Part8 褥瘡(じょくそう)をやさしくケアするスキンケアと失禁への対応褥瘡を悪化させる失禁に対してどんなスキンケアを行う?
2023年2月更新(2016年6月公開)
皮膚の湿潤は「浸軟」を引き起こします。浸軟は、“ふやけ”のことで、皮膚の角質細胞が過度の水分によって膨潤した状態です(図1)。皮膚が浸軟すると摩擦力は5倍にもなるといわれ、浸軟状態が持続すると、少しのずれでも皮膚損傷が起こりやすくなります。そのため、過度な湿潤への対応は重要です。
皮膚湿潤の原因の1つが、尿・便失禁によるおむつ内の高温多湿環境です。排泄物が常に皮膚に接触する場合は、過度に湿潤にしないためのケアが大切です。
尿・便失禁がある場合、『褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)』では、褥瘡発生予防のために「洗浄剤による洗浄後に、肛門・外陰部から周囲皮膚への皮膚保護のためのクリーム等の塗布を行ってもよい(推奨度C1)」とされています。洗浄するときは刺激性の高い石けんは避け、低刺激性・弱酸性の洗浄剤を使います。洗浄剤はよく泡立てて、皮膚を擦らないように愛護的に洗います。さらに、洗浄剤が皮膚に残らないように、十分にすすぎます。
尿・便失禁が持続している患者に、「浅い褥瘡」が発生することをよく経験します。洗浄剤によって排泄物の汚れを取り除き(図2)、その後再び排泄物が皮膚に触れないようにすることが必要です。
また、洗浄後には、皮膚保護のために撥水効果のあるクリームを塗布することも重要です。
ディスポーザブルの手袋を用いて多めのクリームを皮膚にのばしていきます。スプレータイプのものを用いてもよいでしょう(図3)。
図1 浸軟とは
溝上祐子:オストメイトの天敵! スキントラブル.溝上祐子 監修,入門尿路ストーマケア.メディカ出版,大阪,2004:94.より引用
図2 殿部の洗浄の様子
愛護的に洗う
図3 撥水効果のあるスキンケア用品の例