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Part11 在宅の褥瘡(じょくそう)患者にどうアプローチする?訪問看護と介護保険の基礎知識

2023年2月更新(2016年6月公開)

 在宅ケアでは、社会資源・人的資源を最大限に使って、療養者・家族の労力や経済的負担の軽減を図ることが重要です。医療・看護の提供は、病院・開業医・訪問看護ステーションなどから行われますので、その地域にどのような医療機関があるかを知っておくことが必要です。そして何より介護保険制度についてある程度の知識をもっておくことが大切です。また、長期の療養生活を支えるために、デイケア、デイサービス、ショートステイなどの地域の福祉資源の活用も大切です。そのための情報を、病院退院時に退院調整看護師やソーシャルワーカー、ケアマネジャーと共有しておきましょう。ケースワーカーに相談すれば福祉用具の貸与等の相談にものってくれます。

1.訪問看護

 訪問看護は、看護師などが療養者の居宅にうかがって、療養上の世話や診療の補助を行うことをいいます。その際、在宅主治医の指示が必要なことは言うまでもありませんが、医師は常にそばにいるわけではないため、訪問看護師の判断はきわめて重要です。
 介護保険制度の発足に伴い、在宅の要介護者に対しては介護保険から訪問看護の介護給付費が支給されるようになりました。利用者は、年齢や疾病、状態によって医療保険または介護保険の適応になります。要介護認定を受けている場合は原則として、医療保険より介護保険のほうが優先されます。自己負担は、医療保険の場合は保険証に応じた一定割合の負担となり、介護保険の場合は介護費用の1~3割が自己負担となります。

2.介護保険制度

 介護保険制度は、療養者が住んでいる市区町村が運営している制度です。介護保険の対象となるのは、65歳以上の人、あるいは40~64歳の人で介護保険の対象となる特定疾病にかかっている人です(表1)。これらの人は、要介護認定を受けて認定されると、さまざまな介護サービスが受けられます。
 要介護認定は市区町村に設置された介護認定審査会で行われます。認定調査員による心身の状況調査に基づくコンピュータ判定と主治医意見書などに基づいて審査され、判定されます。認定は、要支援1・2から、要介護1~5までの7段階になります。要介護1~5は「介護給付」、要支援1~2は「予防給付」が受けられます。
 要介護認定が終わると、ケアマネジャー、ヘルパー、訪問看護師、在宅主治医と利用者・家族とで、ケアプランを作成します。その流れを図1に、受けられる介護サービスを表2、3に示しました。詳しいことは市区町村の福祉課の窓口で相談することが必要です。
 居宅サービスを利用する場合は、利用できるサービスの量(支給限度額)が要介護度別に定められています。限度額の範囲内でサービスを利用した場合は、1割(一定以上所得者の場合は2割)の自己負担です。限度額を超えてサービスを利用した場合は、超えた分が全額自己負担となるため注意が必要です。

表1 介護保険制度の被保険者

  第1 号被保険者 第2 号被保険者
対象者 65歳以上 40歳以上65歳未満の医療保険加入者
受給要件 ●要介護状態(認知症、寝たきり等により、常時介護が必要な状態)
●要支援状態(日常生活上の動作について支援が必要な状態)
要介護状態、要支援状態が、末期がんや脳血管疾患などの特定疾病(※)による場合に限定
保険料の徴収方法 ●市町村と特別区が徴収
●原則年金からの天引き
●65歳になった月から徴収開始
●医療保険料と一括徴収
●40歳になった月から徴収開始

※特定疾病

  1. 1.がん(末期)
  2. 2.関節リウマチ
  3. 3.筋萎縮性側索硬化症
  4. 4.後縦靱帯骨化症
  5. 5.骨折を伴う骨粗鬆症
  6. 6.初老期における認知症
  7. 7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病(パーキンソン病関連疾患)
  8. 8.脊髄小脳変性症
  9. 9.脊柱管狭窄症
  10. 10.早老症
  11. 11.多系統萎縮症
  12. 12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
  13. 13.脳血管疾患
  14. 14.閉塞性動脈硬化症
  15. 15.慢性閉塞性肺疾患
  16. 16.両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

図1 介護サービス利用の流れ

図1 介護サービス利用の流れ

厚生労働省老健局:介護保険制度の概要(令和3年5 月).より引用
https://www.mhlw.go.jp/content/000801559.pdf(2022/8/5アクセス)

表2 介護サービスの種類

表2 介護サービスの種類

この他、居宅介護(介護予防)住宅改修、介護予防・日常生活支援総合事業がある
厚生労働省老健局:介護保険制度の概要(令和3年5 月).より引用
https://www.mhlw.go.jp/content/000801559.pdf(2022/8/5アクセス)

表3 利用できる主な介護サービスの内容

自宅で利用するサービス 訪問介護 訪問介護員(ホームヘルパー)が、入浴、排泄、食事などの介護や調理、洗濯、掃除等の家事を行うサービス
訪問看護 自宅で療養生活が送れるよう、看護師が医師の指示のもとで健康チェック、療養上の世話などを行うサービス
福祉用具 貸与日常生活や介護に役立つ福祉用具(車いす、ベッドなど)のレンタルができるサービス
日帰りで施設等を利用するサービス 通所介護(デイサービス) 食事や入浴などの支援や、心身の機能を維持・向上するための機能訓練、口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供する
通所リハビリテーション(デイケア) 施設や病院などにおいて、日常生活の自立を助けるために理学療法士、作業療法士などがリハビリテーションを行い、利用者の心身機能の維持・回復を図るサービス
宿泊するサービス 短期入所生活介護(ショートステイ) 施設などに短期間宿泊して、食事や入浴などの支援や、心身の機能を維持・向上するための機能訓練の支援などを行うサービス。家族の介護負担軽減を図ることができる
居住系サービス 特定施設入居者生活介護 有料老人ホームなどに入居している高齢者が、日常生活上の支援や介護サービスを利用できる
施設系サービス 特別養護老人ホーム 常に介護が必要で、自宅では介護が困難な方が入所する。食事、入浴、排泄などの介護を一体的に提供する(原則要介護3以上の方が対象)
小規模多機能型居宅介護 利用者の選択に応じて、施設への「通い」を中心に、短期間の「宿泊」や利用者の自宅への「訪問」を組み合わせて日常生活上の支援や機能訓練を行うサービス
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 定期的な巡回や随時通報への対応など、利用者の心身の状況に応じて、24時間365日必要なサービスを必要なタイミングで柔軟に提供するサービス。訪問介護員だけでなく看護師なども連携しているため、介護と看護の一体的なサービス提供を受けることもできる

厚生労働省:介護保険制度について.より引用
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/2gou_leaflet.pdf(2022/8/5アクセス)

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