最新ガイドライン、DESIGN-R®2020に基づく 新まるわかり褥瘡ケア

Part6 褥瘡(じょくそう)を治すための基本的な知識「滲出液」のコントロールが褥瘡治療のカギ

2023年2月更新(2016年6月公開)

 褥瘡は適度な湿潤環境のもとで治癒が促進されることは、前述しました(「湿潤環境で治すことの大切さ」)。適度な湿潤環境を維持するために重要なのが滲出液コントロールです。滲出液とは、上皮が欠損した創から滲み出す組織間液です。創傷における滲出液は、白血球や炎症性メディエーター、タンパク分解酵素、細胞成長因子などを含みます。その大部分は血管から漏出した血漿成分です。
 肉芽ができているような深い褥瘡の治癒過程では、滲出液が見られます。感染が起こると滲出液は増加し、色や臭いが変化します。滲出液は創感染以外にも毛細血管漏出や浮腫を引き起こすさまざまな要因で発生します(図1)。それらの評価を的確に行って、適切に管理する必要があります。滲出液を評価するときはまずその量を見ます。DESIGN-R®2020では量の評価はドレッシング材の交換回数で行います(「滲出液(Exudate)の採点方法」参照)。

図1 滲出液の多い褥瘡

図1 滲出液の多い褥瘡

褥瘡発生後数か月が経過。滲出液が多く周囲皮膚の浸軟を認める。この状態から、肉芽の浮腫状態が持続し、創傷治癒はストップした

 滲出液の評価においては、性状の観察も重要です。正常な治癒過程を経ている滲出液は透明から薄い黄色で、粘性が低いものです。滲出液の観察のポイントを表1に示しました。

表1 滲出液の観察ポイント

表1 滲出液の観察ポイント

World Union of Wound Healing Societies(WUWHS). Principles of best practice:Wound exudate and the role of dressings. A consensus document London: MEP Ltd, 2007. 日本褥瘡学会 編:在宅褥瘡テキストブック.照林社,東京,2020:130.より引用

1.滲出液が多い場合

 滲出液が多い場合には、滲出液吸収作用のある外用薬の使用が勧められます。『褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)』では、「カデキソマー・ヨウ素、ポビドンヨード・シュガーを用いること」を勧めています(推奨度B)。さらに「デキストラノマー、ヨウ素軟膏を用いてもよい(推奨度C1)」とされています。
 また、滲出液が多い場合のドレッシング材は、過剰な滲出液を吸収するポリウレタンフォームを用いることが勧められます。滲出液の吸収力ではポリウレタンフォームはハイドロコロイドよりも優れているとされます。ポリウレタンフォームは、親水性ポリウレタンが過剰な滲出液を吸収・蒸散し、浸軟を防ぎます。ポリウレタンフォームとしては、ハイドロサイト®プラス、メピレックス®ボーダーフレックスなどが挙げられます。

2.滲出液が少ない場合

 一方、滲出液が少ない場合の外用薬としては、同ガイドラインでは「乳剤性基材の軟膏を用い、感染創ではスルファジアジン銀、非感染創ではトレノイントコフェリルを用いてもよい(推奨度C1)」とされています。スルファジアジン銀の商品名はゲーベン®クリーム、トレノイントコフェリルの商品名はオルセノン®軟膏です。
 滲出液が少ない場合のドレッシング材は、ハイドロコロイド(推奨度B)が勧められ、ハイドロジェルを用いてもよいとされています(推奨度C1)。ハイドロコロイドは、デュオアクティブ®、コムフィール、アブソキュア®-ウンドなどです。ハイドロジェルには、ビューゲル®、グラニュゲル®、イントラサイトジェルシステムなどの商品があります。
 いずれにしても、滲出液が少ない場合は創が乾燥しないよう湿潤環境を維持できるドレッシング材を選択します。

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