最新ガイドライン、DESIGN-R®2020に基づく 新まるわかり褥瘡ケア

Part5 褥瘡(じょくそう)を防ぐために重要な体圧管理体位変換間隔とスモールチェンジ

2023年2月更新(2016年6月公開)

1.“スモールチェンジ”の意味

 これまで常識のように行われていた褥瘡予防のための「2時間ごとの体位変換」に正当な理由はないことが明らかになっていることは前述しました。このような体位変換におけるパラダイム転換は、体位変換における、その他の“常識”を再検討することにつながりました。
 従来は、体位を大きく変える際、「仰臥位から側臥位」や「仰臥位から半坐位」などを当然のことのように行ってきました。しかし、このような大きな体位変換は、実施する側にも受ける側にもかなりの負担を強います。在宅での老老介護をイメージしてみましょう。年老いた妻が寝たきりの夫の体位変換を行う場合です。仰臥位から側臥位に体位変換するためには身体全体を動かすことになります。まず布団をはがし、挿入してあるクッション等を取り除きます。ケアを受ける夫は、寒い状態になり、さらに寝ていたところを起こされることになります。このように、大きな刺激を加えなくてはできない体位変換の効果について見直され、最近では“スモールチェンジ”が提唱され始めました。
 私たちは何かに熱中して同一体位を続けているとき、凝りやだるさなどのサインを身体から受け取ります。そして、首を左右に動かす動作や肩を持ち上げる動作を自然に行っています。これが、ストレッチ運動になっています。だるさや痛みは、血液循環不良の身体サインであるため、不快な状態を早い段階で解消するようにすることと“スモールチェンジ”は同義と考えてもよいかも知れません。「小さな」「少し」の動きは、身体全体にわずかに影響するのではなく、大きな影響を与えることができます。しっかり大きく身体を動かすには、ケアする側にも多くの強い労力を必要とします。しかし、症状が重症化する前に少しずつ対応していけば、軽微な労力で済みます。ケア回数は増えるかも知れませんが、1回1回の負担は軽くなります。スモールチェンジは、重症化する前の介入として、「予防の予防」つまり「超予防的介入」と言ってよいかも知れません。

2.スモールチェンジの方法

 具体的な方法としては、①身体の置き直し、②自重圧の開放、③重力の利用です。

  1. ①身体の置き直し(図1)
     上肢・下肢等を少し持ち上げ元の状態よりも角度や位置を変えてあげる方法です。クッションやピローを用いてもよいですが、身体の一部を少し動かすことで、違和感や苦痛が軽減されます。

    図1 置き直し

    図1 置き直し

    上肢や下肢を少し持ち上げて元の状態より角度や位置を変える

  2. ②自重圧の開放(図2)
     体圧分散用具等を使用していても、自身の身体の重みで圧とずれが増していきます。そこで、“滑る手袋”等を使って、定期的に圧とずれを開放してあげると、部分圧の増加と持続を防ぐことができます。

    図2 自重圧の開放

    図2 自重圧の開放

    滑る手袋を使用して密着の強い部分へ抜き差しする

  3. ③重力の利用(図3)
     高さを利用する方法です。平坦な仰臥位よりも5度でも10度でも頭側が挙上しているほうがよいでしょう。上肢・下肢の拘縮等においても、重心との関係から、伸びるか曲がるかの位置が関係してきます。拘縮患者では、「拘縮から力が抜けたとき、どのようなポジショニングをすれば曲がっている上肢が少しでも伸びるか」あるいは、「伸びる方向に誘われるか」と想像しながらポジショニングをすると、ケアに深みが増していきます。

    図3 重力の利用

    図3 重力の利用

    身体の重心線より頭の中心線が後ろにあるため、力を抜くと首は後屈する

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