ストーマケア・ナーシング メニュー

ストーマの術前・術後ケア
退院前オリエンテーション

2015年5月公開

ストーマを造設された患者の退院は、ゴールではなく新たな生活への再出発である。今までに体験したことのない、慣れないストーマとともに過ごす生活に向けて、「これまでのようには生活できないのではないか」とさまざまな不安を抱いている。

ストーマを造設したからといって、特に日常生活を制限することはほとんどない。ストーマに慣れ、ストーマとともに過ごす生活を工夫することで、手術前に近い生活が可能である。

日常生活の指導の際には、患者の日常生活の情報を収集し、個々に合わせ「こうすればうまくいきますよ」と、退院後の生活を一緒に考えていけるように退院前オリエンテーションをしていくことが必要である(図1)。

図1 再出発に向けた生活を一緒に考える

図1 再出発に向けた生活を一緒に考える

入院中に行っておきたいオリエンテーション内容(表1)

表 1 退院前オリエンテーション内容の一覧

1.ストーマについて
2.排泄の管理
3.日常生活
4.社会保障
5.外来受診
6.ストーマ装具購入方法・管理
7.患者会

1.ストーマについて(図2)患者様説明

手術によって造設されたストーマは、大腸なのか小腸なのか、尿路であれば回腸導管なのか尿管皮膚瘻なのか、どこに作られているのか、ストーマサイズとともに改めて説明しておくことが必要である。

ストーマは痛みを感じる神経がないこと、刺激や摩擦によって出血しやすいことなど、ストーマ自体の特徴を説明しておくことも必要である。

図2 自分のストーマについて理解してもらう

図2 自分のストーマについて理解してもらう

2.排泄の管理(図3)患者様説明

自然排便法が基本的な管理方法であるが、灌注排便法の適応があり、希望があれば外来で指導が可能であることも説明するとよい。

排泄のマナーとして、使用後の装具の始末は、ストーマ袋内の排泄物をトイレに流し、装具が見えないように配慮し廃棄することを必ず守ってもらうよう説明する。

1.ストーマ袋内の排泄物はできるだけ取り除く
→
↓
2.新聞などで包むと外側からわかりにくい
↓
→
3.ビニール袋に入れる
→
↓
4.空気を抜き、袋の口をしっかり締める

ストーマ袋内の排泄物はできるだけ取り除く

新聞などで包むと外側からわかりにくい

ビニール袋に入れる

空気を抜き、袋の口をしっかり締める

図3 ストーマ袋の始末の方法

出典:日本ET/WOC協会編:ストーマケア-エキスパートの実践と技術.照林社,東京,2007:42より引用

3.日常生活について患者様説明

食事・水分摂取、排便調整、服薬、入浴、睡眠・休息、外出・運動、仕事(通勤・通学)、服装、旅行・外出、性生活、妊娠・出産、オストメイト対応トイレ、ストーマ装具の処理(廃棄)、災害時について説明する。

4.社会保障患者様説明

身体障害者手帳、日常生活用具の給付券申請、障害年金について説明する。

5.定期外来・ストーマ外来・緊急時の受診方法

多くの患者は退院後の生活に不安を感じており、継続して支援できる場所、困ったときに相談できる窓口を紹介する。

6.ストーマ装具購入方法と管理

使用装具の製品名、規格、メーカー名、製品番号、価格を記入して患者に渡し、販売店の連絡先、注文方法、購入後の管理方法など具体的に伝える。

注文は、術後3か月くらいはストーマサイズが変化するので、一度に多くは購入しないように説明する。

ストーマ装具は熱に弱いため、直射日光が当たらない部屋やクローゼット、押し入れなどが保管に適している

ストーマ装具は変形しないように、箱に入れたまま、装具が縦にならないように置き保管する

7.患者会の紹介

社会復帰されたストーマ保有者の方々の親睦や情報交換などを目的にした団体があることを説明する。

8.退院前オリエンテーションの実施時期

退院後の生活に関する指導は、入院時からすでに始まっていると言っても過言ではない。

退院前オリエンテーションにおける指導は、退院が決定してから行うのではなく、ストーマ造設後から少しずつ始めていく。在院日数が短くなっている現状において、十分な説明ができるとは限らず、また患者の認識としてどのくらい残るか不確かである。したがって、退院後に説明内容を確認できるように、パンフレットなどを用いて、支援してくれる家族も含めて行う必要がある(図4)。

図4 退院前オリエンテーションの進め方

図4 退院前オリエンテーションの進め方

文献

1.ストーマリハビリテーション講習会実行委員会編:ストーマリハビリテーション-実践と理論.金原出版,東京,2006:166-171