最新ガイドライン、DESIGN-R®2020に基づく 新まるわかり褥瘡ケア

Part4 褥瘡(じょくそう)状態評価の最新ツール DESIGN-R®(デザインアール)2020を理解する世界標準の褥創状態評価ツールとなったDESIGN-R®(デザインアール)

この章は、一般社団法人日本褥瘡学会編集『改定DESIGN-R®2020 コンセンサス・ドキュメント』
の内容をもとに具体的に解説しています。

2023年2月更新(2016年6月公開)

DESIGNは、褥瘡のチーム医療推進の鍵ともなるツールでした。多職種の共通ツールとして活用され、このツールを用いることで褥瘡治療のガイドラインの開発につながりました。ガイドラインでは、大文字を小文字にする治療方針の基準を「炎症期」「肉芽形成期」「表皮形成期」ごとにつくることができ、治療・ケアのスタンダードが生まれました。同時にこのツールの信頼性と妥当性を世界に向けて発信し、雑誌『Journal of Wound Care』の表紙を飾るほどのインパクトを世界に与えました(図1)。

図1 海外の専門雑誌のトップ記事となったDESIGNツール

図1 海外の専門雑誌のトップ記事となったDESIGNツール

図1 海外の専門雑誌のトップ記事となったDESIGNツール

J Wound Care 2004:13(1)

1.世界標準の褥瘡評価ツールとして

 褥瘡の国際ガイドラインとしては、米国褥瘡諮問委員会(NPIPU)、ヨーロッパ褥瘡諮問委員会(EPUAP)、環太平洋褥瘡諮問委員会(PPPIA)が共同で出しているガイドラインがあります(図2)。2019年に出されたガイドラインの13章「アセスメントとモニタリング」の項目で、DESIGN-R®は最も信頼性と妥当性が高いツールとして紹介されています。現在では、英語の他に、スペイン語、ポルトガル語、台湾語、中国語、韓国語、インドネシア語などに翻訳され、世界標準の褥瘡状態評価ツールになっています。

図2 褥瘡の国際ガイドライン

図2 褥瘡の国際ガイドライン

図2 褥瘡の国際ガイドライン

European Pressure Ulcer Advisory Panel,National Pressure Injury Advisory Panel, Pan Pacific Pressure Injury Alliance:Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/ Injuries:Clinical Practice Guideline. EPUAP/NPIAP/ PPPIA,2019.

2.ガイドラインとともに果たした功績

 DESIGN-R®と『褥瘡予防・管理ガイドライン』の最も大きな功績は、日本の褥瘡有病率の減少に寄与したことでしょう。これらは、診療報酬改定に必要なエビデンスの構築において必須のツールともなっています。2006年以降の診療報酬改定ではエビデンスとなるデータが求められていますが、褥瘡ハイリスク患者ケア加算の新設にあたって、その元となるデータを生んだのがDESIGN®ツールでした。褥瘡ハイリスク患者ケア加算は、専門性の高い看護師を評価する初めての診療報酬です。入院中のすべての患者さんの中から褥瘡ハイリスク患者を抽出し、適切なケア計画を立案してチーム医療を行うというもので、要件となっている褥瘡の専従管理者として「皮膚・排泄ケア認定看護師」が評価されています。これは、日本看護協会と日本創傷・オストミー・失禁管理学会が行った調査が元になっています。
 この調査は、当時のWOCナース(皮膚・排泄ケア認定看護師)を、褥瘡対策を専門として部署横断的に活動する専従看護師として配属している病院(専従群)と、WOCナースを専従として配属していない病院(対照群)とで、3週間の褥瘡治癒過程を比較するというものでした。その結果、1週間後から3週間後にかけて、どの週においても専従群の点数が対照群よりも有意に低い値を示しました。この治癒過程の比較に用いたのがDESIGN-R®だったのです。それ以降、診療報酬の改定に必要なエビデンスデータの収集には、一連のDESIGN-R®ツールが使われています。現在の診療報酬の中で、DESIGN-R®の合計点や下位項目得点を用いる項目を表1に示します。このなかで、介護報酬として2018年に新設された「9.褥瘡マネジメント加算」でDESIGN-R®が取り入れられたことは意味深いことです。それまでは、診療報酬と介護報酬とで褥瘡における言葉が違っていました。つまり、医療職と介護職との間で褥瘡の共通言語がなかったのです。病院などの医療施設から介護保険施設に移った患者さんの情報が共有できないという実態がありました。それが2018年度介護報酬の「褥瘡マネジメント加算」ではDESIGNツールが使われ、医療と介護がつながりました。

表1 診療報酬・介護報酬でDESIGN-R®の合計点や下位項目得点を用いる項目

[2012年度診療報酬改定から]

  1. 1.入院基本料の算定要件
  2. 2.在宅医療の特定医療保険材料の算定(皮膚欠損用創傷被覆材、非固着性シリコンガーゼ)

[2014年度診療報酬改定から]

  1. 3.訪問看護管理療養費の算定要件
  2. 4.在宅患者訪問褥瘡管理指導料の報告書
  3. 5.処置料:重度褥瘡処置の算定要件

[2018年度診療報酬改定から]

  1. 6.ADL 維持向上等体制加算の施設基準
  2. 7.褥瘡対策加算1、2 の算定要件
  3. 8.療養病棟入院基本料

[2018年度介護報酬改定から]

  1. 9.褥瘡マネジメント加算

注:令和4年度診療報酬改定では、DESIGN-R®2020になっている

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