。戸外へ踏み出すことで身体の健康を取り戻せたという実感が持てる機会となり、心の健康にもつながる。
全身状態が安定し、体力の回復とストーマの局所管理が可能になれば、ストーマリハビリテーションの一つとして、退院前に外出・外泊をする機会を設けることが望ましい。
その理由として、病院外へ一歩踏み出すことで日常生活へ戻す意欲を高めるとともに、戸外の空気を吸うことで療養生活のストレスが発散される。また「外出しても大丈夫」という自信と安心につながる。
退院後、旅行が可能となる時期の決まりはない。ストーマ管理に対する不安がなく「行きたい」「行ける」と患者自身が思えたときに、旅行の際の注意点、工夫点についてアドバイスする。携帯品は外出・旅行いずれも時間・期間の長短によって多少異なる(表1)。
仮に「歩いて数分のスーパーに行く」というような短時間の外出であっても、装具を携帯する習慣を身につけてもらう。
複数名で車で遠方に出かける際には、臭気が車内にこもってしまう場合があるため、適宜換気をしたり、ストーマ装具(特にストーマ袋)を前日のうちに交換しておく。
宿泊先の温泉や大浴場に入る際には、入浴用の装具に変えたり、ストーマ袋をコンパクトにたたんだりして入ることが可能である。それでも他者と入浴することに抵抗感が強い人には、最近では家族風呂など貸切でプライベートに入浴を楽しめる場も多くあるため、宿泊先を決める時点でリサーチすることをお勧めする。
飛行機に乗ると、気圧の変化によってストーマ袋の中の空気が膨張することがある。相談を受けた場合は、こまめにストーマ袋の空気を抜く必要性を伝える。二品系装具では空気抜きが簡単にできるが、単品系装具の場合はフィルター付き装具を選ぶとよいことをアドバイスする。
表1 外出や旅行の際の携帯品
携帯しておくとよいもの | 備考 | |
---|---|---|
外出の場合 | ストーマ装具一式 1組 | |
ビニール袋(半透明) | 廃棄用 | |
ウェットティッシュ | ||
下着 1組 | 長時間の外出時 | |
旅行の場合 | ストーマ装具一式 必要数+予備用1~2組 | 外泊数によって枚数を決め、海外旅行では2,3倍の数を準備し、手荷物とトランクなど分けて携帯する |
蓄尿袋・接続管 | 尿路ストーマの場合 | |
ビニール袋(半透明) | 廃棄用 | |
使用装具名(製品名)を書いたメモ | ||
保険証・身体障害者手帳 | 海外旅行では、ストーマ保有を英文で書いた診断書を必要に応じて準備、携帯カードもある*1 |
*1 海外旅行の携帯カード
コロプラスト(株)HPの写真引用
日本オストミー協会や装具メーカーでは、全国のストーマ用品販売業者の情報をもっている。それらを事前に調べておくと不測の事態に役立つことを患者に説明しておく。
飛行機の利用では、刃物(ストーマ用ハサミ・カッタ-)の機内持ち込みができないため、必ず「手荷物預かり」としてもらう。短期間の旅行であり、ストーマの大きさが固定していれば、あらかじめカットホールした装具を持参する。
海外では、日本とトイレ事情が異なる場合もあるため、確認して対処を考えておくと困らない。
灌注排便法の場合、飲食や環境変化の影響で想定外に排泄する可能性を考え、ストーマ装具を装着する。何年間も装着していない場合は、手技の再確認と再指導を行う。
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