最新ガイドライン、DESIGN-R®2020に基づく 新まるわかり褥瘡ケア

Part5 褥瘡(じょくそう)を防ぐために重要な体圧管理圧再分配とサポート・サーフェス

2023年2月更新(2016年6月公開)

動画でわかるポジショニングと体位変換の基本と進め方

臨床に生かすポジショニングの基本となる考え方とテクニック

 人の身体には骨突出や生理的弯曲などの凹凸があり、身体とマットレスとの接触面には限りがあります。そのため、「圧再分配」と「サポート・サーフェス」の視点が重要です。

1.圧再分配とは

 まず「圧再分配」ですが、身体が接触する面に加わる圧力を分散させることが必要になり、以下の3つの機能が関係します。

  1. ①沈める(Immersion)
     圧力を減少させるために、身体をマットレスに沈める機能です。これによって特定の骨突出部位に集中していた圧力を、周辺組織や他の部位に分配することができます。沈み込みが大きいほど接触面積が大きくなり平均圧は低くなります。この機能は、マットレスの素材の「圧縮特性」と「寸法(厚み)」によって変わります。
  2. ②包む(Envelopment)
     骨突出部など身体の凹凸に対するマットレスの変形能のことです。変形することで身体とマットレスとの接触面積を大きくできます。マットレスの素材が水や空気などの流動体であれば変形能はすぐれていることになります。
  3. ③経時的な接触面の変化
     接触面が時間に従って変化する概念です。特定部位への圧力の持続時間を短縮させることによって褥瘡発生リスクを少なくすることができます。

 具体的には、圧切替型マットレスはセルの膨張と収縮を繰り返すことによって、マットレスへの接触部分を周期的に変化させています。これらの圧再分配の機能を具体的にイメージできるように示したのが図1です。

図1 圧再分配のイメージ図

図1 圧再分配のイメージ図

市岡滋,須釡淳子:治りにくい創傷の治療とケア.照林社,東京,2011:79.より引用

2.サポート・サーフェスとは

 「サポート・サーフェス(support surface)」はNPUAP(米国褥瘡諮問委員会)が2006年に提唱した、以下のようなマットレスの新しい定義です。
 「サポート・サーフェスとは、組織への外力を管理するための圧再分配、寝床内環境調整、その他の機能を特別に設計された用具である。具体的には、ベッドと一体となっているマットレス、交換マットレス、上敷マットレスである。あるいは、座位クッション、または上敷き座位クッションである。」
 これまでのマットレスは、褥瘡発生予防の観点から、「32mmHg」という毛細血管閉塞圧値を用いて、「除圧(pressure relief)」と「減圧(pressure reduction)」 という捉え方をしていました。除圧ができるマットレスとは、「どの体位においても」「どの身体部位においても」身体に加わる圧力を32mmHg 未満に管理できるものです。減圧ができるマットレスとは、常に32mmHg未満に管理できる機能はないけれど、標準マットレスと比較すると身体にかかる圧力を低く管理できるものです。しかし、どのマットレスにおいても全患者に対して除圧あるいは減圧が提供できているという根拠はなかったため、新たに「圧再分配(pressure redistribution)」という概念が提唱されました。

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