Part8 褥瘡(じょくそう)をやさしくケアするスキンケアと失禁への対応褥瘡管理で欠かせない失禁への対応
2023年2月更新(2016年6月公開)
失禁への対応はスキンケアだけにとどまりません。湿潤予防のためのアルゴリズムに沿って、適切なアプローチを行うことが求められます(図1)。尿失禁は、腹圧性、切迫性、混合性、溢流性、機能性などのタイプに分けられます(表1)。失禁のタイプに応じて適切なケア方法を選択します。
失禁への対応の代表的なものは、適切なおむつ、パッドの使用です。失禁量をアセスメントし、適切な吸水性をもつ排泄ケア用品を選択します。男性の場合は、陰茎固定型収尿器の使用も有効です(図2)。
難しいのは、便失禁への対応です。水様便の付着が頻繁にある場合は、肛門括約筋の弛緩によって便が少量ずつ漏れるときがあり、肛門プラグの適用が考えられます(図3)。
さらに、排便コントロールが困難で、水様あるいは泥状便が持続する場合は、肛門にシリコンチューブを挿入する便失禁管理システムを用いることがあります(図4)。この製品は、直腸内や肛門部に病変や損傷がある場合には使えません。
図1 湿潤予防ケアのアルゴリズム
真田弘美:褥瘡対策マニュアル.エキスパートナース 2002;18:61.より引用
表1 尿失禁のタイプ
①腹圧性尿失禁 | 咳やくしゃみなどの急激な腹圧の上昇に伴い失禁を起こす病態。尿道過可動と内因性括約筋不全の2タイプがある |
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②切迫性尿失禁 | 急激な尿意(尿意切迫感)とともに失禁を起こす病態。中枢神経疾患では、膀胱容量の増加刺激に過剰に反応して排尿筋過活動が起き切迫性尿失禁となることがある |
③混合性尿失禁 | 腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁が混在したもの。高齢女性では双方の病態をもつものが多い |
④溢流性尿失禁(慢性尿閉) | 溢流性尿失禁は放置されると腎不全や尿路感染症により死に至る病態。主な原因は、下部尿路閉塞性疾患と神経疾患による排尿筋収縮不全 |
⑤機能性尿失禁 | 認知機能、上下肢機能、視力などの障害が失禁の主原因である病態 |
鈴木康之:排尿機能障害の症状.日本創傷・オストミー・失禁管理学会編,新版 排泄ケアガイドブック.照林社,東京,2021:15-16.を元に作成
図2 陰茎固定型収尿器(男性用)
コンビーン®セキュア-E(コロプラスト株式会社)
インケア・インビューカテ(株式会社ホリスター)
図3 肛門プラグ
ペリスティーン®アナルプラグ(コロプラスト株式会社)
図4 便失禁管理システム
フレキシシール®SIGNAL(コンバテック ジャパン株式会社)